今回のテーマは「乳化作用」。

乳化作用と聞くとなんとなく分かるけど、具体的に説明するとなると漠然としていて上手く説明できないという人も多いんじゃないでしょうか?実は乳化作用、身の回りの多くの食品、生活用品で使われているんです。

乳化された食品が大好き、化学に詳しいライターNaohiroと一緒に解説していきます。

ライター/Naohiro

国立大学の理系出身で環境科学について学んだ経験をもとに、化学をもっと身近に楽しく学べるよう情報を発信していく。

1. 乳化とは

image by iStockphoto

水と油はお互いに溶け合わないことで有名ですね。そんな溶け合わない2つの液体も激しく降り混ぜると水が油の中に、もしくは油が水の中に微粒子として一時的に分散する現象が起こります。この現象を「乳化」、その結果生成した液体を乳濁液(エマルション:emulsion)です。しかしながら、一時的に混合されたエマルションはすぐに元の2層に戻ってしまいますね。エマルションを安定させるために添加する、乳化作用をもつ界面活性剤のことを乳化剤といいます。

シンプルに水と油に乳化剤を加えて撹拌すると乳化し、乳化した液体をエマルションと呼ぶという理解で問題ありません。エマルションのことをエマルジョンと呼ぶこともあります。

1-1. エマルションの粒子径による外観の違い

エマルションは、油滴の粒子径の違いにより外観が異なってくるという特徴があります。

     20nm ~      100nm:半透明 → マイクロエマルション

   100nm ~   1,000nm:青味を帯びる→マクロエマルション

1,000nm ~ 10,000nm:乳濁色→マクロエマルション

\次のページで「1-2. エマルションの種類」を解説!/

1-2. エマルションの種類

そしてエマルションは水中に油滴が分散するか油中に水滴が分散するかによって2種類にわけられます。

水中油滴型エマルション: O / W型(Oil-in-Water type)

油中水滴型エマルション: W / O型(Water-in-Oil type)

image by Study-Z編集部

水中油滴型エマルションには油っぽさが少なくさっぱりとした特徴が、油中水滴型エマルションには肌を柔らかくしてハリと潤いを与えるといった特徴があります。

2. 乳化作用

乳化は水と油に乳化剤を混合することにより起こります。それでは乳化はどのように起こるのでしょうか。みていきましょう。

2-1. 乳化作用のメカニズム

2-1. 乳化作用のメカニズム

image by Study-Z編集部

実は乳化剤は界面活性剤の一種です。界面活性剤は親油基(もしくは疎水基)と親水基からなっており、親油基としてはアルキル基やアルキルアリル基。親水基としてはカルボキシ基、硫酸エステル基、スルホン酸基、アンモニウム基、第4級アンモニウム基、ポリオキシエチレン基といったものから構成されていますよね。

油滴に親油基を向けてミセルを形成し分散したものが水中油滴型エマルション。水滴に親水基を向けてミセルを形成し分散したものが油中水滴型エマルションとなります。

2-2. 乳化剤の種類

TensideHyrophilHydrophob.png
Roland.chem, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

そして界面活性剤には非イオン性(ノニオン)界面活性剤。イオン性として3種類、陰イオン(アニオン)界面活性剤と陽イオン(カチオン)界面活性剤、両性(双性)界面活性剤の合計4種類があります。

これらの内乳化剤としての機能を持つのは非イオン性界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤の3種類です。

\次のページで「3. 乳化作用の利用」を解説!/

3. 乳化作用の利用

以上学んできた乳化作用ですが、社会的には大きく2つの分野で利用されています。1つが食品分野、そしてもう1つが化粧品分野です。それぞれどのように乳化作用が利用されているのかみていきましょう。

3-1. 食品への利用

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食品に添加される乳化剤は当然人体に対する悪影響があってはなりません。そのため石油系の界面活性剤が使用できないのは予想ができますよね。何を乳化剤として良いのかは食品衛生法施行規則の別表第一(第十二条関係)で確認することができます。

食品にどのような乳化剤が使用可能なのか見ていってみましょう。

グリセリン脂肪酸エステル:パン、アイスクリーム、マーガリン

・ソルビタン脂肪酸エステル:乳飲料

・ショ糖脂肪酸エステル  :缶コーヒー

・プロピレングリコール脂肪酸エステル:クリーム、マーガリン

・ステアロイル乳酸カルシウム:パン、麺類

これらの乳化剤を使用することで、普段私たちがよく使っている以下のような食材が作られています

O / W型(水中油滴型)
・牛乳
・マヨネーズ
・アイスクリーム

W / O型(油中水滴型)
・バター
・マーガリン

料理が好きな人にとってお酢とサラダ油に乳化剤として卵黄を添加することでマヨネーズを作ることができるというのは有名な話ですね。アイスクリームは乳脂肪、脱脂粉乳を主とした原料に上述のグリセリン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルが用いられます。そして牛乳は牛の体内で生成された天然のエマルションで、脂肪球の周りをリン脂質、カゼイン、アルブミンといったタンパク質が乳化剤となり安定なエマルションを形成しているのです。

バターは牛乳の脂肪分を主成分とし、マーガリンは植物性油脂を主成分とする違いがあることも覚えておくと面白いですね。

その他に乳化が使われている食材として挙げられるのはカレーのルーやパン、チョコレート、ケーキのスポンジ、果汁飲料。それに実はドレッシングにも乳化補助剤としてデンプンが使われています。

3-2. 化粧品への利用

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世の中の化粧品として販売されている製品は全て薬機法(旧薬事法)を満たしています。化粧品というのはどのように定義されているのでしょうか。

この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。

出典:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第二条第三項

\次のページで「生活に不可欠な乳化作用」を解説!/

対象としては皮膚、毛髪に爪や口の中も含まれます。そして目的は大きく身体を清潔に保つ身体を美しくする身体を保護するの3つにわけることができるのです。それぞれみていってみましょう。

身体を清潔に保つ
石鹸(せっけん)、クリーム、シャンプー、リンス、歯磨き粉

身体を美しくする
ファンデーション、口紅、ヘアトニック、エナメル(爪につける)

身体を保護する
乳液、ハンドクリーム、ヘアオイル

乳液は特に女性が皮膚に水分と油分を与えて肌の潤いを保つためによく使いますね。水中油滴型のエマルションでのびがよく、配合されている栄養成分が吸収されやすくなっています

そして乳液にさらに粘着性をもたせたものがクリームです。クリームには用途に応じて水中油滴型と油中水滴型のものがあり、水中油滴型の代表はモイスチャークリーム油中水滴型の代表はクレンジングクリームです。水中油滴型はさらっとしており油中水滴型はしっとりとした特徴があります。

生活に不可欠な乳化作用

水と油に乳化剤を加えて撹拌すると乳化し、乳化した液体をエマルションと呼びます。また乳化剤というのは界面活性剤の一種ではありますが、界面活性剤が全て乳化剤になるというわけでは無いということも頭の片隅に入れておくと知識が深まりますね。

身の回りのマヨネーズやバター、乳液やクリームも乳化作用により作られています。これらが何から構成されていて乳化剤として何が添加されているのか、興味があればぜひ調べてみて下さいね。

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化学有機化合物物質の状態・構成・変化理科生活と物質

3分で簡単「乳化作用」乳化剤の種類と役割を理系ライターがわかりやすく解説

今回のテーマは「乳化作用」。

乳化作用と聞くとなんとなく分かるけど、具体的に説明するとなると漠然としていて上手く説明できないという人も多いんじゃないでしょうか?実は乳化作用、身の回りの多くの食品、生活用品で使われているんです。

乳化された食品が大好き、化学に詳しいライターNaohiroと一緒に解説していきます。

ライター/Naohiro

国立大学の理系出身で環境科学について学んだ経験をもとに、化学をもっと身近に楽しく学べるよう情報を発信していく。

1. 乳化とは

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水と油はお互いに溶け合わないことで有名ですね。そんな溶け合わない2つの液体も激しく降り混ぜると水が油の中に、もしくは油が水の中に微粒子として一時的に分散する現象が起こります。この現象を「乳化」、その結果生成した液体を乳濁液(エマルション:emulsion)です。しかしながら、一時的に混合されたエマルションはすぐに元の2層に戻ってしまいますね。エマルションを安定させるために添加する、乳化作用をもつ界面活性剤のことを乳化剤といいます。

シンプルに水と油に乳化剤を加えて撹拌すると乳化し、乳化した液体をエマルションと呼ぶという理解で問題ありません。エマルションのことをエマルジョンと呼ぶこともあります。

1-1. エマルションの粒子径による外観の違い

エマルションは、油滴の粒子径の違いにより外観が異なってくるという特徴があります。

     20nm ~      100nm:半透明 → マイクロエマルション

   100nm ~   1,000nm:青味を帯びる→マクロエマルション

1,000nm ~ 10,000nm:乳濁色→マクロエマルション

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