
3分で簡単「自然放射線」安全?健康に影響は?理系ライターがわかりやすく解説
インドのケララ州ではなんと日本平均の30倍以上の大地からの放射線を浴びています。そして驚くべきはこれら高線量地域ではそれぞれ大規模な疫学調査が行われているのですが、がんの死亡率や発症率に関し有意な差が認められていないことが知られているのです。
なおブラジルのガラパリという都市も以前は年間10ミリシーベルトの高線量地域として有名だったのですが、現在では年間0.5ミリシーベルトと1/20の線量となっています。これはなぜかというと都市化に伴いアスファルト舗装が進むことで土壌中の放射性物質が隔離されたことが要因です。放射線、放射能、放射性物質の違いがしっかりと理解できていればなぜ線量が下がったかも分かりやすいですよね。
3. 考古学で利用される自然放射性物質

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以上自然放射線について学んできましたが、最後に自然放射性物質が考古学の世界で利用されているという話をしましょう。最もポピュラーなのは炭素14を用いた放射性炭素年代測定です。
炭素14と言えば宇宙線で説明した通り大気中に常に二酸化炭素の形で一定濃度含まれている放射性同位体。水素3の半減期12年ほど短すぎず、カリウム40の半減期12億年ほど長すぎない5,730年の半減期をもっている特性を活かして2万8,000年前までの年代を推定することが可能になるのです。
具体的に説明すると大気中に一定の割合で含まれる炭素14を植物が光合成で体内に取り組みその植物を動物や人間が食べたり、木を切り倒して住居に使用しますよね。当然そこで摂取もしくは伐採された植物は炭素の取り込みを停止しますので、測定時点(現代)で炭素14がどれくらい残留しているのかを測定することで年代測定が可能になり、測定した炭素14の比率が大気の1/2であれば5,730年前、1/4であれば1万1,460年前というわけです。
自然放射線は昔から身近に存在している
まず放射線、放射能及び放射性物質の言葉の定義とベクレル、グレイ、シーベルトといった単位について理解した後、自然放射線は大きく宇宙由来のものと自然放射性物質由来(空間、大地、食物)のものに分けられるということを学びました。
またこれら自然放射線が日本に住む私たちとは比較にならないほど高い地域で暮らす人たちが存在し、疫学的な調査でがんの死亡率、発症率に顕著な差が認められていないこと。また昔人類がいつどのように暮らしていたのか、その手がかりとして使われていることも分かりましたね。
自然放射線のことを恐れるのではなく身近なものとして受け入れ、これからも上手く付き合っていきたいものです。
イラスト使用元:いらすとや