この記事では「俯瞰」について解説する。

端的に言えば俯瞰の意味は「高いところから見渡す」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、ビジネスシーンでもよく使われる「俯瞰」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

せっかちな性格もあり、目の前のことに夢中になると俯瞰的な視点を忘れがちなのは反省点だとのこと。俯瞰とはどんなときに使う言葉なのか解説してもらう。

「俯瞰」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「俯瞰」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「俯瞰」の意味は?

「俯瞰」には、次のような意味があります。

高い所から見下ろし眺めること。鳥瞰。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「俯瞰」の意味はこのように「高いところから見渡す」ことですが、2つの意味で使われることがあります。1つ目は物理的に高い視点から全体を見ること。2つ目は比喩的に、広い視野で物事を捉えるとか、客観的に全体像を捉えるという意味です。

風景や写真の話題では1つ目の意味、物の見方や取り組み姿勢を表すときは2つ目の意味で使われることが多くなっていますよ。

「俯瞰」の語源は?

次に「俯瞰」の語源を確認しておきましょう。

難しい漢字2つから成り立つ単語ですが、分解すると「俯」は訓読みでは「うつむく」となり、そのとおり下を見ること。「瞰」は「上から下を見る、見下ろす」という意味です。合わさって「上から下を見渡す」という意味なのが分かりやすいですね。

\次のページで「「俯瞰」の使い方・例文」を解説!/

「俯瞰」の使い方・例文

「俯瞰」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・私が卒業した大学は丘の上にあるので、屋上から街を俯瞰できる眺めの良さも自慢です。

・旅行先で出された料理の写真を俯瞰で撮影した。

・部長の言うとおり、計画の全体像をつかむには俯瞰することが欠かせない。

・いつまでも独りよがりな考え方をしていないで、俯瞰的な視点を取り入れないと展望が開けないよ。

「意味」のところで説明した物理的に上から見る使い方と、比喩的な使い方の例文を2つずつ紹介しました。

ビジネスシーンで使われる場合には、「上から」という意味はそう強くなく、「視野を広げて全体を把握する」「自分中心の視点でなく客観的な見方をする」といったニュアンスが強いこともあるので注意しましょう。

「俯瞰」の類義語は?違いは?

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では、「俯瞰」と似たような言葉はあるのでしょうか。

「鳥瞰(ちょうかん)」

大空を飛ぶ鳥のように高いところから見下ろして、全体を把握することをいいます。漢字から解釈すれば「うつむいて上から下を見る」を意味する「俯瞰」よりもさらに高い位置から広い範囲を見渡せそうですね。

とはいえ実際に高さによって二つの言葉を使い分けるということはなく、どちらもほぼ同じニュアンスで使われています。ビジネスシーンでは「俯瞰」を聞く機会のほうが圧倒的に多いように感じますよ。

\次のページで「「大局」」を解説!/

「大局」

「上から」というニュアンスは含みませんが、「物事の全体のありさま」を意味するのが「大局」です。

「俯瞰」の場合はそのまま動詞として「俯瞰する」という言い方をしますが、「大局」そのものは「見る」という意味を持たないので、「大局的に見る」という使い方をします。また、「大局的観点から考えると…」という用法もよく見かけますよ。「マクロな視点」と言い換えることもできますね。

・それほど標高が高い山ではないが、それでも山頂から下界を鳥瞰すると気分が晴れる。

・この会議で目立つことばかり考えるのではなく、大局的見地に立って会社のためになる改善策を議論してほしい。

「俯瞰」の対義語は?

次に、「俯瞰」と反対の意味を持つ言葉を見ていきましょう。

「偏狭(へんきょう)」

「偏(かたよ)っていて狭い」という文字のとおり、自分だけの狭い考えにとらわれている様子をいう言葉です。物の見方や性格を指して使いますよ。

とはいえ「偏狭な人だ」と言われたら誰しもムッとするかもしれないほど、マイナスイメージが強いのも事実。他人を指して言うときは、状況をよく判断してからにしたほうがいいでしょう。

「近視眼的(きんしがんてき)」

近眼の人は近くはピントが合いやすいものの、遠くを見るのは苦手ですよね。その様子から、全体を見ようとせず、目先のことにとらわれる様子を「近視眼的」といいます。

上から下を見るなど位置には関係ない言い方という点では、「俯瞰」の類義語として紹介した「大局(的)」の対義語といったほうがぴったりするかもしれません。とすると、「大局」のところで「マクロな視点」を挙げたことに対応して、「ミクロな視点」も「俯瞰」の対義語と考えられる面がありますね。

・係長になったはいいが、偏狭な見方を改めないとそれ以上の出世は望めないぞ。

・近視眼的な考え方はやめて、これからの自分の人生に本当に必要なものをよく考えてみよう。

\次のページで「「俯瞰」の英訳は?」を解説!/

「俯瞰」の英訳は?

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最後に、「俯瞰」を英語で表現する方法を見てみましょう。

「overlook」

「俯瞰する」を1つの単語で表すなら、「overlook」がいいでしょう。「見渡す、見下ろす」という意味です。ただしこの単語には「見落とす、見過ごす」という意味もあるので、文脈によってきちんと判別できるよう気をつけましょう。

「take a broad view of things」

「俯瞰」を比喩的に使う場合の英語表現としては、「take a broad view of things(広い視野で物事を見る)」などを用いるといいでしょう。

最後の単語はthingsに限らず、見る対象を入れて使うことができますよ。

・We can overlook the sea from this mountain.(この山からは海が見下ろせる)

・I started to take a broad view of my life.(人生を広い視野で見るようになった)

「俯瞰」を使いこなそう

この記事では「俯瞰」の意味・使い方・類語などを説明しました。

物理的に上から下を見る場合と、比喩的に全体を把握する場合と、両方の使い方ができる「俯瞰」。筆者はこの記事を書きながら、ペルーでナスカの地上絵を見たときにヘリコプターから大地を俯瞰したときのことを思い出していました。また海外旅行に出かけられるのはいつのことかわかりませんが、今度はどこに行こうか、夢が広がります。

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国語言葉の意味

「俯瞰(ふかん)」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

「大局」

「上から」というニュアンスは含みませんが、「物事の全体のありさま」を意味するのが「大局」です。

「俯瞰」の場合はそのまま動詞として「俯瞰する」という言い方をしますが、「大局」そのものは「見る」という意味を持たないので、「大局的に見る」という使い方をします。また、「大局的観点から考えると…」という用法もよく見かけますよ。「マクロな視点」と言い換えることもできますね。

・それほど標高が高い山ではないが、それでも山頂から下界を鳥瞰すると気分が晴れる。

・この会議で目立つことばかり考えるのではなく、大局的見地に立って会社のためになる改善策を議論してほしい。

「俯瞰」の対義語は?

次に、「俯瞰」と反対の意味を持つ言葉を見ていきましょう。

「偏狭(へんきょう)」

「偏(かたよ)っていて狭い」という文字のとおり、自分だけの狭い考えにとらわれている様子をいう言葉です。物の見方や性格を指して使いますよ。

とはいえ「偏狭な人だ」と言われたら誰しもムッとするかもしれないほど、マイナスイメージが強いのも事実。他人を指して言うときは、状況をよく判断してからにしたほうがいいでしょう。

「近視眼的(きんしがんてき)」

近眼の人は近くはピントが合いやすいものの、遠くを見るのは苦手ですよね。その様子から、全体を見ようとせず、目先のことにとらわれる様子を「近視眼的」といいます。

上から下を見るなど位置には関係ない言い方という点では、「俯瞰」の類義語として紹介した「大局(的)」の対義語といったほうがぴったりするかもしれません。とすると、「大局」のところで「マクロな視点」を挙げたことに対応して、「ミクロな視点」も「俯瞰」の対義語と考えられる面がありますね。

・係長になったはいいが、偏狭な見方を改めないとそれ以上の出世は望めないぞ。

・近視眼的な考え方はやめて、これからの自分の人生に本当に必要なものをよく考えてみよう。

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