この記事では「木を見て森を見ず」について解説する。

端的に言えば「木を見て森を見ず」の意味は「細かいところばかり見て、全体を見ていないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「木を見て森を見ず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「木を見て森を見ず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「木を見て森を見ず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「木を見て森を見ず」の意味は?

「木を見て森を見ず」には、次のような意味があります。

小さいことに心を奪われて、全体を見通さないことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「木を見て森を見ず」

この言葉は「小さい・細かい点ばかり注目して、全体を見ていない」ことを意味する慣用句です。使われている言葉からも、その意味は想像しやすいのではないかと思います。たとえば、森や林の前にいながら、一本の木しか見ていない状況は、いかにも「小さいことしか見ていない」意味合いになりますね。

ポイントとしては、「細かい点ばかりに注目して」というところ。ただ単に「不注意で、周りを見ていない」だけではないのです。「細かいところ見ている」ニュアンスを忘れないようにしましょう。

そのため、この慣用表現が使われた場合は「全体を見ていない」の他、「細かすぎる」という指摘になることもあります。わずかな違いですが、ここまで注意するとより正確に意味を読み取ることができるようになるでしょう。

「木を見て森を見ず」の語源は?

次に「木を見て森を見ず」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、はヨーロッパにおける同様の表現から生まれたと考えられています。ただ確証はないようで、日本語でも他に似た表現は存在している為、説の一つと考えて良いようです。

その表現は、たとえば英語では「Not see the forest for the trees.(木を見ている為に、森を見ない)」など。同様のものがフランス語やドイツ語にも存在しており、世界各地で似た認識がされているというのは面白いものですね。興味がある人は、他の言語での表現もぜひ調べてみましょう。

こうした共通の認識は、どの地域でも人間が自然と共に生き、その中で言葉が生まれたことを示しているのかもしれません。同義語の項で、他にも似た語句を引用している慣用表現を紹介します。そちらも確認してみてくださいね。

\次のページで「「木を見て森を見ず」の使い方・例文」を解説!/

「木を見て森を見ず」の使い方・例文

「木を見て森を見ず」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・マンガ研究クラブで、話題のアニメに関して分析する機会があったが、タイトルで使われているフォント部分にまで文句を言っている人がいて、それは木を見て森を見ずだとみんな呆れていた。

・転職した会社で、気合を入れすぎたばかりに担当商品のチェックを厳しくしてしまい納期が遅れ、会社としてのゴールを考えて判断しないと木を見て森を見ずだぞ、と先輩にさっそく怒られてしまった。

・先生はいつも、細部までこだわるのはいいが、本質の迫っていなかったら木を見て森を見ずにすぎない。色々と経験して、何が大事が思考する癖をつけよう、と生徒たちに語っている。

細かいところばかり見ている」「全体を見ていない」というニュアンスが伝わりますでしょうか。

基本的にはこの表現が使われた人・物事に対して、批判がなされていると考えていいでしょう。そして、その裏側には「もっと大切なことがある・注意しなければいけないのは他の部分なのに」というメッセージが含まれていることもあります。その裏側まで読み取れらないと文意を誤って捉えてしまうことも。注意して読み込むようにしてくださいね。

また、例文二番目のように「木を見て森を見ず」な行動をする人は、不慣れだったり、そもそも全体を理解できていなかったりするだけであることも。人物の地位や関係も推察できる表現でもあることを押さえておきましょう。

「木を見て森を見ず」の類義語は?違いは?

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「木を見て森を見ず」の類義語は「鹿を追う者は山を見ず」がいいでしょう。

「鹿を追う者は山を見ず」

「鹿を追う者は山を見ず」は、「目標を追うことに夢中になって、より大きなものを見ていない」ことを意味する慣用表現です。言葉に即して想像すれば、鹿(獲物)を追うことばかり考えて、危険な山に不注意なまま入ってしまい後戻りできなくなる…というイメージでしょうか。「木を見て森を見ず」よりもその危険性が想像しやすいかもしれません。これも、昔の人々が自然の中で生き、狩猟をする生活から生まれた言葉と考えることができるでしょう。

他にも、「木を数えて林を忘れる」「金をつかむ者は人を見ず」などの同義語があります。いずれも「目先のこと」に気を取られてしまっている状態を表し、その為に何かまずいことが起こるのを予感させる言葉です。

\次のページで「「木を見て森を見ず」の対義語は?」を解説!/

仕事で利益を追求することは必要だが、鹿を追う者は山を見ずにならないようにしないと、後々で手痛い仕返しを受けることになるかもしれない。

「木を見て森を見ず」の対義語は?

「木を見て森を見ず」の対義語は「鹿を逐(お)う者は兎を顧みず」がいいでしょう。

「鹿を逐う者は兎を顧みず」

「鹿を逐う者は兎を顧みず」は「鹿=本命を狙う者は、兎=それ以外の小さなことに気を取られたりしない」、転じて「大きな利益を狙う者は、些細なことにとらわれない」を意味する慣用表現です。

「木を見て森を見ず」とはまさに逆で、小さなことは気にしないという力強い態度と言えるでしょう。ただ、それはそれで、不注意や漏れ・抜けを起こすこともあるはずですから、結局は何事もバランスが必要なのかもしれませんね。

・今回の選挙で絶対に生徒会長になるため、鹿を逐う者は兎を顧みずの精神で、ひたすらイメージアップに努めようというのが彼の方針だ。

「木を見て森を見ず」の英訳は?

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「木を見て森を見ず」の英訳は「You cannot see the wood for the trees.」で表すことができます。

「You cannot see the wood for the trees.」

これは直訳すれば、「あなたは木のために、森を見ることができない」。

語源の項で述べた「Not see the forest for the trees」とはほぼ同じ意味になりますが、主語「You」で始まるこちらの表現は、相手に対しての警告や注意としての意図が強く表れます。場合によっては攻撃的な使い方になってしまうこともありますので、使うシーンには注意してくださいね。フレーズそのままのため、今回は例文はありません。

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「木を見て森を見ず」を使いこなそう

この記事では「木を見て森を見ず」の意味・使い方・類語などを説明しました。

語源の項でご紹介したように、西洋でもよく使われるフレーズと言うことで、言い換えがたくさん存在している言葉です。人々の生活がどこでも似通っていたのはもちろん、人間は誰しも目の前のことに注意してしまう性質がある、ということが推測できる面白い言葉だったと言えるでしょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「木を見て森を見ず」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「木を見て森を見ず」について解説する。

端的に言えば「木を見て森を見ず」の意味は「細かいところばかり見て、全体を見ていないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「木を見て森を見ず」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「木を見て森を見ず」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「木を見て森を見ず」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「木を見て森を見ず」の意味は?

「木を見て森を見ず」には、次のような意味があります。

小さいことに心を奪われて、全体を見通さないことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「木を見て森を見ず」

この言葉は「小さい・細かい点ばかり注目して、全体を見ていない」ことを意味する慣用句です。使われている言葉からも、その意味は想像しやすいのではないかと思います。たとえば、森や林の前にいながら、一本の木しか見ていない状況は、いかにも「小さいことしか見ていない」意味合いになりますね。

ポイントとしては、「細かい点ばかりに注目して」というところ。ただ単に「不注意で、周りを見ていない」だけではないのです。「細かいところ見ている」ニュアンスを忘れないようにしましょう。

そのため、この慣用表現が使われた場合は「全体を見ていない」の他、「細かすぎる」という指摘になることもあります。わずかな違いですが、ここまで注意するとより正確に意味を読み取ることができるようになるでしょう。

「木を見て森を見ず」の語源は?

次に「木を見て森を見ず」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、はヨーロッパにおける同様の表現から生まれたと考えられています。ただ確証はないようで、日本語でも他に似た表現は存在している為、説の一つと考えて良いようです。

その表現は、たとえば英語では「Not see the forest for the trees.(木を見ている為に、森を見ない)」など。同様のものがフランス語やドイツ語にも存在しており、世界各地で似た認識がされているというのは面白いものですね。興味がある人は、他の言語での表現もぜひ調べてみましょう。

こうした共通の認識は、どの地域でも人間が自然と共に生き、その中で言葉が生まれたことを示しているのかもしれません。同義語の項で、他にも似た語句を引用している慣用表現を紹介します。そちらも確認してみてくださいね。

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