
不適切な支出が問題視される思いやり予算
思いやり予算は増額されていくものの、どのように使われているのか不明瞭な状態が続きました。そこで1990年代に入ると当初の趣旨とは異なる不適切な使われ方がされていると言われるように。予算そのものを見直す必要があるという考えの政治家も増えてきました。こうした流れもあり思いやり予算は徐々に減額されていきます。
レジャー施設のスタッフ給与に利用されることも
思いやり予算の当初の趣旨は、米軍基地で働く日本人労働者の福利厚生費や人件費にあてるというもの。基地の移転費用もそれで賄うことは決まっていました。しかしながら1990年代に入ると、アメリカ軍人の娯楽施設や保養施設で働くスタッフの制服や、そこが購入した備品など、思いやり予算の幅が広がっていることが指摘されるようになります。
具体的に公表されていないものの、不適切に使われている疑惑も明らかになりました。米軍関係者の娯楽のために日本の税金が投入されていることも問題視されるように。このような影響もあり、一時期は思いやり予算が減額されるようになります。テレビや雑誌などのメディアで盛んに報道されたこともあり思いやり予算に反発する国民も増加。風向きが悪くなっていきました。
2011年に協定の有効期間が延長される
東日本大震災は、思いやり予算の減額をストップさせる要因のひとつになります。2011年3月に起こった大震災で、アメリカ軍はトモダチ作戦と名づけられた大規模な災害救助・救援のための作戦を実行。2001年9月にアメリカ同時多発テロが発生したとき、日本の消防救助隊が駆けつけてくれたことの「恩返し」であることからトモダチという言葉が採用されました。
トモダチ作戦の支援を受けたこともあり、日本は賛成多数で新たな特別協定をアメリカと結ぶことに。この協定が締結されたことで、思いやり予算の減額はストップ。5年のあいだ、日本は減額することなく経費の一部を負担することが決まりました。そのとき決まった予算の水準額は1881億円。ピーク時よりは少ないものの、米軍はさらなる減額を免れることに成功しました。
トランプ大統領は日本の負担額アップを要求
U.S. Marine Corps Lance Cpl. Cristian L. Ricardo – https://www.dvidshub.net/image/3110897/58th-presidential-inaugural-ceremony, パブリック・ドメイン, リンクによる
2020年は次の5年間の思いやり予算をどうするのか話し合うタイミング。10月よりトランプ大統領と予算の配分の話し合いが始まりました。アメリカは大統領選挙により政権が交代することが決定。見通しが立たない状態になりました。軍事政策は政権により対応が異なるため、思いやり予算の交渉はアメリカの政権が確定しないと始められないです。
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