今回は「有機物の燃焼」について解説していきます。

有機物の燃焼は、メカニズム等を化学の視点で説明することができる。ですが、有機物の燃焼というテーマは化学以外の様々な学問にも深い関係をもっている。そして、近年頻繁に議論されるようになった地球温暖化問題にも、有機物の燃焼との関連性があるそうです。ぜひこの機会に、有機物の燃焼についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

有機物の燃焼について学ぼう!

image by iStockphoto

今回の記事のテーマは有機物の燃焼です。このテーマは、化学のみに関係があるように思われますよね。ですが、有機物の燃焼反応について考察しなければいけない場面は、化学分野以外であっても非常に多いのです

生物の代謝地球の炭素循環ペットボトルなどのプラスチックの処分方法といったことを考える際には、有機物の燃焼反応の知識が必要になります。また、有機物の燃焼反応はエネルギー問題や環境問題とも密接な関係がありますよ

この記事では、有機物の燃焼について化学的な視点でメカニズムを解説するだけでなく、関連する学問についても簡単に紹介していきますね。それでは、はじめに、有機物の燃焼のメカニズムを説明していきます。

有機物とは?

有機物の燃焼について考える前に、有機物の正体について考えてみましょう。有機物の定義はやや曖昧ですが、19世紀ごろまでは、動植物といった生物から得られる物質とされていました。そして、当時は、有機物は生物の組織内でのみ生成されると考えられていたのです

しかしながら、後になって、無機物から有機物を人工的に製造できることが確認されました。これによって、以上の定義は使用されなくなったのです。現在は、炭素を含む化合物のことを有機化合物に分類しています

ですが、二酸化炭素一酸化炭素炭酸塩などの物質は、無機化合物に分類されるというのが一般的です。これらは、構造が単純であることが共通点となっていますよ。

有機物の燃焼

有機物の燃焼

image by Study-Z編集部

有機物の多くは、可燃性があり、完全燃焼によって二酸化炭素が発生します。また、多くの有機物は水素原子も含んでいるので、燃焼時には水が生成されますよ。これだけの説明ではわかりにくいかと思いますので、具体例を挙げて説明しますね。

例として、メタノール(CH3OH)の燃焼反応を考えてみましょう。メタノールに火をつけると、2CH3OH+3O2→2CO2+4H2Oという反応が生じます。メタノールが、大気中から供給される気体の酸素と反応し、二酸化炭素と水が生成されていますよね

そして、燃焼の結果として生じる二酸化炭素と水の量は、元素分析の際に重要な情報となります。元素分析とは、化合物中に含まれている元素の比率を決定したり、化合物の構造を予測したりするような作業のことを意味しますよ。

\次のページで「有機物の燃焼反応の例」を解説!/

有機物の燃焼反応の例

ここからは、有機物の燃焼反応の具体例について説明していきます。私たちの身の回りで生じている有機物の燃焼反応には、どのようなものがあるのでしょうか?具体例を知ることで、有機物の燃焼メカニズムについての理解をいっそう深めることができると思いますよ

以下では、2つの事例を紹介します。それぞれの違いや共通点に注目しながら、記事を読み進めてみてくださいね。また、ここまで説明してきた有機物の燃焼についての化学的な考察も、頭に入れておきましょう。

燃料の使用

image by iStockphoto

有機物の燃焼反応の代表例と言えば、石炭、石油、天然ガスといった燃料を燃やす際の反応です。これらの燃料の主成分は炭化水素であり、燃焼の際には、二酸化炭素と水を生成します。また、燃焼時には熱エネルギーが発生することが知られていますよ。この熱エネルギーは、炭化水素の化学エネルギー由来のものです。

この熱エネルギーには、様々な活用方法があります。火力発電所では、熱エネルギーによって水を加熱し、その蒸気でタービンを回転させて電気を得ますよね。自動車では、ガソリンを燃焼させることでエンジンを駆動させて、タイヤに動力を伝えます。家庭にあるガスコンロは、燃焼時に発生する熱で料理をあたためているのです。

そして、近年は燃料が持つ化学エネルギーを効率よく他のエネルギーに変化させることができるような技術の研究がなされていますよ

食物の消化

image by iStockphoto

続いては、自然界で見られる現象にも、有機物の燃焼反応があることを紹介していきますね。多くの生き物は、食物を摂取し、それを身体の中で分解することで生命の維持に必要なエネルギーを得ています。そして、呼吸によって酸素を身体に取り入れて、二酸化炭素をはき出していますよね。

食物には、炭水化物が含まれています。炭水化物は、名前の通り、炭素と水(水素原子と酸素原子の化合物)からなる物質です。つまり、食物に含まれる有機物と呼吸によって取り入れた酸素を反応させて、熱エネルギーを得ているのですね生成された二酸化炭素は、呼吸によって体外に放出されますよ

ただし、体内で行われている燃焼反応は、燃料などの燃焼反応とはメカニズムが少し異なります体内での反応では、熱エネルギーは一度にすべて放出されるのではなく、必要に応じて少しずつ取り出されるのです

\次のページで「有機物の燃焼に関連する話題」を解説!/

有機物の燃焼に関連する話題

最後に、有機物の燃焼に関連する話題を紹介します。私たちが日常的に使用している電気や都市ガスのもとになっている物質は、いずれも有機物です。そして、このような有機物を燃焼させることで、電気エネルギーや熱エネルギーを取り出しています。

これらのエネルギーは、私たちが現代的な生活を送るうえで、必要不可欠なものです。つまり、燃料となる有機物が存在するので、私たちは豊かな生活をすることができるのですね。ですが、燃料を燃やすことには、負の側面もあります。以下では、その負の側面を簡単に説明しますね。

地球温暖化

image by iStockphoto

有機物である石炭、石油、天然ガスを燃やすと、二酸化炭素と水が生成されます。二酸化炭素は、温室効果ガスの1つとして知られていますよね温室効果ガスは地球温暖化を引き起こすという説があり、その説の信憑性は高いとされています

地球温暖化が進むと、気候変動、生態系の破壊などが深刻化して、人類にも大きな影響を与えると考えられていますよ。そのため、温室効果ガスである二酸化炭素の排出を抑制するための技術開発が進んでいます。

有機物の燃焼について学ぶ意義

有機物の燃焼というテーマは、化学だけでなく、生化学・生態学・材料工学・環境工学といった様々な学問との結びつきをもっています。そして、地球温暖化といった世界レベルでの問題との関連もありますよね。有機物の燃焼について知れば知るほど、奥の深いテーマであることがわかります。

ニュースなどで話題になる最新のサイエンスの話題も、有機物の燃焼に関連するものであることが多いのです。ぜひこの機会に、有機物の燃焼についての理解を深めてみてください。

" /> 3分で簡単「有機物の燃焼」具体例を交えて理系学生ライターが徹底わかりやすく解説! – Study-Z
化学地学地球大気・海洋有機化合物理科環境と生物の反応生活と物質生物

3分で簡単「有機物の燃焼」具体例を交えて理系学生ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は「有機物の燃焼」について解説していきます。

有機物の燃焼は、メカニズム等を化学の視点で説明することができる。ですが、有機物の燃焼というテーマは化学以外の様々な学問にも深い関係をもっている。そして、近年頻繁に議論されるようになった地球温暖化問題にも、有機物の燃焼との関連性があるそうです。ぜひこの機会に、有機物の燃焼についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

有機物の燃焼について学ぼう!

image by iStockphoto

今回の記事のテーマは有機物の燃焼です。このテーマは、化学のみに関係があるように思われますよね。ですが、有機物の燃焼反応について考察しなければいけない場面は、化学分野以外であっても非常に多いのです

生物の代謝地球の炭素循環ペットボトルなどのプラスチックの処分方法といったことを考える際には、有機物の燃焼反応の知識が必要になります。また、有機物の燃焼反応はエネルギー問題や環境問題とも密接な関係がありますよ

この記事では、有機物の燃焼について化学的な視点でメカニズムを解説するだけでなく、関連する学問についても簡単に紹介していきますね。それでは、はじめに、有機物の燃焼のメカニズムを説明していきます。

有機物とは?

有機物の燃焼について考える前に、有機物の正体について考えてみましょう。有機物の定義はやや曖昧ですが、19世紀ごろまでは、動植物といった生物から得られる物質とされていました。そして、当時は、有機物は生物の組織内でのみ生成されると考えられていたのです

しかしながら、後になって、無機物から有機物を人工的に製造できることが確認されました。これによって、以上の定義は使用されなくなったのです。現在は、炭素を含む化合物のことを有機化合物に分類しています

ですが、二酸化炭素一酸化炭素炭酸塩などの物質は、無機化合物に分類されるというのが一般的です。これらは、構造が単純であることが共通点となっていますよ。

有機物の燃焼

有機物の燃焼

image by Study-Z編集部

有機物の多くは、可燃性があり、完全燃焼によって二酸化炭素が発生します。また、多くの有機物は水素原子も含んでいるので、燃焼時には水が生成されますよ。これだけの説明ではわかりにくいかと思いますので、具体例を挙げて説明しますね。

例として、メタノール(CH3OH)の燃焼反応を考えてみましょう。メタノールに火をつけると、2CH3OH+3O2→2CO2+4H2Oという反応が生じます。メタノールが、大気中から供給される気体の酸素と反応し、二酸化炭素と水が生成されていますよね

そして、燃焼の結果として生じる二酸化炭素と水の量は、元素分析の際に重要な情報となります。元素分析とは、化合物中に含まれている元素の比率を決定したり、化合物の構造を予測したりするような作業のことを意味しますよ。

\次のページで「有機物の燃焼反応の例」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: