今回は「ゴルジ体」について解説していきます。

ゴルジ体は細胞内に存在する細胞内小器官ですが、名前だけは聞いたことがあるんじゃないか。このゴルジ体はタンパク質の修飾と輸送に深く関わりのある器官です。実は細胞内で合成されたタンパク質はそれだけでは十分な機能を果たすことができない。ゴルジ体の働きについて詳しく解説し、最新の研究にも触れていくので最後まで読んでくれ。

大学院で遺伝子工学を専攻していたバイオ系ライターこざよしと一緒に解説していきます。

ライター/こざよし

遺伝子工学を中心にマリンバイオテクノロジーを大学院まで専攻したバイオ系ライター。バイオサイエンス、生化学、化学分野のトピックスをわかりやすく解説する。

ゴルジ体の役割

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今回はゴルジ体について解説していきます。ゴルジ体というインパクトのある名前なので名前だけは記憶にある人も多いかもしれませんが、なぜそんな名前が付いているのでしょう。ゴルジとは発見者であるカミッロ・ゴルジ(Camillo Golgi)の名前から付けられています。ゴルジ体は細胞の中で、いわば加工物流センターの役割を果たしているのですが、一体何を加工しているのかと言うと、小胞体から受け取ったタンパク質です。


小胞体がゴルジ体へ受け渡すタンパク質は、リボソームで合成された後の状態ではまだ不完全であり、目的の機能を果たすことができません。ゴルジ体ではそのタンパク質に様々な加工を施して、細胞各所でちゃんと働くタンパク質へと形を整えるのです。さらに、ゴルジ体はその完成したタンパク質を、必要な場所へ配送する物流センターの役割をもっています。ゴルジ体の中では同じ種類のタンパク質には同じ行き先へたどり着けるように、タグが付けられるのです。そのタグが付けられたタンパク質は、ゴルジ体のある一箇所に集められ、まとめて輸送小胞に格納されて必要とされている場所まで搬送されていきます。


例えるならば、小胞体が集中生産拠点工場であり、ゴルジ体は小胞体から半完成品として受け取った商品を、売り物になるように組み付けて塗装し、点検などの品質管理を行い、さらに必要な取説や付属品を揃えて包装し、宛名ラベルを貼り付けて配送トラックに積み込み送り出すという役割を担っているのです。ゴルジ体が小胞体から受け取ったものに不良品があった場合には、小胞体へ返送する機能もあることがわかっています。

ゴルジ体の不思議な形

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名前もさることながら、形にもインパクトがあります。ミルフィーユのように何層にも重ねられたへん平な袋状の層でできているので、少し気持ちが悪いと思う人もいるかもしれません。実はあの層状の形はゴルジ体だけではなく、小胞体も同じように層状の形をしています。この層状の作りは何のためかというと、小胞体やゴルジ体にとって、膜が非常に大切な役割を果たしていることと関係があるのです。


小胞体では、リボソームが膜に密集してたくさんのタンパク質を合成することができますし、ゴルジ体ではタンパク質の受け渡しは全て膜を通して行われます。層状の膜を形成することで、表面積を増やし、非常に効率よく機能を果たすことができるのです。逆に、それだけ膨大なタンパク質が細胞内では合成され、加工されて輸送されていると言うこともできます。

ゴルジ体の向きは固定されている

ゴルジ体は、ただ単に層状の塊というわけではありません。細胞内では常に向きが定められています。核に近い方の面をシス(Cis)面、核から遠い方の面をトランス(Trans)面と呼ぶのですが、Cisというのはラテン語で「同じ側、こちら側」という意味を持っており、Transとはラテン語で「反対側、向こう側」という意味です。つまりゴルジ体を細胞核から見て、近い方をCis側、遠い方をTrans側という意味ですね。


核側のCis面は核を取り巻く小胞体に近接しており、合成されたばかりのタンパク質を受け取るための機能を持っています。一方、核から遠い方のTrans面は、完成して荷造りされたタンパク質を細胞各所へ送り出すための輸送のための機能を持っているのです。部位として呼ぶ場合には、それぞれの層をCisゴルジ網、Transゴルジ網と呼んだりしますし、その中間部分は中間嚢と呼んだりします。中間脳をさらに中間区画、トランス区画と分ける呼び方もされることがあるのですが、中間嚢はタンパク質を修飾する部位です。


ちなみに、ゴルジ体の層の数は、植物では7枚であることが多く、独立した小器官として存在しているのに対し、動物ではそれぞれ種により多様ではあるものの一般的に植物より多く、サイズも大きくて小胞体とともに核を半ば取り囲むくらいある場合もあります。

ゴルジ体の働き

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それでは、ゴルジ体がどのようにしてタンパク質を加工して送り出しているのか、詳しく解説していきましょう。まず、小胞体にはリボソームが合成したばかりのタンパク質が蓄積されています。この産生されたばかりのタンパク質は小胞体の膜から輸送小胞に包まれた状態で分離され、ゴルジ体のCis面のCisゴルジ網まで輸送されるのです。輸送小胞がCisゴルジ網に到着すると、ゴルジ網に融合するようにして内包しているタンパク質をゴルジ体内部へ放出します。


Cisゴルジ網から取り入れられたタンパク質は、Trans面に向かって中間嚢を通過して移動しますが、その際に必要な修飾を順番に受けながらTrans面へと向かっていくのです。必要な修飾とは、糖鎖のリン酸化、マンノースの除去、N-アセチルグルコサミンの付加、ガラクトースの付加、硫酸化、リン酸化、N-アセチルノイラミン酸などといった分子の付加などがあり、タンパク質の種類によって異なりますし、細胞の存在する器官の働きによっても特徴が異なっています。

2つの分泌制御

2つの分泌制御

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ゴルジ体が分泌するタイミングは2種類あります。恒常性分泌と調節性分泌です。常に一定の量を分泌するのが恒常性分泌であり、何らかの刺激に分泌量が左右されるものを調節性分泌と呼んでいます。細胞膜には多くのタンパク質が存在しており、それらタンパク質は細胞の活動を維持するためには常に供給されなくてはなりませんから、恒常性分泌によって供給されているのです。


一方で、例えば消化酵素などのタンパク質は、必要な時に必要な量が供給されることが重要で、使われもしないのに大量に供給され続けてしまうと、細胞の機能を損なう危険性があります。ですから、必要だというシグナルを得てから分泌されるように、調節性分泌によって供給されるのです。


消化酵素は、調節性分泌によって分泌されるまではゴルジ体に留められていますが、酵素がゴルジ体内部で機能を発揮してしまうとゴルジ体を消化する危険があります。そこで消化酵素は分泌されるまでは輸送小胞に隔離され、ゴルジ体の膜に付着したまま分泌の司令を待つこととなるのです。

\次のページで「ゴルジ体の最新研究」を解説!/

ゴルジ体の最新研究

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最後に、ゴルジ体に関する面白い仮説を2つご紹介しておきます。ゴルジ体はタンパク質の修飾や配送を行う小器官という解説をしてきましたが、近年ではもう一つの重要な機能がゴルジ体にはあるのではないかという仮説です。それは、細胞分裂を行う際にゴルジ体が重要な役割を果たしており、ゴルジ体の変化が細胞分裂のトリガーとなっているのではないかとと言われています。


ゴルジ体は細胞分裂の際には層状の形態からバラバラに分解され、分裂後に再び集合して形を作ることが知られていますが、ゴルジ体を分裂させないように人工的な加工を施すと、細胞分裂も起きないことも知られているのです。ゴルジ体が分解する際に細胞内に放出される物質が、細胞分裂の呼び水となっているのではないかという説がありますが、現在のところゴルジ体の分解が細胞分裂のトリガーであるとの実証はされていません。


さらにゴルジ体内部でのタンパク質の動きについて、面白い仮説が立てられています。現在タンパク質がゴルジ体の層を移動する際、膜間の短い経路を輸送小胞のようなもので移動しているのではないかと考えられていますが、タンパク質を受け取った層自体が、Cis面からTrans面へと移動しているのではないかという仮説です。


仮説では、ゴルジ体を形成する層は常に作り変えられており、Cis面には新しい層が次々と形成されており、層は順番にTrans面へと移動する、その過程で内包されたタンパク質は修飾されていき、成熟しながらTrans面に届いた時に輸送小胞を形成して放出され、最後に層はバラバラに分解されるとの仮説で、こちらもまだ仮説段階ですが、なかなかゴルジ体も奥が深くて面白いと思いませんか。

古くから知られている小器官だけれども新しいゴルジ体

今回はゴルジ体について解説しました。合成されたばかりのタンパク質を修飾して配送する加工物流センターとしての役割をもっているゴルジ体ですが、発見されたのは120年も昔のことです。現在ではゴルジ体の役割についてかなりのことが分かっていますが、研究が進むにつれてまだまだ解明されていない未知の部分も明らかとなってきています。

ご紹介した最新の仮説では、ゴルジ体が細胞分裂に関わっているという話題も出ました。細胞分裂は細胞にとってダイナミックな変化であり、実はそのさまざまな複雑な過程は現在でもまだまだわからないことが多いのです。

ゴルジ体でのタンパク質修飾の異常と病気との関係性についても研究が始まったばかりであり、これからも研究のテーマとして熱い視線が集まる小器官だと言えます。みなさんもぜひ興味を持って学習を進めてください。

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タンパク質と生物体の機能理科生物細胞・生殖・遺伝

3分で簡単「ゴルジ体」細胞内の加工物流センター!バイオ系ライターがわかりやすく解説!

ゴルジ体の最新研究

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最後に、ゴルジ体に関する面白い仮説を2つご紹介しておきます。ゴルジ体はタンパク質の修飾や配送を行う小器官という解説をしてきましたが、近年ではもう一つの重要な機能がゴルジ体にはあるのではないかという仮説です。それは、細胞分裂を行う際にゴルジ体が重要な役割を果たしており、ゴルジ体の変化が細胞分裂のトリガーとなっているのではないかとと言われています。


ゴルジ体は細胞分裂の際には層状の形態からバラバラに分解され、分裂後に再び集合して形を作ることが知られていますが、ゴルジ体を分裂させないように人工的な加工を施すと、細胞分裂も起きないことも知られているのです。ゴルジ体が分解する際に細胞内に放出される物質が、細胞分裂の呼び水となっているのではないかという説がありますが、現在のところゴルジ体の分解が細胞分裂のトリガーであるとの実証はされていません。


さらにゴルジ体内部でのタンパク質の動きについて、面白い仮説が立てられています。現在タンパク質がゴルジ体の層を移動する際、膜間の短い経路を輸送小胞のようなもので移動しているのではないかと考えられていますが、タンパク質を受け取った層自体が、Cis面からTrans面へと移動しているのではないかという仮説です。


仮説では、ゴルジ体を形成する層は常に作り変えられており、Cis面には新しい層が次々と形成されており、層は順番にTrans面へと移動する、その過程で内包されたタンパク質は修飾されていき、成熟しながらTrans面に届いた時に輸送小胞を形成して放出され、最後に層はバラバラに分解されるとの仮説で、こちらもまだ仮説段階ですが、なかなかゴルジ体も奥が深くて面白いと思いませんか。

古くから知られている小器官だけれども新しいゴルジ体

今回はゴルジ体について解説しました。合成されたばかりのタンパク質を修飾して配送する加工物流センターとしての役割をもっているゴルジ体ですが、発見されたのは120年も昔のことです。現在ではゴルジ体の役割についてかなりのことが分かっていますが、研究が進むにつれてまだまだ解明されていない未知の部分も明らかとなってきています。

ご紹介した最新の仮説では、ゴルジ体が細胞分裂に関わっているという話題も出ました。細胞分裂は細胞にとってダイナミックな変化であり、実はそのさまざまな複雑な過程は現在でもまだまだわからないことが多いのです。

ゴルジ体でのタンパク質修飾の異常と病気との関係性についても研究が始まったばかりであり、これからも研究のテーマとして熱い視線が集まる小器官だと言えます。みなさんもぜひ興味を持って学習を進めてください。

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