今回のテーマは「二重結合(にじゅうけつごう)」、キーワードは共有結合です。

物質は原子同士が結びつくことでできている。原子の結びつきのうち、非共有元素同士が電子を共有する結合を共有結合といい、共有結合してできるのが皆もよく知っている分子です。しかし同じ共有結合によってできた分子でも、酸素分子と水素分子ではその結合の仕方が異なっている。これは原子が持つ電子の数が大きく関わっているからで、共有する結合のペアの数で単結合、二重結合、三重結合に分類される。

そこで今回は二重結合について、その結合の特徴や代表的な物質を解説する。解説はいつかイギリスやアメリカでミュージアム巡りをしてみたいという化学系科学館職員、たかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

高校は化学部、大学は工学部化学系出身のリケジョ。最近ビタミン摂取に余念のない科学館職員。

二重結合とは?単結合や三重結合との違いは?

image by PIXTA / 34778524

二重結合とはどんな結合なのでしょうか。コトバンクによると以下のように記載されています。

多原子分子において、2個の原子が互いに2つの原子価(他の原子といくつの電子を共有できるのかという数)によって結合している

出典:コトバンク

原子は電子を共有することで分子を作ります。この時共有される、最外殻の電子を価電子と呼ぶのです。そしてこのように原子の間で電子を共有しあう結合のことを共有結合とよびます。共有結合は電子の共有する数によって単結合、二重結合または三重結合となるので覚えておいてくださいね。

分子の構造式

分子の構造式

image by Study-Z編集部

分子は構造がわかるように構造式で表すことができます。構造式とは同じ種類の原子が同じ数だけ化合してできている物質(異性体)でも違いが分かるよう、その組み合わせが分かるようにした式のことです。そして結合の様子が分かるよう、結合の種類に合わせて原子を結びつけて書くこともできる化学式となっています。

\次のページで「二重結合の構造式」を解説!/

二重結合の構造式

二重結合の構造式

image by Study-Z編集部

では構造式を書くとき、二重結合はどのように表されるのでしょうか。二重結合は2本の線で表すことができます。また電子式では2個の点で表わされ、共有結合に係る電子のペア(電子対)を共有電子対というのです。

付加反応しやすいというのが二重結合の特徴で、特にアルケンのような炭素-炭素二重結合は付加反応が起きやすくなっています。アルケンに水素を付加すると飽和化合物(アルカン)となるので覚えておきましょう。ここでアルケンの一種、エチレンを例に考えてみましょう。エチレンの化学式は

CH2=CH2

で、二重結合をひとつ持つ物質です。ここに水素を付加すると、エチレンは

CH3=CH3(エタン)

となります。ちなみにエチレンといえば無色で甘い香りのする気体で、エタンといえば可燃性の気体です。化学結合について学ぶ上で知っておきたい原子や結合についてはこちらの記事を参考にして下さいね。

共有結合は握手をイメージすると理解しやすいです。例えば水素分子は2つの水素原子がそれぞれ手を1本差し出し、握手している状態二重結合は両手で握手ですね。

分子を作るのは共有結合で、非金属元素同士が結合しています。一方、金属結合するのは金属元素同士で、イオン結合は非金属元素と金属元素がする結合です。共有結合は電子を共有しあいますが、金属結合では余った電子が原子の間を飛び回り、イオン結合は電子を失って陽イオンとなった原子と電子を得て陰イオンとなった原子がする化学結合ですね。

\次のページで「単体の分子から見る二重結合」を解説!/

単体の分子から見る二重結合

単体の分子から見る二重結合

image by Study-Z編集部

それでは水素分子、酸素分子、窒素分子を例に二重結合について解説していきます。

水素原子は電子を1つ持つ原子です。水素の最外殻はK殻で、K殻には2つの電子が入ります。そのため水素原子は1つずつ電子を出し合って水素分子を作るのです。

一方、酸素原子は8つの電子を持っています。そして酸素原子の電子の配置はK殻に2つ、最外殻であるL殻に6つです。L殻は8つの電子が入ると安定しますが、酸素原子のL殻には6つしか電子が入っていません。そのため、酸素は分子を作るときに2つずつ電子を出し合います。この時の結合が二重結合です。

さらに酸素よりも1つ電子の少ない窒素の場合、電子を3つずつ出し合って分子を作ります。この時にするのが三重結合です。

一歩踏み込む二重結合、混成軌道

元素は結する時に混成軌道を作ります。混成軌道とは、化学結合するときに作られる軌道のことです。単結合のみで構成され当た分子はsp3混成軌道、二重結合はsp2混成軌道、そして三重結合はsp混成軌道を作ります。この混成軌道は大学で習う内容ですが、さらっと言葉だけでも覚えておくといいかもしれません。

二重結合の化合物

それではここからは、二重結合を持つ物質を紹介していきます。

1.温暖化と炭酸のもと、二酸化炭素

1.温暖化と炭酸のもと、二酸化炭素

image by Study-Z編集部

二酸化炭素の化学式がCO2であることはみなさんご存じでしょう。二酸化炭素を構成するのは4つの価電子を持つ炭素Cと、2つの価電子を持つ酸素Oです。炭素の両端に酸素が来て、それぞれ2重結合を形成します。

二酸化炭素は皆さんも飲んだことがあるでしょう炭酸水のもとです。そして二酸化炭素の固体はドライアイスですね。二酸化炭素についてはこちらの記事で確認してみてくださいね。

\次のページで「2.化学式に注目、アルケン」を解説!/

2.化学式に注目、アルケン

先程も登場した飽和炭化水素アルケンCnH2nで表すことのできる有機化合物で、炭素原子同士の間に二重結合をひとつ持つ物質のことです。アルケンは反応性が高く水素を付加すると炭化水素アルカンとなりその化学式は

CnH2n+2

となります。二重結合が1つあると炭素が持てる水素が2つ減るため、アルカンとアルケンの化学式は微妙に異なっているのです。最も炭素数の小さいアルケンはエチレンC2H4。これに水素を付加するとエタンC2H4となります。

3.単結合と二重結合が交互、ベンゼン

image by PIXTA / 34273462

ベンゼンとは化学式C6H6で表される物質で、炭素原子6個が正六角形を形成した物質です。ベンゼンでは両隣の炭素と片方は単結合、もう片方とは二重結合をしています。となると炭素はまだ一つ、電子を持つ余裕がありますね。ここに水素が入っているのです。このベンゼン環は六角形の形から亀の甲と呼ばれることもあります。

ベンゼンは無色で甘く香り、引火性の高い液体です。ベンゼン環を持つ化合物を芳香族(ほうこうぞく)といます。有機化学によく登場するので覚えておいてくださいね。

4.どっちがどっち?シスとトランス

4.どっちがどっち?シスとトランス

image by Study-Z編集部

二重結合を持った鎖状不飽和ジカルボン酸(2つのCOOHを持つ)であるマレイン酸フマル酸。このふたつは化学式で表した時、同じHOOC-CH=CH-COOHとなります。これでは見ただけでは区別が付きませんね。しかし二重結合があるため、立体的にみると構造の異なる物質となります。このような物質を幾何異性体、シス・トランス異性体というので覚えておいてくださいね。

共有結合の一種、二重結合

二重結合とは共有結合の一種で、2つずつ電子を出し合って結合します。二重結合の分子といえば酸素や二酸化炭素などです。二重結合に合わせて単結合や三重結合も確認してくださいね。

今回もいろいろな化学の単語が登場しましたね。わからないことは教科書や資料集だけなく、百科事典やネット検索をしてみるとより理解が深まります。また化学用語辞典を1冊用意しておくと便利かもしれません。特に理系学部に進学を希望している人は自分の言葉で説明できるよう練習してくださいね。

" /> 簡単にわかる二重結合!単結合・三重結合との違いも科学館職員がわかりやすく解説! – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

簡単にわかる二重結合!単結合・三重結合との違いも科学館職員がわかりやすく解説!

今回のテーマは「二重結合(にじゅうけつごう)」、キーワードは共有結合です。

物質は原子同士が結びつくことでできている。原子の結びつきのうち、非共有元素同士が電子を共有する結合を共有結合といい、共有結合してできるのが皆もよく知っている分子です。しかし同じ共有結合によってできた分子でも、酸素分子と水素分子ではその結合の仕方が異なっている。これは原子が持つ電子の数が大きく関わっているからで、共有する結合のペアの数で単結合、二重結合、三重結合に分類される。

そこで今回は二重結合について、その結合の特徴や代表的な物質を解説する。解説はいつかイギリスやアメリカでミュージアム巡りをしてみたいという化学系科学館職員、たかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

高校は化学部、大学は工学部化学系出身のリケジョ。最近ビタミン摂取に余念のない科学館職員。

二重結合とは?単結合や三重結合との違いは?

image by PIXTA / 34778524

二重結合とはどんな結合なのでしょうか。コトバンクによると以下のように記載されています。

多原子分子において、2個の原子が互いに2つの原子価(他の原子といくつの電子を共有できるのかという数)によって結合している

出典:コトバンク

原子は電子を共有することで分子を作ります。この時共有される、最外殻の電子を価電子と呼ぶのです。そしてこのように原子の間で電子を共有しあう結合のことを共有結合とよびます。共有結合は電子の共有する数によって単結合、二重結合または三重結合となるので覚えておいてくださいね。

分子の構造式

分子の構造式

image by Study-Z編集部

分子は構造がわかるように構造式で表すことができます。構造式とは同じ種類の原子が同じ数だけ化合してできている物質(異性体)でも違いが分かるよう、その組み合わせが分かるようにした式のことです。そして結合の様子が分かるよう、結合の種類に合わせて原子を結びつけて書くこともできる化学式となっています。

\次のページで「二重結合の構造式」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: