この記事では「辟易」について解説する。

端的に言えば「辟易」の意味は「嫌になること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「辟易」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。学生生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で日本語を分かりやすく解説する。

「辟易」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「辟易」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「辟易」の意味は?

「辟易」には、次のような意味があります。

1.ひどく迷惑して、うんざりすること。嫌気がさすこと。閉口すること。「彼のわがままには辟易する」「毎日同じ料理ばかりで辟易する」
2.相手の勢いに圧倒されて尻込みすること。たじろぐこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「辟易」

「辟易」(へきえき)には、二通りの意味があることが分かります。一つ目は自分にとって不快なことを人にされて嫌気がさしたり、うんざりすることを意味する言葉です。これは最初から耐え切れないほど嫌いなものというよりは、何回もされて飽きてしまったり嫌になってしまうことを指します。一回きりでは許せたり気にならないことも、しつこく何度もされるといやになってしまうことがありますよね。「辟易する」の一つ目の意味は、そのように何回もされることによって飽和状態になっている事を表現します。

二つ目は自分よりもヒエラルキーが高い人や勢いが凄まじい人に直面した時に、尻込みして一歩下がってしまうことです。人は日頃から意識せずとも自分の立場やヒエラルキーを気にしてしまうものですよね。自分よりも綺麗な人と対面したり、強そうな人を相手にしたときついつい自分が一歩下がって相手の後方に回ってしまいます。「辟易する」の二つ目の意味は、この様に立場や勝ち負けを気にするあまり、相手の強さに圧倒されることを指す言葉です。

「辟易」の語源は?

image by iStockphoto

次に「辟易」の語源を確認しておきましょう。「辟易」は、中国の『史記』(項羽本紀)に出てくる表現です。確かに日常的にあまり用いることはない、難しい言葉ですよね。

「辟易」の語源を知るためには、まず一つ一つの漢字の意味を紐解いていきたいと思います。「辟易」は、「辟」と「易」という漢字で成り立っていますね。「辟」には「避ける」「逃げる」という意味があり、「易」には「変える」という意味があります。よってこの二つの漢字の意味を直訳すると「避けるために道を変える」という意味になることが分かりますね。この様に元々は「避けるために道を変える」という行動重視の意味を持ったものが、「避けたい」「道を変えたい」という精神面の方が重視されて派生したのが現在の「辟易」になります。

\次のページで「「辟易」の使い方・例文」を解説!/

「辟易」の使い方・例文

「辟易」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.英会話クラブに入会したが、周囲の会員の英語学習に対する気持ちが自分とは比べ物にならないほど高いということを感じ取り、思わず辟易してしまった。
2.人気ランキング上位のアニメ作品は皆制作会社が同じで内容も偏っているので、視聴者は正直辟易している。
3.崖を迷わずに登っていく達人の勇敢な姿に辟易させられた。

例文の1番と3番は「辟易」の二つ目の意味である「相手に圧倒されて尻込みすること」の方を用いた例文です。例文を見ていくと、自分よりも能力や気持ちが強い人に対して「辟易」が用いられていることが分かりますね。

これに対して例文の2番は「辟易」の一つ目の意味である「嫌になることやうんざりすること」の方を用いた例文です。一つ一つの作品に対して嫌気がさしているというよりは、同じような作品が続くことに対して嫌気がさしているというニュアンスがあることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

この様に「辟易」には二通りの意味があり、それぞれ全く異なる意味と使い方をするということが分かります。しかしどちらも語源の「避けたい」「道を変えたい」という気持ちが内面にあることが共通していますね。語源を知ると、全く異なる意味に繋がりを見出すことが出来ます。

「辟易」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「辟易」には二通りの意味があることが分かりましたね。ここではそんな「辟易」の類義語と使い分けを見ていきましょう。

「閉口する」

「辟易」の意味が二通りあったように、「閉口する」にも意味が複数あります。

\次のページで「「辟易」の対義語は?」を解説!/

1.手に負えなくて困ること。また、そのさま。「この暑さには閉口だ。」
2.言い負かされたり圧倒されたりして、言葉に詰まること。
3.口を閉じてものを言わないこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「閉口」

この「閉口」の1番と2番の意味を見ていただくと、「辟易」の二つの意味と同じだということが分かりますね。「手に負えなくて困ること」というのは、手に負えないほどしつこく続くことに嫌気がさしているという意味なので、「辟易」の「嫌になる」「うんざりする」という方の意味と同じです。「言い負かされたり圧倒されたりして言葉に詰まること」というのは、そのまま「辟易」の「相手に圧倒されて尻込みする」という方の意味と同じことが分かります。

この様に二通りのどちらの意味も共通して表現することが出来るのは「閉口」のみですが、「閉口」は3番目の意味の「口を閉じる」という直接的な意味の印象が強いので、「口を閉じる」ということを強調したい場合以外には「辟易」を用いた方が分かりやすく伝えることが出来ますよ。

「辟易」の対義語は?

「辟易」の対義語は、二通りの意味のそれぞれに対してひとつずつ見ていきましょう。

「感興」

まず、「同じことが続いてうんざりすること、嫌になること、飽き飽きすること」の方の意味の対義語は「感興」です。「感興」は、何かに対して興味が沸くことを表現します。

何かに興味が沸くというのはその対象に対して好感があることや新鮮味を感じているということが分かりますね。「うんざりしたり嫌になること」は物事に飽きたり嫌気がさしているということなので、この対義語としては「感興」を用います。

「悠然」

一方で「相手に圧倒されて尻込みすること」の対義語は、「悠然」です。「悠然」は、落ち着いて少しもあわてない様子や心のゆとりを表現します。相手を見るだけであわてたりたじろいでしまう「辟易」とは正反対の状況や性格を指すことが分かりますね。

\次のページで「「辟易」を使いこなそう」を解説!/

「辟易」を使いこなそう

この記事では「辟易」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「辟易」は、「避けるために道を変えたい」という思いから派生して二通りの意味を持つということが分かりましたね。一見全く違う意味に見えても、語源を辿ると繋がっていることが分かるというのは日本語の面白いところなのではないでしょうか。

この機会に是非、語源とセットで「辟易」の使い分けを覚えてみてくださいね。

" /> 「辟易」の意味や使い方は?例文や類語を現役学生ライターがわかりやすく解説! – ページ 3 – Study-Z
国語言葉の意味

「辟易」の意味や使い方は?例文や類語を現役学生ライターがわかりやすく解説!

1.手に負えなくて困ること。また、そのさま。「この暑さには閉口だ。」
2.言い負かされたり圧倒されたりして、言葉に詰まること。
3.口を閉じてものを言わないこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「閉口」

この「閉口」の1番と2番の意味を見ていただくと、「辟易」の二つの意味と同じだということが分かりますね。「手に負えなくて困ること」というのは、手に負えないほどしつこく続くことに嫌気がさしているという意味なので、「辟易」の「嫌になる」「うんざりする」という方の意味と同じです。「言い負かされたり圧倒されたりして言葉に詰まること」というのは、そのまま「辟易」の「相手に圧倒されて尻込みする」という方の意味と同じことが分かります。

この様に二通りのどちらの意味も共通して表現することが出来るのは「閉口」のみですが、「閉口」は3番目の意味の「口を閉じる」という直接的な意味の印象が強いので、「口を閉じる」ということを強調したい場合以外には「辟易」を用いた方が分かりやすく伝えることが出来ますよ。

「辟易」の対義語は?

「辟易」の対義語は、二通りの意味のそれぞれに対してひとつずつ見ていきましょう。

「感興」

まず、「同じことが続いてうんざりすること、嫌になること、飽き飽きすること」の方の意味の対義語は「感興」です。「感興」は、何かに対して興味が沸くことを表現します。

何かに興味が沸くというのはその対象に対して好感があることや新鮮味を感じているということが分かりますね。「うんざりしたり嫌になること」は物事に飽きたり嫌気がさしているということなので、この対義語としては「感興」を用います。

「悠然」

一方で「相手に圧倒されて尻込みすること」の対義語は、「悠然」です。「悠然」は、落ち着いて少しもあわてない様子や心のゆとりを表現します。相手を見るだけであわてたりたじろいでしまう「辟易」とは正反対の状況や性格を指すことが分かりますね。

\次のページで「「辟易」を使いこなそう」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: