今回は「ライデンフロスト効果」について勉強していこう。

普段の生活では見慣れないし名前を聞いただけじゃどんな現象か想像もつかないが、自分自身テレビなどで1度は見たことあると思う現象なんです。

この記事では一体どんな効果なのか、どんな時に起こるのか身の回りに起きている現象を使って理系出身の化学が得意なライターのYamakoshiと一緒に解説していきます。

ライター/Yamakoshi

理系出身の元塾講師。生徒の「どうして」「なぜ」に真摯に向き合い、「わかりやすく」「面白く」をモットーに生徒の指導に取り組んだ。

1.ライデンフロスト効果とは

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ライデンフロスト効果とは熱した物体の上に少量の水滴を垂らすと、まるで浮遊しているように見える科学現象のことです。

本来、液体は熱されると蒸発し気体となるのが物質の三態というものですが、液体の量が少量で熱した物体が超高温の場合、液体の下面だけ蒸発をし蒸気が立ち上ろうとする浮力と、重力により力がつり合い浮いているように見えます。この結果、物体との接触面がなくなり水滴は横滑りを起こしたり熱された物体上を跳ね回るなどの動きを見せるこの現象がライデンフロスト効果です。

ライデンフロスト効果は18世紀にオランダで初観測され、その後ドイツの医師ライデンフロストが発表した論文により、ライデンフロスト効果という名前がつけられています。ライデンフロスト効果に関連して物質の三態力のつり合いというキーワードも登場するので見ていきましょう。

1-1物質の三態とは

1-1物質の三態とは

image by Study-Z編集部

ライデンフロスト効果を理解する上で大切なのが物質の三態です。

物質の三態とは固体・液体・気体の3つを指し、水を例に出すと氷となっている状態を固体水の状態を液体水蒸気の状態を気体としこれらは熱したり冷やしたりすることによって各状態に変化させることができます。それぞれの変化にも名前が付いているので上の図で参考にしてください。

ライデンフロスト効果の理解に必要な状態変化は液体から気体に変化する蒸発の部分です。蒸発するために必要な温度を沸点と呼び、何度で沸騰を始めるかは物質によって様々で、ライデンフロスト効果では垂らす液体の沸点よりも物体の温度が極めて高い時、この現象が起きます。

1-2力のつり合い

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力のつり合いとは複数の力が物体に作用している時、物体が動かない様子を言います。この状態以外でも力がつり合っている場合もあり、この力のつり合いを利用したのがライデンフロスト効果です。今回は熱された鉄板の上に少量の水滴を垂らした場合で考えてみましょう。鉄板と水滴の下面では蒸発が起き水蒸気が発生し、これにより水滴は下から水蒸気によって持ち上げられる力、つまり浮力が生じます。

もう1つは水滴の垂直方向下向きにはたらいている重力という力です。お互いの向きが逆力の大きさが等しい場合2つの力はつり合っているといえ、物体は静止しているように見えます。とはいえ、摩擦の低減から横滑り跳ね回る動きをするなど完璧なつり合いではなくバランスを崩しながら動いているのがライデンフロスト効果の特徴です。

2.ライデンフロスト温度とは

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ライデンフロスト効果についてどんな時に見られるか、なぜこのような現象が起きるかについては紹介していきました。

しかしライデンフロスト効果が起きる条件として垂らす液体の沸点よりも物体の温度が極めて高い時と紹介しましたが具体的にどのくらいでライデンフロスト効果が発生するのか見ていきましょう。出典によって様々な定義がありますが、大きく分けるとライデンフロスト効果が最高となる温度始まる温度の2つがあります。

2-1最高となるライデンフロスト温度

ライデンフロスト効果には物体の温度変化に対する液体の蒸発時間に最高点が存在します。水を例にして考えてみましょう。

物体の温度が摂氏90度から140度付近までは温度が上がるにつれ蒸発の速度も早くなり、それ以降の300度前後は温度が高くなるにつれ遅くなっていく、300度を超えると再び蒸発の速度も上がっていくことから300度付近が最高となるライデンフロスト温度と呼ばれます。

\次のページで「2-2始まるライデンフロスト温度」を解説!/

2-2始まるライデンフロスト温度

ライデンフロスト効果の始まりを予測するのは難しく、水滴の量を同じにしても物体の濡れ性と呼ばれる液体に対する濡れやすさなどの性質や、水滴自体にも水以外の不純物が含まれていることによってライデンフロスト効果が始まる温度というのは大きく変わってきてしまいます

このように複雑な中、大まかな見積もりではありますが水滴を鉄板に落とした時のライデンフロスト効果が始まる温度は約160度です。

3.ライデンフロスト効果を使った身の回りの現象

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最後に身の回りで使われているライデンフロスト効果を紹介していきます。

身近にあるものでできるものや危険な実験までありますが、実際にやったりするのは危ないのでやめましょう。

3-1熱したフライパンに水滴やビール

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まずはじめに定番中の定番、熱したフライパンに水滴を垂らすと水滴がフライパンの上をコロコロと転がっていくような動きをします。

これはまさにフライパンの表面温度が水である水滴の沸点よりも超高温なため、水滴の下面に水蒸気が発生し水滴を持ち上げ重力とつり合いが起きているため、フライパンの上を浮いたり滑ったりしているように見える現象です。フライパン表面の温度は200度から300度がライデンフロスト効果が起きる目安なので高温に注意となります。

また水分の中ではビールの発砲が水よりも低温でライデンフロスト効果が見られたり、白い玉が転がっているように見えるので確認がしやすいです。

\次のページで「3-2ドライアイスを使用したライデンフロストエンジン」を解説!/

3-2ドライアイスを使用したライデンフロストエンジン

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ライデンフロスト効果は火星でのエネルギー活動にも使えるかもしれないと言われています。

ライデンフロスト効果では熱した物体の上に水滴を垂らすことによって現象が見られると紹介してきましたが、同じことがドライアイスでも起きるということがわかりました。そしてこのドライアイスによって起きるライデンフロスト効果をエンジンのエネルギーにしようと試みています。

地球にはそう多くドライアイスは存在しませんが火星では自然生成されることがあり廃棄物としてではなくエネルギー資源として使えるようになるといことはとても大きな発見なのではないでしょうか。

3-3ライデンフロスト効果を使った危険な実験

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ライデンフロスト効果を使った実験の中には危険な実験もあります。とても危ないので絶対に真似をしないようにしましょう。

超低温マイナス195度の液体窒素の中に手を入れていくという実験です。普通であれば凍傷を起こすほどの超低温ですがまさかのここでもライデンフロスト効果により液体であった窒素が手の熱によって気体に変わり手と液体窒素の間に保護膜のようなものが作られ一瞬ではありますが冷たさすら感じないというような状況になります。

これは窒素の沸点がマイナス195.8度と非常に低く手の温度で蒸発したために起こった現象です。

ライデンフロスト効果の実験には注意!

ライデンフロスト効果で大事なポイントは物体の温度と沸点になります。沸点は水が100度、窒素がマイナス195度など物質によって様々で、浮かせたい対象の沸点をしっかり把握し、それを超える温度で受け止めることによりライデンフロスト効果が発生するという仕組みです。

なので物質によっては超高温、超低温のものが必要になってきてしまうためライデンフロスト効果を使った実験には危険が伴います。知識もなく真似してしまうのは危ないのでやめましょう。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単「ライデンフロスト効果」身の回りの現象を元塾講師がわかりやすく解説!

今回は「ライデンフロスト効果」について勉強していこう。

普段の生活では見慣れないし名前を聞いただけじゃどんな現象か想像もつかないが、自分自身テレビなどで1度は見たことあると思う現象なんです。

この記事では一体どんな効果なのか、どんな時に起こるのか身の回りに起きている現象を使って理系出身の化学が得意なライターのYamakoshiと一緒に解説していきます。

ライター/Yamakoshi

理系出身の元塾講師。生徒の「どうして」「なぜ」に真摯に向き合い、「わかりやすく」「面白く」をモットーに生徒の指導に取り組んだ。

1.ライデンフロスト効果とは

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ライデンフロスト効果とは熱した物体の上に少量の水滴を垂らすと、まるで浮遊しているように見える科学現象のことです。

本来、液体は熱されると蒸発し気体となるのが物質の三態というものですが、液体の量が少量で熱した物体が超高温の場合、液体の下面だけ蒸発をし蒸気が立ち上ろうとする浮力と、重力により力がつり合い浮いているように見えます。この結果、物体との接触面がなくなり水滴は横滑りを起こしたり熱された物体上を跳ね回るなどの動きを見せるこの現象がライデンフロスト効果です。

ライデンフロスト効果は18世紀にオランダで初観測され、その後ドイツの医師ライデンフロストが発表した論文により、ライデンフロスト効果という名前がつけられています。ライデンフロスト効果に関連して物質の三態力のつり合いというキーワードも登場するので見ていきましょう。

1-1物質の三態とは

1-1物質の三態とは

image by Study-Z編集部

ライデンフロスト効果を理解する上で大切なのが物質の三態です。

物質の三態とは固体・液体・気体の3つを指し、水を例に出すと氷となっている状態を固体水の状態を液体水蒸気の状態を気体としこれらは熱したり冷やしたりすることによって各状態に変化させることができます。それぞれの変化にも名前が付いているので上の図で参考にしてください。

ライデンフロスト効果の理解に必要な状態変化は液体から気体に変化する蒸発の部分です。蒸発するために必要な温度を沸点と呼び、何度で沸騰を始めるかは物質によって様々で、ライデンフロスト効果では垂らす液体の沸点よりも物体の温度が極めて高い時、この現象が起きます。

1-2力のつり合い

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力のつり合いとは複数の力が物体に作用している時、物体が動かない様子を言います。この状態以外でも力がつり合っている場合もあり、この力のつり合いを利用したのがライデンフロスト効果です。今回は熱された鉄板の上に少量の水滴を垂らした場合で考えてみましょう。鉄板と水滴の下面では蒸発が起き水蒸気が発生し、これにより水滴は下から水蒸気によって持ち上げられる力、つまり浮力が生じます。

もう1つは水滴の垂直方向下向きにはたらいている重力という力です。お互いの向きが逆力の大きさが等しい場合2つの力はつり合っているといえ、物体は静止しているように見えます。とはいえ、摩擦の低減から横滑り跳ね回る動きをするなど完璧なつり合いではなくバランスを崩しながら動いているのがライデンフロスト効果の特徴です。

2.ライデンフロスト温度とは

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ライデンフロスト効果についてどんな時に見られるか、なぜこのような現象が起きるかについては紹介していきました。

しかしライデンフロスト効果が起きる条件として垂らす液体の沸点よりも物体の温度が極めて高い時と紹介しましたが具体的にどのくらいでライデンフロスト効果が発生するのか見ていきましょう。出典によって様々な定義がありますが、大きく分けるとライデンフロスト効果が最高となる温度始まる温度の2つがあります。

2-1最高となるライデンフロスト温度

ライデンフロスト効果には物体の温度変化に対する液体の蒸発時間に最高点が存在します。水を例にして考えてみましょう。

物体の温度が摂氏90度から140度付近までは温度が上がるにつれ蒸発の速度も早くなり、それ以降の300度前後は温度が高くなるにつれ遅くなっていく、300度を超えると再び蒸発の速度も上がっていくことから300度付近が最高となるライデンフロスト温度と呼ばれます。

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