
5分でわかる「乳化作用」乳化剤の種類と役割を理系ライターがわかりやすく解説
3. 乳化作用の利用
以上学んできた乳化作用ですが、社会的には大きく2つの分野で利用されています。1つが食品分野、そしてもう1つが化粧品分野です。それぞれどのように乳化作用が利用されているのかみていきましょう。
3-1. 食品への利用

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食品に添加される乳化剤は当然人体に対する悪影響があってはなりません。そのため石油系の界面活性剤が使用できないのは予想ができますよね。何を乳化剤として良いのかは食品衛生法施行規則の別表第一(第十二条関係)で確認することができます。
食品にどのような乳化剤が使用可能なのか見ていってみましょう。
・グリセリン脂肪酸エステル:パン、アイスクリーム、マーガリン
・ソルビタン脂肪酸エステル:乳飲料
・ショ糖脂肪酸エステル :缶コーヒー
・プロピレングリコール脂肪酸エステル:クリーム、マーガリン
・ステアロイル乳酸カルシウム:パン、麺類
これらの乳化剤を使用することで、普段私たちがよく使っている以下のような食材が作られています。
O / W型(水中油滴型)
・牛乳
・マヨネーズ
・アイスクリーム
W / O型(油中水滴型)
・バター
・マーガリン
料理が好きな人にとってお酢とサラダ油に乳化剤として卵黄を添加することでマヨネーズを作ることができるというのは有名な話ですね。アイスクリームは乳脂肪、脱脂粉乳を主とした原料に上述のグリセリン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルが用いられます。そして牛乳は牛の体内で生成された天然のエマルションで、脂肪球の周りをリン脂質、カゼイン、アルブミンといったタンパク質が乳化剤となり安定なエマルションを形成しているのです。
バターは牛乳の脂肪分を主成分とし、マーガリンは植物性油脂を主成分とする違いがあることも覚えておくと面白いですね。
その他に乳化が使われている食材として挙げられるのはカレーのルーやパン、チョコレート、ケーキのスポンジ、果汁飲料。それに実はドレッシングにも乳化補助剤としてデンプンが使われています。
3-2. 化粧品への利用

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世の中の化粧品として販売されている製品は全て薬機法(旧薬事法)を満たしています。化粧品というのはどのように定義されているのでしょうか。
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第二条第三項