この記事では「アイデンティティ」について解説する。

「アイデンティティ」は、漠然としか理解されていないということが多い単語です。「なんとなく、自分を指し示す言葉だ、っていうのは知っています」程度の認識のやつも多いと思うが、それじゃあいざというときに、自信を持って使えないぞ。

元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「アイデンティティ」の意味や使い方、言い換えなどを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

辞書で見る「 アイデンティティ」の意味と使い方

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「アイデンティティ」という言葉を辞書で引くと、以下のように説明されます。

アイデンティティー【identity】

1 自己が環境や時間の変化にかかわらず、連続する同一のものであること。主体性。自己同一性。
2 本人にまちがいないこと。また、身分証明。

出典:国語辞典 Weblio 「アイデンティティ」

しかし、この説明では不十分です。自己同一性とは何か。それを知らなければ、上記の説明を見ても疑問は解消しません。「アイデンティティ」の意味を知るには、まず自己同一性について理解することです。

「アイデンティティ」は自己同一性!でもそれって、そもそも何?

自己同一性とは、端的に言うと「自分は自分である」ということです。自己同一性という言葉を検索すると、以下の結果が出てきます。

「自己同一性」の解説

ある個物が他の個物から区別されて、それ自身としての一貫性を保持すること。

出典:コトバンク 「自己同一性」

自分という存在は世界にたった一人であり、他の人とは違う人間です。それは、生まれた時から死ぬまでずっと続きます。何かの拍子になくなったり、誰かに奪われたりするものではありません。「アイデンティティ」とは、そのような自分に対する認識を指す言葉です。

皆無意識に「アイデンティティ」を感じている

「自分は自分だなんて、そんなの当たり前のことじゃない?」そう思う方も多いでしょう。その通りです、当たり前のことなのです。私達は、自分は自分であるという感覚=「アイデンティティ」を感じながら、日々過ごしています。本来、「アイデンティティ」とは、難しい意味の言葉ではないのです。

元来の「アイデンティティ」の使い方

元来の「アイデンティティ」は具体的に、どのような場面で使用するのかを見ていきましょう。

\次のページで「新たに芽吹く「アイデンティティ」の意味と使い方」を解説!/

1.自分と違う意見を聞いて、アイデンティティを感じた。
2.人生に迷ったなら、アイデンティティを見直すことが効果的だ。
3.アイデンティティを意識すると、心を強く持てる気がする。

自己同一性の意味が掴めれば、上記の例文も意味がわかりやすいはずです。あくまで、自分が自分に対して認識する、という意味になっています。

新たに芽吹く「アイデンティティ」の意味と使い方

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「アイデンティティ」には、元々の意味から派生し、新たに根付いたもうひとつの意味があります。むしろ、そちらの意味の方が分かりやすく、受け入れられやすい傾向にあるほどです。

言葉は生き物ですので、実はこういったことは珍しくありません。また、違う意味になったとしても、元の意味から大きく変わることもまれです。それでは、具体的にどのような受け取られ方になったのか?それを見ていきましょう。

「アイデンティティ」は存在の証明

「アイデンティティ」のもうひとつの意味は、存在の証明です。この場合証明とは、「証拠」「裏付け」と言い換えられます。つまり、自分が自分であることに対する証拠という意味になるのです。

本来の「アイデンティティ」の意味である自己同一性は、自分が自分であるという自覚。
自我への認識そのものを指します。それに対してこちらの意味は、自分ではない何かが、自分を認めてくれている状態を指しているのです。

自己肯定に必要な「アイデンティティ」

存在の証明は、自分への自信に繋がります。自分が自分であることに、本来は証明など必要ありません。しかし、証明があると人は安心するのです。

“これがある限り、私は私なんだ”そう思える何かがあるということは、単に自分への認識を強めるだけではありません。存在の証明は自分に対する自信、自己肯定感へと変化し、生きる上での心の拠り所になります。「アイデンティティ」を確立できているということは、自分に対して胸を張れるということなのです。

新しい「アイデンティティ」の使い方

新しい「アイデンティティ」は具体的に、どのような場面で使用するのかを見ていきましょう。

1.私のアイデンティティは、東大出身であることだ。
2.自己アピールの前に、アイデンティティの再確認を行った。
3.この成功は、私のアイデンティティに大きく影響するだろう。

「東大出身」「この成功」など、自分以外の要素が証明となり、自分への認識に繋がっています。自己アピールは、自分以外の相手に対して行うものです。いずれも、自分以外の誰かや何かが、「アイデンティティ」に深くかかわっているのがわかります。

「アイデンティティ」の持つ詩的さ

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「アイデンティティ」は、自分の認識に関する単語です。人は生きている限り、自分であり続けます。しかし普段はそのことを、特別に意識していません。

私達は日々「アイデンティティ」と共に過ごしていながら、「アイデンティティ」のことを深くは考えないのです。身近でありながら、新鮮でもある。「アイデンティティ」は、その2つの要素を同時に持っています。

\次のページで「歌詞に、ゲームに、小説に…色んな所にある「アイデンティティ」」を解説!/

歌詞に、ゲームに、小説に…色んな所にある「アイデンティティ」

楽曲のタイトル。あるいは歌詞。ゲームや小説のテーマにも、「アイデンティティ」という言葉は、しばしば顔を覗かせます。自分とは何者なのか?という問いかけは、改めて考えると奥が深く、心を揺さぶる力を持つテーマであるからです。

もしも何かの作品を目にした際に、「アイデンティティ」が出てきたら、ぜひ本記事のことを思い出してください。言葉の知識をもって作品を見ることで、知らなかった時とは違う味わいが出てくるはずです。

「アイデンティティ」を”喪失する”とは?

人は「アイデンティティ」を喪失すると、心理的に不安定になります。

・自分を自分として認識できない。
・自分のことを認められない。
・自分が自分であるという証拠を失ってしまった。

上記のような状態を、「アイデンティティ」の喪失と言います。以下の引用を見てください。

自己喪失。若者に多くみられる自己同一性の喪失。「自分は何なのか」「自分にはこの社会で生きていく能力があるのか」という疑問にぶつかり、心理的な危機状況に陥ること。

出典:コトバンク 「アイデンティティ」の喪失

悲劇性の高いテーマなので、メディア作品に取り上げられることも多いです。「アイデンティティ」という言葉に、「壊れる」「なくなる」「クライシス」「危機」などの言葉が連なっている場合、上記の状態を示していると考えてください。

言い換え・語源…「アイデンティティ」を深く知る

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「アイデンティティ」の意味を掴めたら、次は類語と語源を確認しましょう。言い換えできる言葉や、どこから生まれた単語なのかを知ることで、より理解が深まります。そして理解が深まれば、言葉はもっといきいきと、あなたの中に根付いていくでしょう。

「アイデンティティ」の言い換えも自分にまつわる言葉が多い

アイデンティティの類語としては、以下のようなものがあります。

自己同一性/自我同一性/同一性/主体性/自己認識/自己確立

出典:オールガイド 「アイデンティティ 言い換え」

「自」という感じが入っているのが目立ちます。自分に関わる単語が多いことが、ここからも伺えるのです。他にも、以下のようなものもあります。

自分らしさ/個性/パーソナリティ/キャラクター/シンボル/独自性/身分証明/ID/身元/素性

出典:オールガイド 「アイデンティティ 言い換え」

上記の言葉と、少しニュアンスが違います。自分は自分であるという認識のことを、「個性」と置き換えているわけです。

「性格」「名前」「独自性」など、全て「個性」に関する単語になっています。これは”存在の証明”という意味から派生したものと考えて良いでしょう。「他人と比べて違うところ」を示すことで、自分の認識に繋げているのです。

「アイデンティティ」の語源はラテン語から

アイデンティティの語源は、以下とされています。

英語の「identity」の語源は、ラテン語の「idem」に由来する。この「idem」という語の意味は、英語の「the same」におおよそあたる。このことから、英語の「identity」は「sameness」とも言い換えられる。

出典:Wikipwdia 「アイデンティティ 語源」

ここは、要注意点です英語の「identity」と日本語の「アイデンティティ」は、言葉の持つ意味が違います。以下の引用を続けて見てください。

同一性(どういつせい)とは、主に英語の「identity」を翻訳した語であり、多義語である。日本語に即して説明すれば、ひとくちに同一性といっても二種類の意味があり、「Aは何者なのか」という意味での同一性と、「AとBは同じだ」という意味での同一性がある。

~中略~

自己同一性(identity、self identity、カタカナで「アイデンティティ」というときは大抵これ)

出典:Wikipwdia 「アイデンティティ 語源」

英語のidentity」は”同一性”という意味を持っています。自己同一性も含んでいますが、他のものやことに関する同一性も、同時に示しているのです。それに対して日本語の「アイデンティティ」は、”自己”同一性に限定されている場合がほとんどと言えます。

「アイデンティティ」という言葉に触れるには

「アイデンティティ」という言葉に触れるときは、もともとの意味をはっきりと掴んでおかなければいけません。人によって捉え方の幅があるため、勘違いや誤解を招きやすいからです。

自分で使うときには、「アイデンティティ」という言葉が適切かどうか、十分考えましょう。同時に読み解くときにも、注意が必要です。目の前の「アイデンティティ」がどういう意図を持っているのか?それは、本来の意味を理解して初めてわかることと言えるでしょう。

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国語言葉の意味

「アイデンティティ」って自分のこと?意味・使い方・言い換え・語源を、言葉大好きライターが徹底わかりやすく解説!

この記事では「アイデンティティ」について解説する。

「アイデンティティ」は、漠然としか理解されていないということが多い単語です。「なんとなく、自分を指し示す言葉だ、っていうのは知っています」程度の認識のやつも多いと思うが、それじゃあいざというときに、自信を持って使えないぞ。

元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「アイデンティティ」の意味や使い方、言い換えなどを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

辞書で見る「 アイデンティティ」の意味と使い方

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「アイデンティティ」という言葉を辞書で引くと、以下のように説明されます。

アイデンティティー【identity】

1 自己が環境や時間の変化にかかわらず、連続する同一のものであること。主体性。自己同一性。
2 本人にまちがいないこと。また、身分証明。

出典:国語辞典 Weblio 「アイデンティティ」

しかし、この説明では不十分です。自己同一性とは何か。それを知らなければ、上記の説明を見ても疑問は解消しません。「アイデンティティ」の意味を知るには、まず自己同一性について理解することです。

「アイデンティティ」は自己同一性!でもそれって、そもそも何?

自己同一性とは、端的に言うと「自分は自分である」ということです。自己同一性という言葉を検索すると、以下の結果が出てきます。

「自己同一性」の解説

ある個物が他の個物から区別されて、それ自身としての一貫性を保持すること。

出典:コトバンク 「自己同一性」

自分という存在は世界にたった一人であり、他の人とは違う人間です。それは、生まれた時から死ぬまでずっと続きます。何かの拍子になくなったり、誰かに奪われたりするものではありません。「アイデンティティ」とは、そのような自分に対する認識を指す言葉です。

皆無意識に「アイデンティティ」を感じている

「自分は自分だなんて、そんなの当たり前のことじゃない?」そう思う方も多いでしょう。その通りです、当たり前のことなのです。私達は、自分は自分であるという感覚=「アイデンティティ」を感じながら、日々過ごしています。本来、「アイデンティティ」とは、難しい意味の言葉ではないのです。

元来の「アイデンティティ」の使い方

元来の「アイデンティティ」は具体的に、どのような場面で使用するのかを見ていきましょう。

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