3分で簡単「ゴルジ体」細胞内の加工物流センター!バイオ系ライターがわかりやすく解説!
ゴルジ体の最新研究
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最後に、ゴルジ体に関する面白い仮説を2つご紹介しておきます。ゴルジ体はタンパク質の修飾や配送を行う小器官という解説をしてきましたが、近年ではもう一つの重要な機能がゴルジ体にはあるのではないかという仮説です。それは、細胞分裂を行う際にゴルジ体が重要な役割を果たしており、ゴルジ体の変化が細胞分裂のトリガーとなっているのではないかとと言われています。
ゴルジ体は細胞分裂の際には層状の形態からバラバラに分解され、分裂後に再び集合して形を作ることが知られていますが、ゴルジ体を分裂させないように人工的な加工を施すと、細胞分裂も起きないことも知られているのです。ゴルジ体が分解する際に細胞内に放出される物質が、細胞分裂の呼び水となっているのではないかという説がありますが、現在のところゴルジ体の分解が細胞分裂のトリガーであるとの実証はされていません。
さらにゴルジ体内部でのタンパク質の動きについて、面白い仮説が立てられています。現在タンパク質がゴルジ体の層を移動する際、膜間の短い経路を輸送小胞のようなもので移動しているのではないかと考えられていますが、タンパク質を受け取った層自体が、Cis面からTrans面へと移動しているのではないかという仮説です。
仮説では、ゴルジ体を形成する層は常に作り変えられており、Cis面には新しい層が次々と形成されており、層は順番にTrans面へと移動する、その過程で内包されたタンパク質は修飾されていき、成熟しながらTrans面に届いた時に輸送小胞を形成して放出され、最後に層はバラバラに分解されるとの仮説で、こちらもまだ仮説段階ですが、なかなかゴルジ体も奥が深くて面白いと思いませんか。
古くから知られている小器官だけれども新しいゴルジ体
今回はゴルジ体について解説しました。合成されたばかりのタンパク質を修飾して配送する加工物流センターとしての役割をもっているゴルジ体ですが、発見されたのは120年も昔のことです。現在ではゴルジ体の役割についてかなりのことが分かっていますが、研究が進むにつれてまだまだ解明されていない未知の部分も明らかとなってきています。
ご紹介した最新の仮説では、ゴルジ体が細胞分裂に関わっているという話題も出ました。細胞分裂は細胞にとってダイナミックな変化であり、実はそのさまざまな複雑な過程は現在でもまだまだわからないことが多いのです。
ゴルジ体でのタンパク質修飾の異常と病気との関係性についても研究が始まったばかりであり、これからも研究のテーマとして熱い視線が集まる小器官だと言えます。みなさんもぜひ興味を持って学習を進めてください。