今回は「気体法則の歴史」について解説していきます。

1662年にボイルの法則が発見され、それ以降気体法則は様々な進化を遂げてきた。そして、進化の過程で、新たな法則を数々と生み出してきたぞ。そのため、気体法則の歴史を体系的学ぶことで、複数の法則を一度に学ぶことができる。ぜひこの機会に、気体法則の歴史についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

気体法則とは?

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本題である気体法則の歴史について学ぶ前に、そもそも気体法則とはどのようなものであるのかを理解しておきましょう。ここでは、気体の状態を決定づける要素気体法則の存在意義といったことについて説明しますね。これらは、物理化学の基本的な知識でもあります。

多くの用語や単位が登場するので、それらの中には見慣れないものもあるかもしれません。ですが、以下で登場する用語や単位は、いずれも重要なものです。確実に、ひとつひとつの内容を理解することを心掛けてくださいね。それでは早速、解説を進めていきます。

気体の状態を決定づける要素

まずは、気体の状態を決定づける要素をいくつか確認しておきましょう。このような要素の中でも、温度圧力体積は特に重要な値です。その他にも、気体分子の物質量気体の質量も重要な要素だと言えますよ。

温度の単位として頻繁に使われるものにはK(ケルビン)があります。℃はセルシウス温度(セ氏、摂氏)、Kは絶対温度を表していますよ。セルシウス温度に273を足すと絶対温度になります。また、圧力の単位にはPa(パスカル)mmHg(ミリメートル水銀柱)体積の単位にはLm3が使われますよね。

そして、気体分子の物質量にはmol(モル)気体の質量にはgが使用されることが多いです。これらの内容は、気体法則を理解する上で必ず必要になる知識となります。各要素の意味や定義を整理しておくと良いですよ。

気体法則の存在意義

気体法則には、先ほど説明した気体の状態を決定づける複数の要素を結び付ける役割があります。つまり、気体法則は気体の状態を決定づける要素の相互関係を表すものなのです。そして、気体法則の多くは、数式を用いて表現されます。

それゆえ、気体法則を用いることで、既知の要素から未知の要素を知ることができますよ。例えば、ある気体集団の占める体積と温度を知ることができれば、圧力の値を間接的に求めることができます。この点は、気体法則がもつ最大の強みです。

\次のページで「気体法則の歴史を学ぼう!」を解説!/

気体法則の歴史を学ぼう!

ここからは、この記事の本題である気体法則の歴史についての解説を進めていきます。気体法則の理論がどのように進化してきたのかについて考えましょう。

進化の過程で、気体法則がどのように便利になったか、どのように高度になったかという点に注目してみてくださいね

ボイルの法則

ボイルの法則

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気体法則の中で最も古いものは、ボイルの法則です。ボイルの法則は、1662年にイギリスの学者であるボイルによって発見されました。ボイルの法則は、等温条件下における圧力と体積の関係を表していますよ

ボイルの法則を数式で表現すると、PV=(一定)となります。ここで、Pは圧力Vは体積を表していますよ。言い換えれば、圧力Pと体積Vは反比例するということになります。気体の圧縮等により体積が小さくなると、圧力は上昇するのですね。

ボイルの法則が成立することを実感できる身近な例についても紹介しましょう。皆さんは飛行機にポテトチップスの袋を持ち込んだことがありますか?飛行機が離陸し、空高くを飛んでいる間、ポテトチップスの袋は膨張します。これは、地上よりも空の上の大気圧が小さいからですよ。圧力が小さくなると、体積は反比例し、大きくなるのです。

シャルルの法則

シャルルの法則

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続いて紹介する気体法則はシャルルの法則です。シャルルの法則は、ボイルの法則の次に発見されました。この法則は、1787年にフランスの学者であるシャルルによって発見されています。シャルルの法則は、等圧条件下における体積と温度の関係を表していますよ

シャルルの法則は、V/T=(一定)という数式で表現できます。ここで、Vは体積Tは絶対温度を表していますよ。この式から、等圧条件下では、気体の体積と温度は比例関係にあることがわかります。気体が加熱されると、体積が大きくなるのですね。

\次のページで「ボイル・シャルルの法則」を解説!/

ボイル・シャルルの法則

ボイル・シャルルの法則

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ボイル・シャルルの法則は、ボイルの法則とシャルルの法則を統合させて誕生した法則です。ボイルの法則PV=(一定)とシャルルの法則V/T=(一定)を統合すると、(PV)/T=(一定)となります。これが、ボイル・シャルルの法則です。

さらに、ボイル・シャルルの法則は、等温条件および等圧条件を満たしていない場合にも使用することができます。これによって、気体に関する計算の自由度は格段に向上しますよね。また、ボイル・シャルルの法則は比例定数kを用いて、PV=kTと表現することもできます。この式は、(PV)/T=(一定)の両辺にTを掛け算するという式変形によって、導出されますよ。

理想気体の状態方程式

理想気体の状態方程式

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ボイル・シャルルの法則が考案された後に、比例定数kにも規則性を見出すことが試みられるようになりました。ここの比例定数kとは、PV=kTの式内にあるものです。そして、研究の結果、比例定数kは、気体の物質量nに比例することがわかりました。ここで、新たにRという比例定数を設定すると、ボイル・シャルルの法則はPV=nRTと書き換えられます。

このPV=nRTという式が理想気体の状態方程式です。また、新たな比例定数Rのことを気体定数と呼びますよ。この式によって、気体法則は完全な形になったように思われます。しかしながら、ここまで紹介した法則はいずれも理想気体に対して成り立つ式です。

理想気体とは、気体分子が体積を持たず、相互に力が作用しない仮想的な気体のことをさします。ただ、常温付近では、実際に存在する空気を理想気体として計算を行った場合も誤差はほとんどないことが知られていますよ

実在気体の状態方程式(ファンデルワールスの状態方程式)

実在気体の状態方程式(ファンデルワールスの状態方程式)

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理想気体の方程式が考案されたあと、実在気体にも適応可能な状態方程式をつくることが進められました理想気体の状態方程式では、高温領域などでの誤差が非常に大きくなってしまうからです

実在気体の状態方程式では、これまで使ってきた要素に加えて、さらに2つの要素が加えられました。それは、分子間力の大きさ気体分子自身の体積です。これによって、状態方程式の最終的な姿は(P+(n2a)/V2)×(V-nb)=nRTとなります。

aは分子間力の大きさに関する定数bは気体分子自身の体積に関する定数です。aとbをまとめて、ファンデルワールスの定数と言います。ファンデルワールスの定数は、各分子に固有の値を取りますよ。このような工夫によって、気体法則の精度は格段に向上しました。気体法則は、以上のような進化の歴史を経て、精度や実用性が向上してきたのです

\次のページで「気体法則の歴史について学ぶ意義」を解説!/

気体法則の歴史について学ぶ意義

今回紹介したように、気体法則にはボイル・シャルルの法則や状態方程式をはじめとして、数多くの種類があります。そして、これらの法則は、互いに深いつながりを持っているのです。当然のことながら、このようなことを意識して学習をすると、知識の定着もより確実なものになります。

気体法則を歴史になぞらえて学習するという方法は、以上のような理由から、非常に効果的なものであると言えますよ。ぜひこの機会に、気体法則の歴史について、詳しく学んでみてくださいね。

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化学熱力学物理物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単気体法則の歴史!法則の進化過程を理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「気体法則の歴史」について解説していきます。

1662年にボイルの法則が発見され、それ以降気体法則は様々な進化を遂げてきた。そして、進化の過程で、新たな法則を数々と生み出してきたぞ。そのため、気体法則の歴史を体系的学ぶことで、複数の法則を一度に学ぶことができる。ぜひこの機会に、気体法則の歴史についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

気体法則とは?

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本題である気体法則の歴史について学ぶ前に、そもそも気体法則とはどのようなものであるのかを理解しておきましょう。ここでは、気体の状態を決定づける要素気体法則の存在意義といったことについて説明しますね。これらは、物理化学の基本的な知識でもあります。

多くの用語や単位が登場するので、それらの中には見慣れないものもあるかもしれません。ですが、以下で登場する用語や単位は、いずれも重要なものです。確実に、ひとつひとつの内容を理解することを心掛けてくださいね。それでは早速、解説を進めていきます。

気体の状態を決定づける要素

まずは、気体の状態を決定づける要素をいくつか確認しておきましょう。このような要素の中でも、温度圧力体積は特に重要な値です。その他にも、気体分子の物質量気体の質量も重要な要素だと言えますよ。

温度の単位として頻繁に使われるものにはK(ケルビン)があります。℃はセルシウス温度(セ氏、摂氏)、Kは絶対温度を表していますよ。セルシウス温度に273を足すと絶対温度になります。また、圧力の単位にはPa(パスカル)mmHg(ミリメートル水銀柱)体積の単位にはLm3が使われますよね。

そして、気体分子の物質量にはmol(モル)気体の質量にはgが使用されることが多いです。これらの内容は、気体法則を理解する上で必ず必要になる知識となります。各要素の意味や定義を整理しておくと良いですよ。

気体法則の存在意義

気体法則には、先ほど説明した気体の状態を決定づける複数の要素を結び付ける役割があります。つまり、気体法則は気体の状態を決定づける要素の相互関係を表すものなのです。そして、気体法則の多くは、数式を用いて表現されます。

それゆえ、気体法則を用いることで、既知の要素から未知の要素を知ることができますよ。例えば、ある気体集団の占める体積と温度を知ることができれば、圧力の値を間接的に求めることができます。この点は、気体法則がもつ最大の強みです。

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