この記事では「後の祭り」について解説する。

端的に言えば後の祭りの意味は「手遅れのこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「後の祭り」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/イオリ

日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。

「後の祭り」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「後の祭り」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「後の祭り」の意味は?

「後の祭り」には、次のような意味があります。

1.祭りのすんだ翌日。また、その日、神饌(しんせん)を下ろして飲食すること。後宴。
2.祭りのあとの山車(だし)のように、時機遅れで、むだなこと。手遅れ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「後の祭」

「祭り」というと、日本の伝統行事であるあのお祭りが頭に浮かびますよね。そんな「祭り」という言葉を使用した「後の祭り」という慣用句ですが、意味は「祭の翌日」「手遅れで無駄なこと」という二つがあります。

一つ目の意味はかなり直接的なそのままの意味であり、二つ目は比喩的な意味になっているということがわかるでしょうか。普段よく使われるのは二つ目の比喩的な意味の方で、「今更こんなことをしても後の祭りだ」という風に使われます。「今更こんなことをしても手遅れで無駄なことだ」という意味ですね。この記事では特にこの比喩的な二つ目の意味について、語源や使い方、類語を紹介していきます。

「後の祭り」の語源は?

次に「後の祭り」の語源を確認しておきましょう。「後の祭り」が「手遅れで無駄なこと」という意味として使われるようになった語源には、大きく分けて二つの説があります。

まず一つ目は京都の祇園祭に由来しているという説。祇園祭は七月一日から一カ月間行われるのですが、七月十七日に前祭、七月二十四日に後祭が開催されます。そしてこの後祭は前祭と異なり山車を還す行事であるため、観客が見物に行っても見るものもなくにぎやかさもなく何の意味もない、ということから「手遅れだ」という意味で「後の祭り」が使われるようになったという説です。

そして二つ目は霊を祭るという意味から派生したという説。人が亡くなったときにはお葬式や法事で故人の霊を祭りますが、亡くなった後にいくら儀式をしても仕方ない、といった意味から後悔やどうにもならないというニュアンスを伴って「後の祭り」と言うようになったというわけですね。

他にも「祭りが終わった後の山車は役に立たないということから」「祭りの翌日に見物に行っても意味がないということから」など、「後の祭り」の語源には様々なものがあります。ですがどの語源を辿っても、「もう仕方がない」「意味がない」のように、諦めるようなニュアンスがあることがわかりますね。「後の祭り」は基本的にマイナスの意味を持つ単語なのです。

\次のページで「「後の祭り」の使い方・例文」を解説!/

「後の祭り」の使い方・例文

「後の祭り」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.生活習慣を整えておけば予定の約束を忘れるなんて失敗しなかったのにと思うが、後悔しても後の祭りである。
2.人気のイベントは全部終了していて、今更案じたところで後の祭りでしかない。
3.日々更新していたブログが炎上してしまったが、今更自分の行動を恥じても後の祭りだ。

1の例文は「約束を忘れたことへの後悔」、2の例文は「終了したイベントを案じること」、3の例文は「ブログの炎上を招いた自分の行動を恥じること」が、それぞれ手遅れであるという意味で「後の祭り」が使われています。

3つの例文を見ると、前述したようにどれもマイナスのニュアンスがあるということがわかりますね。今更何をしても遅いというような、悲壮感やどうしようもなさがある慣用句だということが言えそうです。また、「~しても後の祭りだ」というように、文の最後に付けてもう手遅れであるという意味を文章に付随することが多い慣用句である、ということもわかりますね。

「後の祭り」の類義語は?違いは?

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では「後の祭り」の類義語を確認していきましょう。意味は「手遅れで無駄なこと」でしたね。

「覆水盆に返らず」

これは「一度起きてしまったことは二度と元に戻らない」という意味のことわざです。意味も含め、広く知られて使われている言葉ですね。一度こぼしてしまった水は二度と盆に戻すことは出来ない…というようなことが語源となっているわけですが、この完全に手遅れだというニュアンスは「後の祭り」と非常に似ていると言えそうです。

一方で、この二つには相違点も挙げられます。「後の祭り」はやってしまったこと・やらなかったこと、どちらに対する言葉としても使うことができますが、「覆水盆に返らず」はやってしまったことに対してもう元には戻せないといったような使い方をすることが多い言葉です。細かな違いですが、こういったポイントで類義語を適切に使い分けていきましょう。

\次のページで「「後の祭り」の対義語は?」を解説!/

「後の祭り」の対義語は?

類義語を確認したところで、次は「後の祭り」の対義語を見ていきます。

「転ばぬ先の杖」

これは「失敗しないように万が一に準備しておくこと」という意味のことわざです。「後の祭り」が完全に手遅れであるという意味の慣用句であるため、手遅れにならないように万全の準備をしておくといったニュアンスのこの言葉は対義語であると言えるでしょう。

「後の祭り」が単に手遅れというよりも打つ手なしの完全にどうしようもない状態を表しているように、「転ばぬ先の杖」も単に準備をするのではなく転ばないうちからしっかり備えておくといった意味です。つまり両者とも本来の意味をより強めるようなニュアンスの言葉であるため、きっちり押さえておきましょう。

「後の祭り」の英訳は?

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では最後に「後の祭り」の英訳を見ていきましょう。

「the damage is done」

これは「もう起きてしまったことだ」「取り返しがつかない、手遅れだ」というような意味を持つ英語表現です。「後の祭り」という言葉も意味として挙げられており、どうしようもなさ、手の付けられないニュアンスが「後の祭り」とよく似ていますね。「後の祭り」を英語に言い換えるときはこちらの表現を使うと、意味や言葉の雰囲気を適切に伝えることができるでしょう。

「後の祭り」を使いこなそう

この記事では「後の祭り」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「後の祭り」は「手遅れで無駄なこと」という意味を持ち、もうどうしようもないといった完全に手の付けられない状況のことを表します。祭りを語源とする説、または死者を祭ることを語源とする説があり、手遅れである状況を比喩的に表現することができる言葉でしたね。似た意味の言葉もいくつか思いつきますが、まずは「後の祭り」をしっかり押さえて、細かいニュアンスを使い分けていきましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「後の祭り」の意味や使い方は?例文や類語を日本語オタクライターがわかりやすく解説!

この記事では「後の祭り」について解説する。

端的に言えば後の祭りの意味は「手遅れのこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「後の祭り」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/イオリ

日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。

「後の祭り」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「後の祭り」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「後の祭り」の意味は?

「後の祭り」には、次のような意味があります。

1.祭りのすんだ翌日。また、その日、神饌(しんせん)を下ろして飲食すること。後宴。
2.祭りのあとの山車(だし)のように、時機遅れで、むだなこと。手遅れ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「後の祭」

「祭り」というと、日本の伝統行事であるあのお祭りが頭に浮かびますよね。そんな「祭り」という言葉を使用した「後の祭り」という慣用句ですが、意味は「祭の翌日」「手遅れで無駄なこと」という二つがあります。

一つ目の意味はかなり直接的なそのままの意味であり、二つ目は比喩的な意味になっているということがわかるでしょうか。普段よく使われるのは二つ目の比喩的な意味の方で、「今更こんなことをしても後の祭りだ」という風に使われます。「今更こんなことをしても手遅れで無駄なことだ」という意味ですね。この記事では特にこの比喩的な二つ目の意味について、語源や使い方、類語を紹介していきます。

「後の祭り」の語源は?

次に「後の祭り」の語源を確認しておきましょう。「後の祭り」が「手遅れで無駄なこと」という意味として使われるようになった語源には、大きく分けて二つの説があります。

まず一つ目は京都の祇園祭に由来しているという説。祇園祭は七月一日から一カ月間行われるのですが、七月十七日に前祭、七月二十四日に後祭が開催されます。そしてこの後祭は前祭と異なり山車を還す行事であるため、観客が見物に行っても見るものもなくにぎやかさもなく何の意味もない、ということから「手遅れだ」という意味で「後の祭り」が使われるようになったという説です。

そして二つ目は霊を祭るという意味から派生したという説。人が亡くなったときにはお葬式や法事で故人の霊を祭りますが、亡くなった後にいくら儀式をしても仕方ない、といった意味から後悔やどうにもならないというニュアンスを伴って「後の祭り」と言うようになったというわけですね。

他にも「祭りが終わった後の山車は役に立たないということから」「祭りの翌日に見物に行っても意味がないということから」など、「後の祭り」の語源には様々なものがあります。ですがどの語源を辿っても、「もう仕方がない」「意味がない」のように、諦めるようなニュアンスがあることがわかりますね。「後の祭り」は基本的にマイナスの意味を持つ単語なのです。

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