不動態の性質を利用した身近な技術
ここまで、不動態についての基礎的な知識を確認してきました。不動態の特徴や性質についてある程度理解が深まったかと思います。以下では、不動態の性質を利用した身近な技術をいくつか紹介していきますね。
具体的な事例を知ることは、不動態についての本質的な理解をすることの助けになるはずです。先ほど学んだことを念頭に、記事を読み進めてみてください。また、具体例と理論を結び付けることも重要ですよ。
アルマイト処理
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不動態に関連する技術の1つに、アルマイト処理が挙げられますよ。アルマイト処理とは、陽極酸化処理によってアルミニウムの表面に厚い酸化被膜をつくる技術のことを指します。アルマイト処理を行ったアルミニウムは、耐腐食性や耐摩耗性が大幅に向上することが知られているのです。
アルマイト処理がなされたアルミニウムは、やかん、鍋などの調理器具に用いられています。また、アルマイト処理済みのアルミニウムは鉄道車両、航空機、自動車などの部品にも使用されていますよ。このように、アルマイト処理の技術は、今日の産業技術の中でも欠かせないものになっているのですね。
ステンレス
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Muyo – 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, リンクによる
ステンレスは、鉄にクロムを添加することによって作られる合金です。クロムは、非常に不動態になりやすいため、ステンレスの表面には酸化被膜が常に形成された状態になります。このような理由から、ステンレスは腐食に強い金属であると考えられていますよ。
写真に示したのは、車体がスレンレスでつくられた機関車ですよ。この機関車は、九州と本州を結ぶ関門トンネルを通過することに特化した車両なのです。関門トンネルは海の下を通るトンネルであり、トンネル内には海水が絶えず漏れ出ています。海水中に含まれる様々なイオンは、金属を腐食させる作用をもっていますよね。
ですが、ステンレスは表面に安定した酸化被膜が存在するので、容易には腐食しないのです。このような事情で、関門トンネル内を走行する機関車の車体には、ステンレスが採用されているのですね。
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