この記事では「犬も歩けば棒に当たる」について解説する。

端的に言えば犬も歩けば棒に当たるの意味は「思わぬ幸運に出会う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「犬も歩けば棒に当たる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で国語学を専攻していた。好きな「犬」の付くことわざや慣用句は、「犬を愛さない者は紳士であり得ない」(イギリス)と、「犬は吠えるがキャラバンは進む」(アラブ)。

「犬も歩けば棒に当たる」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「犬も歩けば棒に当たる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「犬も歩けば棒に当たる」の意味は?

「犬も歩けば棒に当たる」には、次のような意味があります。

1.何かをしようとすれば、何かと災難に遭うことも多いというたとえ。
2.出歩けば思わぬ幸運に出会うことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「犬(いぬ)も歩(ある)けば棒(ぼう)に当(あ)たる」

辞書にある通り、「犬も歩けば棒に当たる」(いぬもあるけばぼうにあたる)には2つの意味が存在します。遭遇するということは同じですが、遭遇したものが何であるかに注目しましょう。「災難に遭う」と「思いがけない幸運に出会う」という、正反対の意味があるのです。どちらかが正しくてどちらかが誤用ということではなく、両方の意味が辞書に掲載されています。

「犬も歩けば棒に当たる」の語源は?

次に「犬も歩けば棒に当たる」の語源を確認しておきましょう。

棒に当たる」とは、犬が歩いていたら道端に落ちていた棒にぶつかったと捉えがちです。しかし、実際はもっと残酷でした。犬がペットとして愛されている今とは違い、昔は犬を放し飼いにし、また野良犬も多くいました。そうなると、犬が仕事などの邪魔になることもあります。そんな時に人間は棒で犬を威嚇したり、時には叩いたりしたのです。犬が当たった棒とは、人間が振り回した棒でした。

このことからわかるように、「犬も歩けば棒に当たる」とは、本来は「災難に遭う」という意味です。しかし、「当たる」イコール幸運という語感もあってか、次第に「思いがけない幸運に出会う」という意味でも使用されるようになりました。今日では辞書にも掲載されるほど、意味として定着しています。

\次のページで「「犬も歩けば棒に当たる」の使い方・例文」を解説!/

「犬も歩けば棒に当たる」の使い方・例文

「犬も歩けば棒に当たる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.犬も歩けば棒に当たると言うし、今度こそは宝くじが当たるさ。
2.彼女は犬も歩けば棒に当たるの精神で毎週原宿に通いつめ、半年後に芸能事務所からスカウトされた。
3.海外旅行帰りで久々に日本で車を運転するので安全運転を心掛けていたが、ゆっくり走っていたからか後ろの車にあおり運転をされて、まさに犬も歩けば棒に当たる状況だった。

1と2は、「思いがけない幸運に出会った」という意味の「犬も歩けば棒に当たる」です。後からできた用法ですが、現代ではこちらの使われ方もよく見かけます。3が元々の意味である、「災難に遭った」場合として使われている「犬も歩けば棒に当たる」です。

こうしてみると、幸運と災難の「犬も歩けば棒に当たる」は、どちらも違和感なく受け入れられるのではないでしょうか。前後の文脈で判断しなければならないのは少々ややこしいですが、「犬も歩けば棒に当たる」が対照的な2つの意味で使われるのは面白いですよね。

「犬も歩けば棒に当たる」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

ところで、「犬も歩けば棒に当たる」の類義語とは何でしょうか。気になりますよね。

「棚から牡丹餅」

棚から牡丹餅」(たなからぼたもち)にも、「思いがけない幸運を得る」という意味があります。「犬も歩けば棒に当たる」との違いは、出歩くことで幸運を得た(犬も歩けば棒に当たる)のと労せずして幸運を得る(棚から牡丹餅)というように、幸運を得るまでに自ら動いたかどうかです。「棚から牡丹餅」には「災難に遭う」という意味はないことも付け加えなければいけません。

ところで、牡丹餅には御萩(おはぎ)などの異称がありますが、果たしてそれらに違いはあるのでしょうか。よく有名なテレビ番組などで紹介されている定番ネタですが、あらためて説明しましょう。どちらも同じ食べ物ですが、牡丹は春で萩は秋の植物となれば察しが付くでしょうか。あくまでも定義の上ですが、牡丹餅は春分の彼岸、御萩は秋分の彼岸にそれぞれお供えされるものです。

\次のページで「「犬も歩けば棒に当たる」の対義語は?」を解説!/

「犬も歩けば棒に当たる」の対義語は?

さらに、「犬も歩けば棒に当たる」の対義語も気になります。これも見ていきましょう。

「藪をつついて蛇を出す」

「犬も歩けば棒に当たる」は2つの意味を持つという少々ややこしい言葉です。ここでは、「思わぬ災難に遭う」という意味の方で対義語を説明していきます。

藪をつついて蛇を出す」(やぶをつついてへびをだす)とは、「余計なことをして危険を増やす、わざわざしなくていいことをして災難に遭う」という意味のある表現です。「藪蛇」(やぶへび)という略した形で覚えている人は多いのではないでしょうか。

前述した「棚から牡丹餅」も、「棚ぼた」という短縮形があります。それにしても、特に若者は言葉を略すのが好きですよね。タピオカドリンクを飲むことを「タピる」はまだいいとして、「了解」が「り」、「マジで?」が「ま」になっていると聞いたときは驚きました。何もそこまで短くすることはと文句を言いたくなりましたが、通信アプリなどで字数を削るためとなれば、その言語感覚も仕方ないかもしれませんよね。

「犬も歩けば棒に当たる」の英訳は?

image by iStockphoto

ついでに「犬も歩けば棒に当たる」の英訳も確認していきましょう。

「The dog that trots about finds a bone. 」「Every dog has his day.」

洋の東西を問わず、犬にまつわる言葉や慣用句はとても多いです。英語でも「dog」という単語が使われている言葉は多く、中には「犬も歩けば棒に当たる」という訳を当てがわれたものもあります。ここでは、そんな英文を見ていきましょう。

まず、「The dog that trots about finds a bone. 」は「歩き回る犬は骨を見つける」と訳されますが、「犬も歩けば棒に当たる」という和訳が付きます。「Every dog has his day.」も同様です。「どの犬にもその日がある」、つまり「誰にでもチャンスはある」という意味となります。この記事中で何度も「犬も歩けば棒に当たる」は2つの意味があると言いましたが、もちろん「思いがけない幸運に出会う」という意味の方だとすくに気付いたことでしょう。

「犬も歩けば棒に当たる」を使いこなそう

この記事では「犬も歩けば棒に当たる」の意味・使い方・類語などを説明しました。

人は日々の暮らしの中で、ふと「犬も歩けば棒に当たる」ような幸運に巡り会いたいものです。しかし、人生は何が起こるかは神のみぞ知ることですので、いつ「犬も歩けば棒に当たる」ような災難に遭うかわかりません。「犬も歩けば棒に当たる」という言葉の意味のように、幸運も不運も表裏一体と言えます。この言葉の使い方のように、常に目の前で起こることには臨機応変に対応できればいいですよね。

" /> 【慣用句】「犬も歩けば棒に当たる」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「犬も歩けば棒に当たる」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「犬も歩けば棒に当たる」について解説する。

端的に言えば犬も歩けば棒に当たるの意味は「思わぬ幸運に出会う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「犬も歩けば棒に当たる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で国語学を専攻していた。好きな「犬」の付くことわざや慣用句は、「犬を愛さない者は紳士であり得ない」(イギリス)と、「犬は吠えるがキャラバンは進む」(アラブ)。

「犬も歩けば棒に当たる」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「犬も歩けば棒に当たる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「犬も歩けば棒に当たる」の意味は?

「犬も歩けば棒に当たる」には、次のような意味があります。

1.何かをしようとすれば、何かと災難に遭うことも多いというたとえ。
2.出歩けば思わぬ幸運に出会うことのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「犬(いぬ)も歩(ある)けば棒(ぼう)に当(あ)たる」

辞書にある通り、「犬も歩けば棒に当たる」(いぬもあるけばぼうにあたる)には2つの意味が存在します。遭遇するということは同じですが、遭遇したものが何であるかに注目しましょう。「災難に遭う」と「思いがけない幸運に出会う」という、正反対の意味があるのです。どちらかが正しくてどちらかが誤用ということではなく、両方の意味が辞書に掲載されています。

「犬も歩けば棒に当たる」の語源は?

次に「犬も歩けば棒に当たる」の語源を確認しておきましょう。

棒に当たる」とは、犬が歩いていたら道端に落ちていた棒にぶつかったと捉えがちです。しかし、実際はもっと残酷でした。犬がペットとして愛されている今とは違い、昔は犬を放し飼いにし、また野良犬も多くいました。そうなると、犬が仕事などの邪魔になることもあります。そんな時に人間は棒で犬を威嚇したり、時には叩いたりしたのです。犬が当たった棒とは、人間が振り回した棒でした。

このことからわかるように、「犬も歩けば棒に当たる」とは、本来は「災難に遭う」という意味です。しかし、「当たる」イコール幸運という語感もあってか、次第に「思いがけない幸運に出会う」という意味でも使用されるようになりました。今日では辞書にも掲載されるほど、意味として定着しています。

\次のページで「「犬も歩けば棒に当たる」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: