今回のテーマは「親水コロイド」です。

突然ですが疎水コロイドが「疎水」で親水コロイドがなぜ「親水」なのか考えたことはあるか?実はこれらの間にはその特徴から大きな違いがあるんです。

私たちの生活に入り込んでいる親水コロイドについて国立大学の理系出身で環境科学を専攻し、化学にも詳しいライターNaohiroと一緒に解説していきます。

ライター/Naohiro

国立大学の理系出身。大学時代環境科学を専攻した経験をもとに、社会との関りから化学をわかりやすく解説する。

1. コロイドの基礎を理解しよう

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コロイドは1861年にイギリスの化学者トーマス・グレアムにより”溶液中で拡散速度が非常に遅い物質”として定義されたことが始まりです。要は実験的にコロイドが半透膜を通過するときの速度が遅いということなのですが、この透過速度が遅いものの仲間にゼラチン(にかわの主成分)がありました。ギリシャ語の”にかわ状”(kolla-eidos)から、その仲間をcolloidと呼ぶこととしたのです。

1-1. コロイド溶液とその他の違い

次にコロイド溶液とその他になにがあるの?という点に関して説明していきましょう。実は水に何かものを混ぜた時、その混ぜたものの状態により3つにわけることができます

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その3つとは大きく分けて「真の溶液」「コロイド溶液」「懸濁液」です。基本的には水に溶けた粒子の大きさが109m以下のものを真の溶液10910-7mのものをコロイド溶液10-7m以上のものを懸濁液と分けます。

ちなみに109m=1nm(ナノメートル)で、原子の大きさが大体0.1nm単位になりますので真の溶液は原子とか分子レベルで水に溶けたものであることがわかりますね。その一方でコロイド溶液は1nmよりも大きい高分子化合物や、小さな分子やイオンが集まった微粒子で成り立っています

以上が一般的な説明にはなるのですが、要は真の溶液とコロイド溶液は透明か半透明かコロイド溶液と懸濁液は置いておくことで粒子が沈降するかしないかという観点で見分けられることを覚えておくとわかりやすいですね。

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技術的には半透膜とろ紙を用いてどちらとも通過できる水溶液を真の溶液ろ紙のみ通過できるものをコロイド溶液どちらとも通過できないものを懸濁液として分離することができます。

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また、真の溶液とコロイド溶液で用語が異なるものがあります。溶媒は分散媒溶質は分散質、そして溶液は分散系と言葉が変わることは覚えておきましょう。

1-2. コロイドの分類

そしてコロイドは以下の観点から分類することができます。

・分散媒の状態   :ゾル ↔ ゲル ↔ キセロゲル(寒天、高野豆腐等)

・コロイド粒子の種類:分子コロイド会合(ミセル)コロイド↔分散コロイド

・親水コロイド ↔ 疎水コロイド

・コロイド粒子の電荷:正電荷 ↔ 負電荷

\次のページで「2. 親水コロイドの性質」を解説!/

コロイド溶液の重要な性質として透析チンダル現象ブラウン運動電気泳動があります。こちらも興味があれば確認してみてくださいね。

2. 親水コロイドの性質

それでは親水コロイド自体の特徴と塩析、保護コロイドといった性質についてみていきましょう。

2-1. 親水コロイドの各種特徴

2-1. 親水コロイドの各種特徴

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一般的に疎水コロイドには無機物質の分散コロイドが多く親水コロイドには有機物質の分子コロイドが多い特徴があります。これは親水コロイドとして代表的なタンパク質が、親水性の官能基であるカルボキシ基(-COOH)をもつことからもイメージはできますよね。

そしてもう一つ、疎水コロイドは同じ電荷同士(水酸化鉄ならプラス同士、粘土ならマイナス同士)の反発力で分散していますが親水コロイドは水分子を表面に吸着(水和)することにより分散しているという違いも覚えておきましょう。

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オリジナルのアップロード者は英語版ウィキペディアLukeSurlさん Later versions were uploaded by DMacks at en.wikipedia. - en.wikipedia からコモンズに移動されました。, パブリック・ドメイン, リンクによる

また親水コロイドは会合コロイドと分子コロイドに大別されることについても触れておきましょう。

会合(かいごう)コロイド、別名ミセルコロイドとしては石けんがあります。石けんの濃度が一定以上になると中心の油汚れに疎水基(親油基)を、外側に親水基を向けたミセルとなって会合コロイドを形成するのです。

その一方分子コロイドはタンパク質、デンプンといった巨大分子そのものがコロイドとなるものでありタンパク質は正電荷をもつ正コロイドデンプンは負電荷をもつ負コロイドという特徴があります。

2-2. 親水コロイドの凝集沈殿=塩析

2-2. 親水コロイドの凝集沈殿=塩析

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疎水コロイドは少量の電解質を添加することで凝集沈殿し、これを凝析といいます。しかし親水コロイドはその表面に水分子を吸着(水和)しているため、少量の電解質を加えただけでは水和した水分子を奪い取るだけで凝集沈殿させることができません。そこで多量の電解質や脱水剤を加えて沈殿させること塩析とよびます。

2-3. 保護コロイド

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疎水コロイドに対して一定の親水コロイドを加えることで親水コロイドが疎水コロイドの回りを取り囲むことで凝析しにくくする現象がおきます。これを保護作用と言い、疎水コロイドを凝析しにくくするために加えられたコロイドのことを保護コロイドと呼ぶことも覚えておきましょう。

後述しますが身の回りでは墨汁やインクに保護コロイドの考え方が応用されています。

\次のページで「3. 身近な親水コロイド」を解説!/

3. 身近な親水コロイド

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疎水コロイドの凝析は浄水場における急速ろ過工程での浄化に活用され、安全安心な水道水の供給に役立てられています。それでは親水コロイドは私たちの生活とどのような関りをもっているのでしょう。以下にその例を挙げてみます。

・豆乳ににがり(主成分MgCl2)を加えることで豆腐になる(塩析)

・墨汁ににかわ(でんぷんの一種)を加えることで安定化する(保護コロイド)

・インクにアラビアゴムを加えることで安定化する(保護コロイド)

・牛乳、豆乳、コーヒー、紅茶、緑茶、ジュース等身の回りの飲み物

生物の体液

このように見ていくと私たちが日頃飲んでいる飲み物のほとんど、そして私たちの体内を流れる血液も親水コロイドによって形成されていることがわかります。私たちの身の回りの液体のほとんどが親水コロイドにより成り立っていると言っても過言ではないのかもしれませんね。

身の回りに溢れる親水コロイド溶液

コロイド、というと高校化学の中ではちょっとした暗記科目で終わっているかもしれませんね。しかし親水コロイドとして代表的な成分のタンパク質やでんぷんというのは人間、生物にとって不可欠な栄養成分ですから、私たちが日頃摂取している飲み物のほとんどはもちろん私たちの体を流れる血液が多くの親水コロイドで形成されているという点は意外と見過ごされているのです。

「コロイド」を一つの切り口として学問としての化学と日常生活を結びつけ、より多くの学びを得ていって欲しいと思います。

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化学物質の状態・構成・変化理科生活と物質

3分で簡単「親水コロイド」実は身近なコロイドを理系ライターがわかりやすく解説!

コロイド溶液の重要な性質として透析チンダル現象ブラウン運動電気泳動があります。こちらも興味があれば確認してみてくださいね。

2. 親水コロイドの性質

それでは親水コロイド自体の特徴と塩析、保護コロイドといった性質についてみていきましょう。

2-1. 親水コロイドの各種特徴

2-1. 親水コロイドの各種特徴

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一般的に疎水コロイドには無機物質の分散コロイドが多く親水コロイドには有機物質の分子コロイドが多い特徴があります。これは親水コロイドとして代表的なタンパク質が、親水性の官能基であるカルボキシ基(-COOH)をもつことからもイメージはできますよね。

そしてもう一つ、疎水コロイドは同じ電荷同士(水酸化鉄ならプラス同士、粘土ならマイナス同士)の反発力で分散していますが親水コロイドは水分子を表面に吸着(水和)することにより分散しているという違いも覚えておきましょう。

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オリジナルのアップロード者は英語版ウィキペディアLukeSurlさん Later versions were uploaded by DMacks at en.wikipedia. – en.wikipedia からコモンズに移動されました。, パブリック・ドメイン, リンクによる

また親水コロイドは会合コロイドと分子コロイドに大別されることについても触れておきましょう。

会合(かいごう)コロイド、別名ミセルコロイドとしては石けんがあります。石けんの濃度が一定以上になると中心の油汚れに疎水基(親油基)を、外側に親水基を向けたミセルとなって会合コロイドを形成するのです。

その一方分子コロイドはタンパク質、デンプンといった巨大分子そのものがコロイドとなるものでありタンパク質は正電荷をもつ正コロイドデンプンは負電荷をもつ負コロイドという特徴があります。

2-2. 親水コロイドの凝集沈殿=塩析

2-2. 親水コロイドの凝集沈殿=塩析

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疎水コロイドは少量の電解質を添加することで凝集沈殿し、これを凝析といいます。しかし親水コロイドはその表面に水分子を吸着(水和)しているため、少量の電解質を加えただけでは水和した水分子を奪い取るだけで凝集沈殿させることができません。そこで多量の電解質や脱水剤を加えて沈殿させること塩析とよびます。

2-3. 保護コロイド

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疎水コロイドに対して一定の親水コロイドを加えることで親水コロイドが疎水コロイドの回りを取り囲むことで凝析しにくくする現象がおきます。これを保護作用と言い、疎水コロイドを凝析しにくくするために加えられたコロイドのことを保護コロイドと呼ぶことも覚えておきましょう。

後述しますが身の回りでは墨汁やインクに保護コロイドの考え方が応用されています。

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