この記事では「割に合う」について解説する。

端的に言えば割に合うの意味は「もうけがあること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「割に合う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/イオリ

日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。

「割に合う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「割に合う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「割に合う」の意味は?

「割に合う」には、次のような意味があります。

商売してもうけがある。ほねをおって、それだけのかいがある。間尺 (ましゃく) に合う。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「割に合う」

「割に合う」「割に合わない」など、否定形も含め日常的にかなりよく使われる言葉なのではないでしょうか。「わりにあう」と読み、「もうけがある、それだけのかいがある」という意味を表します。たとえば「割に合う仕事」と言うと、仕事量や仕事内容の大変さに見合った分の給料や待遇がある仕事だという意味になりますね。

反対に「割に合わない仕事」と言うと仕事量に対して給料が低かったり待遇面がよくなかったりする仕事が表されますが、実際に日常生活の中ではこちらの「割に合わない」の方が多く使われがちではあります。正しい使い方をマスターするために、ここで確認していきましょう。

「割に合う」の語源は?

次に「割に合う」の語源を確認しておきましょう。

「わりにあう」と読むこの言葉ですが、語源を辿るには頭にある「割」がキーワードとなってきます。この「割」はある数量と他の数量の関係、比較、つり合いを表す言葉で、数学で言う「割合の計算」などの「割合」と同じだと考えるとわかりやすいですね。つまり商売や苦労、骨を折って何かしらをするその内容と、それに対する報酬や見返りとのつり合いが取れていることを「割に合う」という言葉で表しているのです。

\次のページで「「割に合う」の使い方・例文」を解説!/

「割に合う」の使い方・例文

「割に合う」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.大学近くのきれいなお店でアルバイトを始めて、忙しいが時給が高く割に合う業務だと感じている。
2.興味のある会社に就職できたものの、本当のところは実質無料で働かされる時間が長めで、割に合わない仕事だった。
3.頼まれて言語研究会のサイトチェックの手伝いをしていたが、作業をした分お礼ももらえて割に合う仕事だった。

1の例文はアルバイトの業務内容が割に合っている、と言った内容の文章です。忙しいという大変さがあるけれどその分それに見合っただけの時給をもらっているため、割に合うと言えるのですね。このようにかなり大変だが給料が高いという形の仕事にも、あまり大変ではないが給料も低いという形の仕事にも、「割に合う」という言葉はぴったりあてがうことができます。反対に仕事が大変なのに給料が安いといった場合や仕事は楽なのに給料が高いといった場合には得をしている・していないにかかわらず「割に合う」という言葉は適さないため、気を付けておきましょう。

2の例文は「割に合わない」という否定の形を使用した例文です。前述の通り、日常ではこちらの否定形で使われることの方が多い慣用句であるとも言えるでしょう。内容が多かったり難しかったりして大変なのに給料が安い…といったような状況は、仕事を始めアルバイトなどでも体験したことがある人も多いのではないでしょうか。基本的に「割に合わない仕事」と言うと大変なのに給料や待遇が良くない仕事という意味で使われることが多いため、こちらの意味を押さえておくと便利ですよ。

3の例文は手伝いをしてお礼をもらえたという内容の文章です。実際に就職して労働しているという形ではありませんが、このような場合にも少し比喩的なニュアンスで「割に合う仕事」などと言うことができます

全体を通して見ると、主に仕事について使われる慣用句だということがわかるでしょうか。これは仕事というものがそもそも働いた内容について対価を支払うといった形態のものであるため、割合を表す言葉を使った「割に合う」という慣用句と結びつきやすいからだと言えるでしょう。

「割に合う」の類義語は?違いは?

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では次に「割に合う」の類義語を確認しておきましょう。意味は「もうけがある、それだけのかいがある」でしたね。

「利益にかなう」

ここでの「かなう」は漢字で表すと「適う」であり、「条件・基準などによく当てはまること」を指す単語です。つまり全体で「利益に良く当てはまること」という意味になりますね。利益という単語が使われている分、「割に合う」よりも意味がわかりやすい慣用句と言えるかもしれません。利益とそれに対する行動がぴったりと適合しあっているという点で、「割に合う」との類義関係が見つけられそうです。

一方で、こちらは利益があることが前提だという点が「割に合う」との相違点だと言えるでしょう。「割に合う」は内容の大変さとそれの対価や利益が合致していればそれらが共に低くても割に合っている状態だと言えるため、この違いにはよく気を付けておきましょう。

\次のページで「「割に合う」の対義語は?」を解説!/

「割に合う」の対義語は?

類義語を確認したところで、次は「割に合う」の対義語を見ていきましょう。

「割を食う」

同じ「割」という言葉を使用した単語ですが、こちらは「自分が損をする」という意味をもった慣用句です。「食う」というのは他から何かしらの影響を受けることを意味する語で、「攻撃を食らう」などと同じ意味だと考えるとわかりやすいですね。

注意しておきたいのは、「割を食う」は「自分が損をする」のであって「均衡がとれていない」という意味ではないという点です。「割に合う」の対義語という点から関連付けて間違えてしまいそうになりますが、仕事が楽なのに対価が大きく自分が得をしている場面では「割を食う」とは言わないため、注意しておきましょう。

「割に合う」の英訳は?

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では最後に「割に合う」の英訳を見ていきましょう。

「remunerative」「pay」

「remunerative」「報酬のある」「引き合う」「有利な」といった意味がある英単語です。利益がきちんと用意されているという点で、日本語で言う「割に合う」と同じような使い方をすることができます。これはどちらかというと商売や仕事の対価がきちんと用意されているといったニュアンスがあり、より広い意味で苦労の対価があることを表現したいときは「pay」を使用すると、報われること、割に合うことを言いあらわすことができますよ。

「割に合う」を使いこなそう

この記事では「割に合う」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「もうけがある、それだけのかいがある」という意味を持ち、主に仕事の場面で使われる慣用句であるということがわかりましたね。「割が合わない」という否定の形で「給料が低すぎる」や「労働内容が簡単すぎる」というようなマイナスの意味を表すことが多いということもポイントです。報酬が高い仕事は魅力的ですが、やはりそれだけ内容が大変だということもあります。適度に自分に合っていて、なおかつ割の合う仕事を選んでいきたいですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「割に合う」の意味や使い方は?例文や類語を日本語オタクライターがわかりやすく解説!

この記事では「割に合う」について解説する。

端的に言えば割に合うの意味は「もうけがあること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本語学を中心とし、文学・語学を専門的に学んでいるライターのイオリを呼んです。一緒に「割に合う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/イオリ

日本語学を専門に学び、趣味は読書と小説執筆という日本語漬けの毎日を送るライター。日本語オタクとして言葉の意味や内容、その面白さを丁寧に解説していく。

「割に合う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「割に合う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「割に合う」の意味は?

「割に合う」には、次のような意味があります。

商売してもうけがある。ほねをおって、それだけのかいがある。間尺 (ましゃく) に合う。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「割に合う」

「割に合う」「割に合わない」など、否定形も含め日常的にかなりよく使われる言葉なのではないでしょうか。「わりにあう」と読み、「もうけがある、それだけのかいがある」という意味を表します。たとえば「割に合う仕事」と言うと、仕事量や仕事内容の大変さに見合った分の給料や待遇がある仕事だという意味になりますね。

反対に「割に合わない仕事」と言うと仕事量に対して給料が低かったり待遇面がよくなかったりする仕事が表されますが、実際に日常生活の中ではこちらの「割に合わない」の方が多く使われがちではあります。正しい使い方をマスターするために、ここで確認していきましょう。

「割に合う」の語源は?

次に「割に合う」の語源を確認しておきましょう。

「わりにあう」と読むこの言葉ですが、語源を辿るには頭にある「割」がキーワードとなってきます。この「割」はある数量と他の数量の関係、比較、つり合いを表す言葉で、数学で言う「割合の計算」などの「割合」と同じだと考えるとわかりやすいですね。つまり商売や苦労、骨を折って何かしらをするその内容と、それに対する報酬や見返りとのつり合いが取れていることを「割に合う」という言葉で表しているのです。

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