この記事では「忖度(そんたく)」について解説する。

端的に言えば忖度の意味は「他人の心をおしはかる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「忖度」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

人間関係において「忖度」は不可欠だと思っているので、悪いイメージの言葉になってしまったことが残念に感じられるそうだ。もともとの意味や、近年の使われ方から定着したニュアンスについても解説してもらう。

「忖度」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「忖度」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「忖度」の意味は?

「忖度」には、次のような意味があります。

他人の心をおしはかること。また、おしはかって相手に配慮すること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

このようにそもそも「忖度」という言葉は単純に「相手の気持ちを考える」という意味しかありません

この言葉を一躍有名にしたのが、2017年の森友学園の問題。連日、国会やマスコミで取り沙汰され、「総理夫人に忖度したんじゃないか」などと使われました。以来すっかり「上の人の意向に沿うように取り計らう」といったイメージが定着しましたね。中には「忖度」というと、へつらい、えこひいきとか賄賂(わいろ)、買収のようなイメージまで持っている人もいるかもしれません。

本来の意味からすれば、目上の人に限らず友人や家族に対して行ってもかまわないのが忖度。単に相手への気遣いとして忖度するのは人間関係をスムーズにする潤滑油のようなものです。

ですが悪いイメージが定着した今となっては、本来の意味のつもりで「部長に忖度してこの店を選びました」と使ったらどうなるでしょうか。相手によっては「俺はそんなに威張ってないぞ」とか「だからって給与査定に手ごころは加えないぞ」など、恐怖による配慮とか見返りへの期待があるように誤解されてしまうかもしれません。

自ら「忖度」という言葉を使う場合は、シーンや相手をよく考えた方がよさそうです。

「忖度」の語源は?

次に「忖度」の語源を確認しておきましょう。

最初に登場したのは、中国最古の詩集である「詩経」に収められた「巧言」という詩。「人によこしまな心があれば、私はそれをおしはかる」という意味を表すときに「忖度」が使われています。実際、漢字の意味を調べると「忖」と「度」両方に「おしはかる」という意味がありますよ。

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「忖度」の使い方・例文

「忖度」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・映画の感涙シーンで彼女の気持ちを忖度し、そっとハンカチを差し出した。

・取引先への忖度で契約を取れただけで、あの会社の商品そのものは大したものじゃない。

1つ目は本来の意味に忠実な例文、2つ目は最近使われがちな悪いニュアンスを含んだ例文にしてみました。

筆者の体感としては「忖度」を本来の意味で用いる人はとても少なく、「目上の人へのおべっか」のように使う人が大半のようです。流行語の影響力の強さを感じます。

「忖度」の類義語は?違いは?

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では、「忖度」と同じような意味の言葉を見ていきましょう。

「斟酌(しんしゃく)」

「斟酌」とは、相手の心情をくみとることや、くみとったうえで加減を加えることをいいます。例えば「帰国子女なので試験の結果に斟酌を加える」といえば、「帰国子女であることを考慮して点数の増減などの配慮をする」ということ。

「忖度」と似ていますが、斟酌は単に気持ちを想像するだけではなく、相手の心情を踏まえた具体的な行動まで含むことが多いのが特徴です。

とはいえ、「忖度」も今では「目上の人の気持ちを推し量ってそれに沿う行動をする」といった意味で使われることも多いので、「斟酌」に置き換えられるケースが多そうですね。

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「推察(すいさつ)」

「他人の事情を推し量ること、思いやること」を「推察」というので、「忖度」を本来の意味で使う場合にはこちらが最適な類語ですね。

なお似た言葉である「推量」は根拠の有無を問わず単に想像すること、「推察」はその時点までにわかっていることをもとにして推し量ることをいいます。

「慮る(おもんぱかる)」

「おもいはかる」の音が変化した言葉で、周囲の状況などをよく考えることをいいます。「配慮」「考慮」などで使う字ですね。

単に周りの状況を観察して理解するだけでなく、思いやりの気持ちやその後の行動も含むニュアンスがある「慮る」。日常会話ではあまり耳にしないかもしれませんが、「冷たい対応に思うかもしれないが、君の心中を慮ってのことじゃないかな」などと使うことがありますよ。

「忖度」の対義語は?

続いて、「忖度」とは逆の意味を表す用語もご紹介します。

「独善」

「忖度」の本来の意味と反対のニュアンスがあるのは、「自分だけが正しいと考えること」という意味の「独善」でしょうか。相手の気持ちを推し量ることをしない点で逆の意味といえそうです。

「惻隠(そくいん)」

「あわれんで同情すること」を意味します。筆者は時代劇で「惻隠の情」と聞いたことがあるような気がしますが、あまり見慣れない言葉かもしれませんね。

主に相手を下に見て使う言葉なので、「忖度」を「目上の人に配慮して」というニュアンスで使う場合の反対語といえます。

「忖度」の英訳は?

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英語でも、「忖度」を表す単語や表現があるのでしょうか。

言いたいことをはっきりと主張せず、互いに「言外の意味を察し合う」ことをよしとするのは日本人独特の気質といえます。ですから物事をストレートに言うことが多い英語表現には、「忖度」とぴったり置き換えられるような単語は存在しません。

guess(推測する・推量する)やsurmise(推測する)を使えば済むケースもあるでしょうが、もう少しニュアンスが近い言葉を見ておきましょう。

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「read between the lines」

「線の間を読む」ですから「行間を読む」という意味です。

行と行の間に実際には書かれていない文章があるかのように意図を推測するということなので、「忖度」がもつ「言葉にされない気持ちをおしはかる」ニュアンスがありますね。

ただ、このところ使われている「忖度」の「意向に沿うように行動する」意味までは持たない点では、「read between the lines」を日本語に訳すとしたら「空気を読む」ぐらいがふさわしいのかもしれません。

「忖度」を使いこなそう

この記事では「忖度」の意味・使い方・類語などを説明しました。単に「相手の気持ちをおしはかる」という意味だったものが、最近は「上の人に気遣って行動を決める」といった使われ方をするようになったこの言葉。使う相手の認識と食い違うと思わぬ誤解にもつながります。「自分は本来の意味を知っているんだ!」と主張するのではなく、お互いの認識をすり合わせるような意識で接したほうが人間関係はスムーズになりますよ。

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「忖度」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

「忖度」の使い方・例文

「忖度」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・映画の感涙シーンで彼女の気持ちを忖度し、そっとハンカチを差し出した。

・取引先への忖度で契約を取れただけで、あの会社の商品そのものは大したものじゃない。

1つ目は本来の意味に忠実な例文、2つ目は最近使われがちな悪いニュアンスを含んだ例文にしてみました。

筆者の体感としては「忖度」を本来の意味で用いる人はとても少なく、「目上の人へのおべっか」のように使う人が大半のようです。流行語の影響力の強さを感じます。

「忖度」の類義語は?違いは?

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では、「忖度」と同じような意味の言葉を見ていきましょう。

「斟酌(しんしゃく)」

「斟酌」とは、相手の心情をくみとることや、くみとったうえで加減を加えることをいいます。例えば「帰国子女なので試験の結果に斟酌を加える」といえば、「帰国子女であることを考慮して点数の増減などの配慮をする」ということ。

「忖度」と似ていますが、斟酌は単に気持ちを想像するだけではなく、相手の心情を踏まえた具体的な行動まで含むことが多いのが特徴です。

とはいえ、「忖度」も今では「目上の人の気持ちを推し量ってそれに沿う行動をする」といった意味で使われることも多いので、「斟酌」に置き換えられるケースが多そうですね。

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