この記事では「三々五々」について解説する。
端的に言えば「三々五々」の意味は「少人数のまとまりがそれぞれ行動する様子」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
学習塾経営者で国語が得意な「ぼすこ」を呼んです。一緒に「三々五々」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ぼすこ
国立大学教育学部卒業後、学習塾を経営。読書好きが高じて蓄えた幅広い知識と、得意教科である国語力で、四字熟語をわかりやすく解説していく。
「三々五々」について辞書で調べると以下のような意味であることがわかります。
1.三人、五人というような小人数のまとまりになって、それぞれ行動するさま。三三両両。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「三三五五」
私自身も身に覚えがあるのですが、学生時代は特に何人かのグループになって行動することが多かったものです。ぜひ思い返してほしいのですが、教室の中には、いくつかのグループがあって、それぞれに好きな話をしたり、ゲームをしたり、といったようではなかったでしょうか。教室内での様子に限らず、同じ目的で動いているグループは、それ自体が一つのかたまりのように見えます。何人かのグループが一つのかたまりとして行動する。「三々五々」が表すのはこの状態です。
「三三五五」と表記することもあります。「三」と「五」という簡単な漢数字のみでできた四字熟語ですが、正直な話、私は最初読み方で少し悩みました。素直に「さんさんごご」と読めばよいのですが、「さん」なのか「み」なのか、などといろいろ考えこんでしまったのです。
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「三々五々」をどういった場面で使うのか、例文から確かめていきましょう。
1.新学期を迎えた教室では、どこかよそよそしさがありつつも、三々五々、話に花を咲かせている。
2.大人数での花見もお開きとなり、三々五々、解散していった。
「三々五々」は、人やものに対して副詞的に使われる四字熟語です。由来となる李白の採蓮曲に習い、人に対して使われることが一般的とされています。「三々五々、」の形で使われることがほとんどですが、まれに「三々五々と」というふうに「と」をつけて使用されることも。何かをしようとする場合に、少数で構成されたグループで動こうとするのは、日本人らしい感覚ですし、そういった意味からも「三々五々」が古くから現代まで使われてきたことに納得できます。「三々五々」は、それほど一般的な四字熟語ではないですが、日本という国や国民性から考えると、使える機会が多い四字熟語なんですね。
また、日本人は古来から「三」という数字を縁起の良い数字として、好ましく扱ってきています。結婚式での三三九度などもその例です。「三」と「五」という奇数を重ねた四字熟語で日本人にとって馴染みやすい、という点でも覚えておいて損はないでしょう。
辞書的にはほぼ同じような意味を持つ四字熟語です。「三々五々」がかたまりがまとまって動いているのを表現するのに対し、「三々両両」では、そのかたまりが散在している様子を表します。「三々五々」よりもさらに使用頻度の少ない言葉です。
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「三々五々」と反対の意味を持つ言葉についても見ていきましょう。
こちらの言葉も「三々五々」同様、副詞として使われる言葉ですね。「三々五々」が少数のかたまりであるのに対し、「一同に」「一斉に」を使うと、「その場にいる全員」という意味を表します。「三々五々」では全員で動くわけではないので、反対の意味としてとらえられますね。
こちらは副詞として使う言葉ではないですが、「群れずに一人で行動する様子」という意味から考えると、「三々五々」とは反対の意味になるでしょう。ちなみに一匹狼のように、個人で行動する人がちらほらいる状態は「三々五々」にはなりません。あくまで、数名のかたまりであることが重要です。
確固たる自分を持って「一匹狼」もかっこいいですが、時には「一匹狼」時には「三々五々」の中と、バランスよく人間関係を保っていける人が素敵だな、と私は思います。
「twos」や「threes」はそれぞれ、「two」「three」の複数形。直訳すると、「2人組や3人組のグループで」となります。少人数のグループがいくつかあるため、複数形を使うのでしょう。
この英訳を日本語に訳し直すと、「ちらほら」という意味も出てきます。「ちらほら」と「三々五々」では意味合いが違ってきますので、様子を表すときにも細かな違いで言葉を使い分ける日本語の細やかさを実感しました。
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さて、「三々五々」についてのあれこれを説明してきました。
古くからある四字熟語にもかかわらず、あまり一般的ではないよう「三々五々」。少人数のまとまり、という表現が難しい状態を、たった四文字でうまく表した四字熟語ですね。最初にこの言葉を作って李白のすごさを感じざるを得ません。
話し言葉として使うよりも文章で使われることが多いですが、スマートに状況を説明できる言葉ですので、ぜひ活用してみてください。