
「他山の石」
「他山の石」(たざんのいし)とは、「他人の誤りや失敗は自分のためになる」という意味です。「対岸の火事」では他人の災難と自分は関係ないという顔をしますが、「他山の石」では他人の誤りを自らの戒めとするため「対岸の火事」とは対を成すと言えます。
「他山の石」という言葉は、古代中国ですでに存在していました。四書五経のひとつである『詩経』の中で記述されている故事が由来です。正式には「他山の石以(もっ)て玉を攻(おさ)むべし」と言います。このままでは意味がわかりませんので現代語に訳しましょう。「よそから出た粗悪な石でも、自分が持っている宝石(玉)を磨く(攻む)ためには役立つ」となります。つまり、悪いものでも自分のためにはなるということです。
「他山の石」には、言葉の由来からも分かるとおり、「誤ったことを自分の行いの参考にする」という意味があります。ところが、文化庁の調査によると、「他山の石」の意味を「良いことを自分の行いの参考にする」と答えた人が多くいました。「先輩の教えを他山の石として~」といった具合に使われがちですが、それでは先輩が教えてくれたことが悪いように受け取られかねず、かえって失礼です。
「no skin off my nose」
おもしろい表現がありますので紹介します。「no skin off my nose」は直訳すれば「私の鼻から皮がはがれない」となり、「問題ない、些細なこと」という意味がある言葉です。
一説にはボクシングが語源とされます。ボクシングでは、鼻の薄皮1枚はがれたところで何のダメージにもなりません。そんな取るに足りないことを「no skin off my nose」という言葉で表現しています。
「対岸の火事」の英訳には、他にも直訳と言える表現があるので見ていきましょう。「somebody else’s problem」は誰かの問題、つまり「他人事」ですし、「fire on the opposite shore」は「向こう岸の火事」そのものを訳したものです。
「対岸の火事」を使いこなそう
この記事では「対岸の火事」の意味・使い方・類語などを説明しました。
「対岸の火事」は、本来は自分とは無関係のことでした。しかし、現代では世の中の多くのモノがインターネットなどを介して自分と紐づけられ、あらゆる事を「対岸の火事」では済まされなくなりました。「対岸の火事」という言葉も、自分への教訓として使われるように変化しています。今や世界的なパンデミックやアメリカ大統領選挙は、「対岸の火事」ではないのです。