この記事では「踏襲」について解説する。

端的に言えば「踏襲」の意味は「受け継ぐ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「踏襲」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。学生生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で日本語を分かりやすく説明する。

「踏襲」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「踏襲」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「踏襲」の意味は?

「踏襲」には、次のような意味があります。

前人のやり方などをそのまま受け継ぐこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「踏襲」

「踏襲」とは、「とうしゅう」と読みます。難しい表現なので日常的に使うことは少ないですが、ビジネスの場面において用いられることが多いです。

ビジネスの場面において、先輩や上司など前任者の仕事のやり方やルールなどをそのまま受け継ぐことを「踏襲する」と言います。「踏襲」が指す受け継ぐものとはあくまでも前任者の仕事の仕方、思想なので先輩から仕事を受け継いだ場合にその地位に立ったこと自体を「踏襲した」とは言いません。地位や役割などの表面的な引継ぎを指す場合は「踏襲」を用いず、仕事のやり方や考え方などの内面的なものを引き継いだときのみに用いるようにしましょう。

「踏襲」の語源は?

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次に「踏襲」の語源を確認しておきましょう。

「踏襲」の語源を考えるにあたって、まずは二つの漢字をそれぞれ紐解いていきます。「踏」は日常的には何か物を「踏みつける」という意味で用いられていますね。ここでの「踏む」は前任者が作った道と同じ道を足を踏み鳴らして歩むという意味です。「襲」は日常的には「襲う(おそう)」という意味合いで使われることが多いですが、ここでは「継ぐ」というもう一つの意味を使います。「おそいかかる」というイメージがつよいので「継ぐ」という意味も併せ持っていることには衝撃を受けた方もいるかもしれません。

「襲」にはこのほかに「重ねる」という意味もあります。「踏」の「同じ道を歩む」と「襲」の「継ぐ」という意味から、「踏襲」は前例に倣っておなじ道を受け継ぐという意味になることが分かりますね。

\次のページで「「踏襲」の使い方・例文」を解説!/

「踏襲」の使い方・例文

「踏襲」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.就職した英会話教室の教育方針は私がそれまで無意味であると思っていた単語を覚えたり文章の英語訳をすることだったが、一度就職したからにはこの教室のやり方を踏襲していかなければならないだろう。
2.今の学習作法では追いつけないので先輩の勉強法を踏襲して何とかこの状況を打破したい。
3.転職した会社が前例踏襲主義で私の意見や新しい業務のアイディアを受け入れてくれないので自分で行動して経験を積み、ついに独立した。

「踏襲」とは、良くも悪くも前者のやり方や方針をそのまま受け継ぐという意味を持つことが分かりましたね。教育方針や学習方法、仕事の任務を忠実にやることなど前例のやり方をそのまま受け継ぐというやり方は、実力主義や個人主義の現代ではあまり馴染みのない考え方かもしれません。しかし個人の力が重要な現代でも、古い制度の良い部分は踏襲して悪い部分は自分で変えていくという温故知新の姿勢が大切ですよね。

「踏襲」には、「前例踏襲」という四字熟語もあります。これは文字通り前例を踏襲してやり方を引き継ぐという意味です。この様に四字熟語で使われることもあるので覚えておくと、役立つ場面があるかもしれませんよ。

「踏襲」の類義語は?違いは?

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「踏襲」とは仕事や教育、伝統的な技術において前任者や先人にそのやり方や思想などの内面的な部分を教わり、そのままの形で引き継いでいく役割を担うことを指す言葉でした。この様に何かを受け継ぐということを表現するには他にどのような言葉が用いられるのでしょうか?

では、「踏襲」の類義語とその使い分けを見ていきましょう。

「継承」

「継承」とは身分や役職、財産を受け継ぐということを表現する言葉です。「踏襲」は仕事の方針や思想などの内面的な面を引き継ぐという意味でしたが、「継承」は役職などの身分や大まかな仕事の種類、財産などの表面的な面を受け継ぐときに用いられます。

使い分けの例として、前任者に部長の仕事を教わったとしましょう。その部長という役職を引き継ぐこと自体を指すのが「継承」、細かい仕事の内容をそのまま受け継ぐことを指すのが「踏襲」です。以上のように、「継承」と「踏襲」は同じ場面で用いていても示している対象が違うということが分かりますね。また、「継承」は伝統的な技術や芸能を受け継ぐ際に用いられることが多いです。

\次のページで「「踏襲」の対義語は?」を解説!/

「踏襲」の対義語は?

「踏襲」は仕事の方針や思考を引き継ぐという意味でした。それでは「踏襲」の対義語を見ていきましょう。

「改革」

前任者のやり方をそのまま受け継いで自分の意見は取り入れないという「踏襲」の対義語は「改革」です。「改革」とは進んで自分の意見を取り入れて古い固定概念を壊すということを意味します。現代の個人主義、成果主義の世の中ではこちらの方が進んでキャッチフレーズに用いられることが多いのではないでしょうか?

「踏襲」は「伝統的なやり方を受け継ぐ」というと聞こえが良いですが、「固定概念にとらわれている」というように批判的に捉えることも出来ますよね。これに対して「改革」はその膠着化したやり方を壊して前進させることなのでとても素晴らしいことのように聞こえますが、改革を起こしたことで伝統的な自然の風景を壊してきたという人類の失態もあります。ビジネスの上でも何に改革が必要か、何は踏襲した方がよいのかということを良く見極めることが大切ですね。

「踏襲」を使いこなそう

この記事では「踏襲」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「踏襲」という言葉は日常生活の中で使うことはなかなかないですが、改めて詳しい意味や示す内容を整理すると時代の倫理観の変化を感じることが出来ますよね。また、「襲」という漢字に「受け継ぐ」や「重ねる」と言った意味もあることには衝撃です。この様に一つの単語の意味を深く調べていくと表現の幅が枝分かれして広がっていくというのは日本語の面白いところですね。

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【慣用句】「踏襲」の意味や使い方は?例文や類語を現役学生ライターがわかりやすく解説!

この記事では「踏襲」について解説する。

端的に言えば「踏襲」の意味は「受け継ぐ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「踏襲」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。学生生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で日本語を分かりやすく説明する。

「踏襲」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「踏襲」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「踏襲」の意味は?

「踏襲」には、次のような意味があります。

前人のやり方などをそのまま受け継ぐこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「踏襲」

「踏襲」とは、「とうしゅう」と読みます。難しい表現なので日常的に使うことは少ないですが、ビジネスの場面において用いられることが多いです。

ビジネスの場面において、先輩や上司など前任者の仕事のやり方やルールなどをそのまま受け継ぐことを「踏襲する」と言います。「踏襲」が指す受け継ぐものとはあくまでも前任者の仕事の仕方、思想なので先輩から仕事を受け継いだ場合にその地位に立ったこと自体を「踏襲した」とは言いません。地位や役割などの表面的な引継ぎを指す場合は「踏襲」を用いず、仕事のやり方や考え方などの内面的なものを引き継いだときのみに用いるようにしましょう。

「踏襲」の語源は?

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次に「踏襲」の語源を確認しておきましょう。

「踏襲」の語源を考えるにあたって、まずは二つの漢字をそれぞれ紐解いていきます。「踏」は日常的には何か物を「踏みつける」という意味で用いられていますね。ここでの「踏む」は前任者が作った道と同じ道を足を踏み鳴らして歩むという意味です。「襲」は日常的には「襲う(おそう)」という意味合いで使われることが多いですが、ここでは「継ぐ」というもう一つの意味を使います。「おそいかかる」というイメージがつよいので「継ぐ」という意味も併せ持っていることには衝撃を受けた方もいるかもしれません。

「襲」にはこのほかに「重ねる」という意味もあります。「踏」の「同じ道を歩む」と「襲」の「継ぐ」という意味から、「踏襲」は前例に倣っておなじ道を受け継ぐという意味になることが分かりますね。

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