この記事では、「刹那」について解説する。

「刹那」という言葉は、曲名・小説・漫画アニメなどでよく見かける。短い時間を意味する言葉だとなんとなく理解している人が多いと思うが、具体的に何秒かを答えられるか?

今回は衝動買いや暴飲暴食など、目先の刹那的な欲望にあらがえないwebライターのぷーやんを呼んです。「刹那」の意味と使われ方について、説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。就職活動のときに受けた適性診断で「刹那的な快楽に溺れやすい」と言われた過去をもつ。

「刹那」の意味と使い方は?

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「刹那」は難しい漢字で書かれた、とっつきにくい言葉にみえます。しかし楽曲や漫画などでしばしば使われているので、「なんとなく知っている」という方も多いでしょう。
「刹那」の意味は、辞典では次のように書かれています。

1 仏語。時間の最小単位。1回指を弾く間に60あるいは65の刹那があるとされる。

2 きわめて短い時間。瞬間。「―の快楽に酔う」「衝突した―に気を失う」「―的な生き方」

出典:デジタル大辞泉(小学館) 「刹那」

「短い時間」という2の意味で理解されている方がほとんどだと思いますが、1にある通り「刹那」は実は仏教用語でもあります。

「刹那」は「一瞬」?何秒のこと?

非常に短い時間を意味する「刹那」。しかし短いとは言っても、具体的に何秒のことなのでしょうか?特に理系の方は気になるかもしれませんね。その答えは小乗仏教教理の集大成である「大毘婆沙論(だいびばしゃろん)」にあります。その記述から計算すると、「刹那」は75分の1秒です。少数にすると、0.013秒となります。

楽観の最果て?「刹那主義」

後先考えずに、一時の感情や現在の生活のみを満足させる生き方が、「刹那主義」です。近年「陽気なニヒリズム」という言葉が、「刹那主義」とほぼ同義語として普及しています。しかし「陽気なニヒリズム」は哲学者ニーチェの「能動的ニヒリズム」と同義で、「刹那主義」と同じではありません。

「能動的ニヒリズム」は、人生にはみんなに共通するような絶対的な価値はないので、自分の人生の価値は自分で探し続けましょう、というものです。これはよりよい状態を求めて、ときにはこれまでの自分を否定するような、楽しみも苦しみもある生き方と言えます。

一方で「刹那主義」は、後先考えない感情の発散や満足を追うだけの「楽観の最果て」または「思考停止状態」と言えるでしょう。

仏教用語「刹那生滅(せつなしょうめつ)」

「刹那生滅」は、字の通り「刹那の間に生と滅がある」ということ。すべてのものは「刹那生滅」していると仏教では説いています。「いのちは1つ1つの刹那で生と滅を経験しながら、絶えず生まれ変わって循環・連続している」ということです。さもなければ過去の過ちはいつまでも繰り返され、後に善行が生まれることはないという悲惨なことに。

図らずも実際に人間の細胞は、その多くが時とともに入れ替わっています。※刹那消滅と間違わないようにご注意を。

\次のページで「「刹那」の使い方の例」を解説!/

「刹那」の使い方の例

「刹那」の意味について、仏教の教えなどとともに解説してきました。次に、実際にどう使えばいいのかを示す例文をご紹介します。

1.バッター大谷が内角やや低めの直球をとらえた刹那、誰もがホームランを確信した。

2.耐えられない苦痛や嫌なことがあったときに、飲酒や暴力などの刹那的な衝動に流されてばかりいると、いずれ孤立して取り返しのつかないことになってしまう。

1のような使われ方は、切り抜かれた映画のシーンのように、「まさにその瞬間」の情景を印象的に表現する効果がありますね。2の例はこの記事冒頭のライター紹介に添えた一文と同じ使い方です。嫌なことにカッとなったり、反射的に欲望が湧いてきたりする様子を描いています。

「刹那」の類義語は?

ごく短い時間を意味する刹那の類語にはどんなものがあるでしょうか?類義語を3つご紹介します。

「瞬時」:またたきをするくらいの時間

「瞬時」はほんのわずかな時間を表現します。ただしまたたきを(1回)する程度の長さの時間ですので、刹那よりは少し余裕のあるイメージですね。

「咄嗟(とっさ):ごく短い時間

「咄」は舌打ちを、「嗟」は嘆きの声を意味する漢字です。舌打ちしたり声を出したりする時間がありますので、「咄嗟」も「刹那」と比べると余裕がある印象を持たせます。

\次のページで「「束の間」:わずかの時間」を解説!/

「束の間」:わずかの時間

「束」は片手を握ったときの幅(つまり指4本分)の長さのことです。昔は体の一部などを長さの目安として利用していました。そのなかで「束」は短い単位のものであり、短い時間の例えとしても使われることに。

「刹那」の対義語は?

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この項目では、「刹那」の対義語を3つご紹介します。

「永劫」:きわめて長い時間

「劫」はヒンドゥー教や仏教の用語で、長い時間を指す言葉です。ヒンドゥー教では「1劫=43億2000万年」とされています。「永劫」は「劫」から派生して生まれた言葉で、無限に近いほど長い時間のことです。

「悠久」:果てしなく続くこと

「悠」は禊によって身を清めることにより、心がゆったりと広く寛容になることを表した漢字です。これと長い時間経過を表す「久」がくっついて、はるかな過去からずっと続いていく「悠久」が成り立ちます。

「無窮(むきゅう)」:極まりないこと

「行きづまる」を意味する「窮」に「無」がつくことで、どこまでも行きづまらない・極まりないことを形容した言葉です。

「刹那」はアーティスト御用達の言葉

「刹那」を「まったく知らない」という人は少ないのではないでしょうか?「曲名や漫画などで見かけた」という方がとても多いと思います。この記事の最後に、「刹那」が身近な世界で使われている例をいくつかご紹介しましょう。

\次のページで「歌の世界の「刹那」」を解説!/

歌の世界の「刹那」

2009年にGReeeeNというグループが作詞・作曲した「刹那」が発売されました。この曲はフジテレビで放送されたドラマ『ヴォイス~命なき者の声』の主題歌にも抜擢。生きる意味を考えさせられる歌詞に、直接的に「刹那」という言葉は使われていません。しかし直面したできごと一つ一つに正面から向き合って成長していこう、ということを訴えている歌詞は、聞き手に「刹那生滅」の精神を感じさせることでしょう。

アニメ・漫画の世界の「刹那」

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漫画などの2次元創作物では、人物名に「刹那」がよく使われています。例えば、『機動戦士ガンダム00』の主人公「刹那・F・セイエイ」や、『半妖の夜叉姫』の主人公の1人「せつな」などです。『烈火の炎』では、目が合った相手を一瞬で燃やし尽くす「刹那」という龍が登場します。

「刹那」がそのままの意味で使われていることも。『るろうに剣心』では、相楽左之助が使う技『二重の極み』の説明に登場します。曰く、「一撃目の衝撃が物体の抵抗とぶつかった刹那に二撃目の衝撃を加えることで、物体を粉々にする」というものです。

『るろうに剣心』ファンの方なら、一度は試してみたことがあるのではないでしょうか?筆者は試して右手の甲が血だらけになりました。

「刹那」はかっこいい?

「刹那」がこれほど様々な創作物に使われているのは、主観的ですがかっこいい言葉だからでしょう。「せつな」という語感がよく、漢字の字形もバランスよく若干とがっているところなどは、思春期の男子にはたまらないものがあります。言葉の意味も人気に一役買っていそうですね。「知覚できないほどの一瞬」という抗い難くはかない印象を与えるので、上手に使われているとセンスのよさを感じます。

人生は「刹那」の積み重ね

この記事では、「刹那」について解説しました。難読漢字のようですが、読み方も意味も大体知っているという方は多いでしょう。

「刹那生滅」の教えでは、刹那の間にすべてのものは生まれ変わっているということになります。75分の1秒という短い時間に自分の存在が変わるというのは自覚できませんが、もう少し長い時間で例えられると実感がわくかもしれませんね。

「今日の自分は、昨日とは(少しだけど)違う」と意識してみるとどうでしょう?昨日と今日の自分は確かに関連しているけれども少しずつ変わっており、それがたくさん積み重なって人生を形作っていくと思うと、毎日同じことに思われる暮らしも活き活きとしてくるのではないでしょうか?

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国語言葉の意味

「刹那」の意味って?何秒くらい?使い方や仏教との関係・類義語などを校正担当経験もあるwebライターがわかりやすく解説

この記事では、「刹那」について解説する。

「刹那」という言葉は、曲名・小説・漫画アニメなどでよく見かける。短い時間を意味する言葉だとなんとなく理解している人が多いと思うが、具体的に何秒かを答えられるか?

今回は衝動買いや暴飲暴食など、目先の刹那的な欲望にあらがえないwebライターのぷーやんを呼んです。「刹那」の意味と使われ方について、説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。就職活動のときに受けた適性診断で「刹那的な快楽に溺れやすい」と言われた過去をもつ。

「刹那」の意味と使い方は?

image by iStockphoto

「刹那」は難しい漢字で書かれた、とっつきにくい言葉にみえます。しかし楽曲や漫画などでしばしば使われているので、「なんとなく知っている」という方も多いでしょう。
「刹那」の意味は、辞典では次のように書かれています。

1 仏語。時間の最小単位。1回指を弾く間に60あるいは65の刹那があるとされる。

2 きわめて短い時間。瞬間。「―の快楽に酔う」「衝突した―に気を失う」「―的な生き方」

出典:デジタル大辞泉(小学館) 「刹那」

「短い時間」という2の意味で理解されている方がほとんどだと思いますが、1にある通り「刹那」は実は仏教用語でもあります。

「刹那」は「一瞬」?何秒のこと?

非常に短い時間を意味する「刹那」。しかし短いとは言っても、具体的に何秒のことなのでしょうか?特に理系の方は気になるかもしれませんね。その答えは小乗仏教教理の集大成である「大毘婆沙論(だいびばしゃろん)」にあります。その記述から計算すると、「刹那」は75分の1秒です。少数にすると、0.013秒となります。

楽観の最果て?「刹那主義」

後先考えずに、一時の感情や現在の生活のみを満足させる生き方が、「刹那主義」です。近年「陽気なニヒリズム」という言葉が、「刹那主義」とほぼ同義語として普及しています。しかし「陽気なニヒリズム」は哲学者ニーチェの「能動的ニヒリズム」と同義で、「刹那主義」と同じではありません。

「能動的ニヒリズム」は、人生にはみんなに共通するような絶対的な価値はないので、自分の人生の価値は自分で探し続けましょう、というものです。これはよりよい状態を求めて、ときにはこれまでの自分を否定するような、楽しみも苦しみもある生き方と言えます。

一方で「刹那主義」は、後先考えない感情の発散や満足を追うだけの「楽観の最果て」または「思考停止状態」と言えるでしょう。

仏教用語「刹那生滅(せつなしょうめつ)」

「刹那生滅」は、字の通り「刹那の間に生と滅がある」ということ。すべてのものは「刹那生滅」していると仏教では説いています。「いのちは1つ1つの刹那で生と滅を経験しながら、絶えず生まれ変わって循環・連続している」ということです。さもなければ過去の過ちはいつまでも繰り返され、後に善行が生まれることはないという悲惨なことに。

図らずも実際に人間の細胞は、その多くが時とともに入れ替わっています。※刹那消滅と間違わないようにご注意を。

\次のページで「「刹那」の使い方の例」を解説!/

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