歌詞に、ゲームに、小説に…色んな所にある「アイデンティティ」
楽曲のタイトル。あるいは歌詞。ゲームや小説のテーマにも、「アイデンティティ」という言葉は、しばしば顔を覗かせます。自分とは何者なのか?という問いかけは、改めて考えると奥が深く、心を揺さぶる力を持つテーマであるからです。
もしも何かの作品を目にした際に、「アイデンティティ」が出てきたら、ぜひ本記事のことを思い出してください。言葉の知識をもって作品を見ることで、知らなかった時とは違う味わいが出てくるはずです。
「アイデンティティ」を”喪失する”とは?
人は「アイデンティティ」を喪失すると、心理的に不安定になります。
・自分を自分として認識できない。
・自分のことを認められない。
・自分が自分であるという証拠を失ってしまった。
上記のような状態を、「アイデンティティ」の喪失と言います。以下の引用を見てください。
自己喪失。若者に多くみられる自己同一性の喪失。「自分は何なのか」「自分にはこの社会で生きていく能力があるのか」という疑問にぶつかり、心理的な危機状況に陥ること。
出典:コトバンク 「アイデンティティ」の喪失
悲劇性の高いテーマなので、メディア作品に取り上げられることも多いです。「アイデンティティ」という言葉に、「壊れる」「なくなる」「クライシス」「危機」などの言葉が連なっている場合、上記の状態を示していると考えてください。
言い換え・語源…「アイデンティティ」を深く知る
image by iStockphoto
「アイデンティティ」の意味を掴めたら、次は類語と語源を確認しましょう。言い換えできる言葉や、どこから生まれた単語なのかを知ることで、より理解が深まります。そして理解が深まれば、言葉はもっといきいきと、あなたの中に根付いていくでしょう。
「アイデンティティ」の言い換えも自分にまつわる言葉が多い
アイデンティティの類語としては、以下のようなものがあります。
自己同一性/自我同一性/同一性/主体性/自己認識/自己確立
出典:オールガイド 「アイデンティティ 言い換え」
「自」という感じが入っているのが目立ちます。自分に関わる単語が多いことが、ここからも伺えるのです。他にも、以下のようなものもあります。
自分らしさ/個性/パーソナリティ/キャラクター/シンボル/独自性/身分証明/ID/身元/素性
出典:オールガイド 「アイデンティティ 言い換え」
上記の言葉と、少しニュアンスが違います。自分は自分であるという認識のことを、「個性」と置き換えているわけです。
「性格」「名前」「独自性」など、全て「個性」に関する単語になっています。これは”存在の証明”という意味から派生したものと考えて良いでしょう。「他人と比べて違うところ」を示すことで、自分の認識に繋げているのです。
「アイデンティティ」の語源はラテン語から
アイデンティティの語源は、以下とされています。
英語の「identity」の語源は、ラテン語の「idem」に由来する。この「idem」という語の意味は、英語の「the same」におおよそあたる。このことから、英語の「identity」は「sameness」とも言い換えられる。
出典:Wikipwdia 「アイデンティティ 語源」
ここは、要注意点です。英語の「identity」と日本語の「アイデンティティ」は、言葉の持つ意味が違います。以下の引用を続けて見てください。
同一性(どういつせい)とは、主に英語の「identity」を翻訳した語であり、多義語である。日本語に即して説明すれば、ひとくちに同一性といっても二種類の意味があり、「Aは何者なのか」という意味での同一性と、「AとBは同じだ」という意味での同一性がある。
~中略~
自己同一性(identity、self identity、カタカナで「アイデンティティ」というときは大抵これ)
出典:Wikipwdia 「アイデンティティ 語源」
英語の「identity」は”同一性”という意味を持っています。自己同一性も含んでいますが、他のものやことに関する同一性も、同時に示しているのです。それに対して日本語の「アイデンティティ」は、”自己”同一性に限定されている場合がほとんどと言えます。
「アイデンティティ」という言葉に触れるには
「アイデンティティ」という言葉に触れるときは、もともとの意味をはっきりと掴んでおかなければいけません。人によって捉え方の幅があるため、勘違いや誤解を招きやすいからです。
自分で使うときには、「アイデンティティ」という言葉が適切かどうか、十分考えましょう。同時に読み解くときにも、注意が必要です。目の前の「アイデンティティ」がどういう意図を持っているのか?それは、本来の意味を理解して初めてわかることと言えるでしょう。