この記事では「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味について解説する。

このことわざの意味は端的に言うと「勝った者が正義」といったところですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

公務員としての公文書作成や出版社での校閲業務といった経験を持つwebライターの本木を呼んです。一緒に「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/本木

大学では理系専攻で、物事の仕組みや成り立ちについて考えることを得意としている。「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味についても由来を含めてじっくりと解説していく。

「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味は?

「勝てば官軍負ければ賊軍」には、次のような意味があります。

戦いに勝ったほうが正義になり、負けたほうが不義となる。道理はどうあれ強い者が正義者となるというたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「勝てば官軍負ければ賊軍」

一般的に正義や悪といった概念には絶対的な基準はなく、状況や立場、時代などによって変わっていきます。しかし、このことわざは勝った方がいつでも正しい、という意味を持っている言葉です。またそこから転じて、勝ってしまえば手段や過程は問わないといったネガティブな意味が強調されて使われることも多くあります。

なお実際に使うときには単に「勝てば官軍」と省略されることが一般的です。

「勝てば官軍負ければ賊軍」の語源は?

次に「勝てば官軍負ければ賊軍」の語源を確認しておきましょう。

まず、官軍とは朝廷や政府の軍隊のことで、賊軍とは朝廷に敵対する軍勢のことを指す言葉です。

江戸時代、幕府が長年全国の諸大名を統制してきましたが、明治維新により江戸幕府が廃止、明治政府が新たに樹立されると、それまでの立場がまるっきり逆転してしまいます。つまり、外様であった薩摩藩や長州藩、土佐藩を中心とする新政府軍は天皇の軍隊である「官軍」の名のもとに、旧幕府軍は天皇に敵対する「賊軍」の汚名を着せられ、両者の戦争の結果ついには新政府軍が勝利することとなりました。

このように、元々の立場や発端、経緯には関係なく結局は勝った者が正義で負けた者が悪とされることを例えて表したことわざが、「勝てば官軍負ければ賊軍」なのです。

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「勝てば官軍負ければ賊軍」の使い方・例文

それでは「勝てば官軍負ければ賊軍」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.勝てば官軍負ければ賊軍と言われるように、勝者のみがスポットライトを浴び、敗者が語られることはないというのが世の常だ。

2.今年のMVP選手である彼はラフプレーが多く、紳士的なプレーヤーとは言えないが、スポーツは結果がすべて、勝てば官軍とばかりにファンからの人気は絶大だ。

3.剛腕経営者として知られた彼のやり方には同業者からの批判も少なくなかったが、ビジネスは勝てば官軍の世界で、彼はトップクラスの事業家として人々からもてはやされている。

このように、成功者に対してその由来や経過よりも結果が重視されることを揶揄するような場面で用いられることが多いことから、実際に使うときにはその場面に気をつけましょう。

「勝てば官軍負ければ賊軍」の類義語は?違いは?

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ここでは「勝てば官軍負ければ賊軍」に似た意味を持つ言葉について説明します。

「勝者の論理」

勝った者が正しく負けた者は間違っているという考え方のことで、勝者の言い分は正当化されるが敗者の主張は内容によらず退けられてしまう、という状況を表す言葉です。またそこから転じて、最終的に勝利することができればそのために取った手段や過程は正当化される、という意味も持っています。こちらの言葉も皮肉や揶揄の意味合いが強く、勝利の過程や敗者についても論じられるべきという主張のために使われることことが多いです。

\次のページで「「終わり良ければ全て良し」」を解説!/

「終わり良ければ全て良し」

物事は結末が最も大事であり、その発端や途中の過程が悪くても問題にはならない、という意味です。「勝てば官軍」や「勝者の論理」に比べるとポジティブな意味合いが強く、結果がよいのだからそれまでのミスや苦労は気にしなくてもよい、といったニュアンスを持っている言葉であるといえます。

「勝てば官軍負ければ賊軍」の対義語は?

さらに、「勝てば官軍負ければ賊軍」の対義語は何でしょうか。

「判官贔屓(ほうがんびいき)」

元々は判官の職にあった源義経が兄・頼朝に殺されたことに対して民衆が同情を寄せたことを指す言葉です。そこから転じて、弱者や敗者に対して応援したり肩入れするような感情を抱くことを意味します。

「ローマは一日にして成らず」

立派なものは長年の努力なくては完成しない、という意味です。古代ヨーロッパに栄え、栄華や繁栄の象徴であったローマ帝国にも長い苦難の歴史があり、素晴らしいものにはそれ相応の年月や労力が必要であるという、結果よりも経過に焦点を当てた言葉であるという点で、「勝てば官軍負ければ賊軍」の対義語といえるでしょう。

「勝てば官軍負ければ賊軍」の英訳は?

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「勝てば官軍負ければ賊軍」を英語で表すとすればどのような表現になるのでしょうか。

「Losers are always in the wrong.」

こちらを訳すと「敗者は常に悪い」となり、勝者は正当化されるという「勝てば官軍」のまさに直訳的な言い回しです。ほか、「History is written by the victors」(歴史は勝者によって書かれる)も似た意味を持っています。

\次のページで「「The end justifies the means.」」を解説!/

「The end justifies the means.」

こちらを直訳すると「目的が手段を正当化する」となります。ここでは「end」は目的や結果の意味、「means」は手段の意味です。またそこから転じて「終わり良ければ全て良し」という意味になります。

「勝てば官軍負ければ賊軍」を使いこなそう

この記事では「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味・使い方・類語などを説明しました。

昨今は勝った者が正義という強者主義的な価値観や、勝ち組・負け組、正義・悪、といった極端な二元論的考え方が広まっているようにも思えますが、この「勝てば官軍負ければ賊軍」という言葉からは、結果だけを追求して過程はどうでもよいのだろうか、また敗者や脇役にもスポットライトが当てられるべきではないのか、などといった問いを私たちに投げかけてくれる、そんな示唆に富んだことわざであるようにも思えます。

また、この言葉の由来には日本史上の大事件である明治維新が深くかかわっていることから、興味を持たれた方はこれを機にその歴史について深く学んでみてはいかがでしょうか。

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国語言葉の意味

「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味について解説する。

このことわざの意味は端的に言うと「勝った者が正義」といったところですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

公務員としての公文書作成や出版社での校閲業務といった経験を持つwebライターの本木を呼んです。一緒に「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/本木

大学では理系専攻で、物事の仕組みや成り立ちについて考えることを得意としている。「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味についても由来を含めてじっくりと解説していく。

「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「勝てば官軍負ければ賊軍」の意味は?

「勝てば官軍負ければ賊軍」には、次のような意味があります。

戦いに勝ったほうが正義になり、負けたほうが不義となる。道理はどうあれ強い者が正義者となるというたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「勝てば官軍負ければ賊軍」

一般的に正義や悪といった概念には絶対的な基準はなく、状況や立場、時代などによって変わっていきます。しかし、このことわざは勝った方がいつでも正しい、という意味を持っている言葉です。またそこから転じて、勝ってしまえば手段や過程は問わないといったネガティブな意味が強調されて使われることも多くあります。

なお実際に使うときには単に「勝てば官軍」と省略されることが一般的です。

「勝てば官軍負ければ賊軍」の語源は?

次に「勝てば官軍負ければ賊軍」の語源を確認しておきましょう。

まず、官軍とは朝廷や政府の軍隊のことで、賊軍とは朝廷に敵対する軍勢のことを指す言葉です。

江戸時代、幕府が長年全国の諸大名を統制してきましたが、明治維新により江戸幕府が廃止、明治政府が新たに樹立されると、それまでの立場がまるっきり逆転してしまいます。つまり、外様であった薩摩藩や長州藩、土佐藩を中心とする新政府軍は天皇の軍隊である「官軍」の名のもとに、旧幕府軍は天皇に敵対する「賊軍」の汚名を着せられ、両者の戦争の結果ついには新政府軍が勝利することとなりました。

このように、元々の立場や発端、経緯には関係なく結局は勝った者が正義で負けた者が悪とされることを例えて表したことわざが、「勝てば官軍負ければ賊軍」なのです。

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