3分で簡単にわかる融解塩電解!従来の電気分解との違いは?理系学生ライターがわかりやすく解説
融解塩電解は、特殊な電気分解の方法のことであり、アルミニウムやナトリウムの製造などに利用される重要な技術の1つです。また、電気化学の基礎となることから、学問分野としても非常に重要です。今回は、融解塩電解のメカニズムと応用例を詳しく説明した。ぜひ、この機会に融解塩電解についての理解を深めてくれ。
化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。
ライター/通りすがりのペンギン船長
現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。
融解塩電解と従来の電気分解の違い
image by Study-Z編集部
融解塩電解は、化合物を分解する方法の1つです。融解塩電解では、電気の力を利用して化学物質の分解を行いますよ。このような言葉を聞くと、水溶液に電極を差し込み、電気を流すことで化合物を分解する「電気分解」を連想する方が多いかと思います。融解塩電解も、電気分解の一種ですが、少々変わった特徴を持っているのです。
この記事では、はじめに融解塩電解と従来の電気分解の違いを電気化学の視点で解説します。電気化学とは、物理化学における分野の1つです。そして、記事の後半では、実際に融解塩電解が用いられている工業技術の事例を複数紹介しますよ。
この分野の説明は抽象的なものになりがちですが、できる限り直感的で丁寧な解説をするように心がけました。また、聞きなれない単語や用語が登場することもあるかもしれませんが、そのような場合は必ずそれら意味を確認するようにしてくださいね。
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従来の電気分解
まずは、水溶液に溶かした物質を電気の力で分解する従来の電気分解について簡単に復習しておきましょう。電気分解では、水溶液に直流電源のプラス極に接続された陽極、マイナス極に接続された陰極を挿入します。これらの極には、非常に化学的安定度の高い炭素や白金が用いられますよ。
陽極と陰極を水溶液に挿入した状態で電気を流すと、水溶液中の陰イオンが陽極に、陽イオンが陰極に引き寄せられます。そして、引き寄せられたイオンは電子の授受を行い、分子や原子に変化しますよ。
例として、塩化銅水溶液を電気分解する実験を考えてみましょう。塩化銅水溶液中には、陰イオンの塩化物イオンと陽イオンの銅イオンが含まれています。電気分解を行うと、陽極では塩化物イオンが塩素分子に、陰極では銅イオンが単体の銅に変化しますよ。
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融解塩電解
先ほどの説明では、電気分解を用いることで、あらゆる化学物質を分解できるように思われます。しかしながら、実際はそのようなことはありません。水溶液中に含まれているイオンのイオン化傾向が大きすぎる場合は、電気分解では化合物を分解することは困難になるのです。
このような説明だけでは、理解しづらいかと思いますので、例を挙げて説明します。水酸化ナトリウムの電気分解を考えてみましょう。水酸化ナトリウム水溶液には、陽イオンのナトリウムイオンが含まれていますが、陰極にナトリウムの単体が生じることはありません。ナトリウムではなく、水分子に含まれる水素原子由来である水素の気体が発生するのです。
このような問題を解決するために、分解した物質を融解させる方法が考案されました。融解させた物質に、直接電極を挿入し、電気分解を行うのです。このような手法のことを、融解塩電解と呼びます。
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