
戻し交配という言葉自体は聞き慣れないかもしれないが、身近な例を挙げながら生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。
ライター/オリビン
大学院を卒業した後は医学部の研究室で実験助手をしている。マウスの交配や細胞培養に関連したことは熟知している。
戻し交配とは

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戻し交配(戻し交雑)とは、その名の通り世代を戻って交配するという意味です。もう少し詳しく解説すると、交雑によって作られた雑種第一代(F1)に最初の親(F0)を交雑させることを言います。これは、ある個体の性質を他の個体に持たせたいときに用いられる交配方法です。基本的には戻し交配によって優良な遺伝子を残し、育種していきます。では実際の戻し交配の用語について、例を見ながら説明しますね。
戻し交配に使う系統

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戻し交配で残したい特性は優性形質でも劣勢形質でもどちらでも大丈夫です。もし優性遺伝の形質を残したいのであれば、子の表現型を確認するだけでどの個体がその遺伝子を受け継いだかを簡単に確認できます。劣性形質の場合はホモ接合体でないとどの個体に遺伝子が引き継がれたのかがわからないため、遺伝子解析を行う必要があるので注意しましょう。
戻し交配は必ずしも同じ生物種で行う必要はありません。例えば、植物では野生種がもっている病気への抵抗性を、すでに改良が進んでいる野菜などに挿入することもあるのです。
戻し交配のメリット
戻し交配のメリットは、戻し交配に使用する最初の親(F0)に限りなく近い個体を作成することができる点です。例えば、最初の親(F0)にブラックスポットという特徴があったとします。しかしこのブラックスポットの個体と他の個体を交雑したときに得られる子は、元々親が持っていたブラックスポットという特徴の他に交雑に使った相手の特徴も加わっているわけです。ブラックスポットという特徴だけをもった個体を作りたい場合、先程得られた子(F1)に繰り返しブラックスポットの親(F0)を掛け合わせることで、限りなくブラックスポットの親(F0)に近い子を得ることができます。これは氷河期に滅んだナウマンゾウを復元するために使用されている方法でもあるんですよ。
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