今回は「いばらの道」っていう言葉について見ていきます。聞いたり読んだりしたことはあるけど正確な意味は…っていう人も多いかもしれませんね。

「いばらの道」はずばり「困難な状況」「苦難の多い人生」という意味です。ただ、「いばら」って何か気になった人間もいるんじゃねぇか。

今回はその「いばら」の意味も含めて、「いばらの道」を類義語や英訳と一緒に、大学院卒の日本語教師・むかいひろきに解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「いばらの道」の意味・語源は?

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「いばらの道」は、日常生活の中でたまに聞く言葉でしょう。しかし「どんな意味?」と聞かれると答えづらいかもしれません。まずは、そのような「いばらの道」の意味や語源を、国語辞典を参考にしつつ見ていきましょう。

困難な状況・苦難の多い人生

「いばらの道」は、国語辞典では次のような意味が掲載されています。

茨の生えている道。困難な状況や苦難の多い人生にたとえる。いばらみち。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「いばら‐の‐みち【茨の道】」

「いばらの道」は、「困難な状況」または「苦難の多い人生」という意味で、例えとして用いられる慣用句です。ある人の将来について困難が予想される場合や、ある人の人生を振り返った時に苦難が多かった場合などで用いられます。漢字で「茨の道」と表記することも多いです。この「茨(いばら)」は茨城県(いばらけん)の「茨」と同じ字ですね。

「いばら」って何?

ここで気になった方もいらっしゃるかもしれません。「いばら」とは何だろうかと。「いばら」はバラやカラタチといった、トゲのある背の低い植物の名前の総称です。トゲがある植物がたくさん生えている道は、当然歩くのは困難ですよね。そのようなトゲがある植物を困難や苦難にたとえ、生まれた慣用句が「いばらの道」なのです。

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「いばらの道」の使い方は?2つの場合に分けて解説!

ここでは「いばらの道」の使い方について、「“困難な状況”を表す場合」と「“苦難の多い人生”を表す場合」の2つのパターンに分けて、例文とともに解説します。どちらも根本的な意味は同じです。

“困難な状況”を表す場合

まずは「“困難な状況”を表す場合」について、例文と一緒に見ていきましょう。

1.飢餓や紛争で苦しんでいるA国に留学するなんて、自分からいばらの道に進むようなものだぞ。やめておきなさい。
2.たとえこの先に待っているのがいばらの道だとしても、自分は今の会社から独立したい。
3.武田監督にとって、5年連続最下位のチームを再建するのはいばらの道だった。

まずは1番の例文を見ていきましょう。飢餓や紛争が続く国に留学するということは、もちろん自身への身の危険があり、勉学を進めていく上での困難も平和な国よりも多いことでしょう。1番では「いばらの道」という言葉を使うことで、留学時に起こりうる困難や苦難を表現しています。

次に2番の例文です。これまで雇われていた会社から独立して自身でビジネスを行っていくことは、これまでには経験しなかった苦労や困難に見舞われることになるでしょう。”苦労や困難があっても、今の会社から独立して頑張りたい”というニュアンスを表すために、「いばらの道」が使用されています。

3番目の例文は、スポーツチームの監督について書かれたものですね。成績が長年振るわないチームというのは、練習や試合時の悪い習慣が染みついているものです。そういった悪い習慣を取り除くのには大変な労力と困難が生じます。3番では、”チームを変革させるための大変な労力と困難”を振り返る場面で「いばらの道」が使用されているのです。

“苦難の多い人生”を表す場合

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次に、「“苦難の多い人生”を表す場合」について、例文と一緒に見ていきましょう。

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1.田中さんの生涯は、子ども時代に戦争を経験し、大人になってからは3度も大災害に巻き込まれた、まさにいばらの道だった。
2.最貧国に生まれた子供の人生はまさにいばらの道だ。大人になるまでの死亡率が高く、戦争も終わらない。

1番の例文では、田中さんの人生について、”戦争や3度の災害に巻き込まれ、苦難の多い人生だった”ことを表しています。このように、ある人の人生を振り返った時に「いばらの道」を使用することは多いです。

2番の例文では、最貧国に生まれた子供について、”これからの人生で大人になるまでに死ぬ確率が高く、戦争も絶えない”という困難が待ち受けていることを「いばらの道」を用いて表しています。1番の例文のようにこれまでの人生を振り返る場合にも、2番の例文のように今後の人生の展望について語る場合にも、「いばらの道」は使用できますね。

「いばらの道」の類義語は?

「いばらの道」の類義語にはどのようなものがあるでしょうか。ここでは、類義語の「多難」「地獄」「針の山」の3つの言葉について紹介します。文字を見ただけで苦しみが伝わってくる言葉ですね…。

「多難」災難や困難が多いこと

多難」は「災難や困難が多いこと」という意味の言葉です。”災い”、”困い”と、まさに文字通りの言葉ですね。「いばらの道」は、災難や困難を「いばら」に例えていますが、たとえを使わず、ストレートに表現した言葉と言えるでしょう。

また、「前途多難」という表現があります。こちらは「目的達成までの障害が多いこと」「将来に多くの困難が想定されること」という意味の四字熟語です。「いばらの道」と似たニュアンスで使用されるので、一緒に覚えておきましょう。

「地獄」非常な苦しみをもたらす状況

地獄」は皆さんご存じの通り、この世で悪いことをした人間が死語に行くとされる場所のことですが、「非常な苦しみをもたらす状態・状況のたとえ」としても使用されます。例えば、「この先の人生は地獄だ」といった場合は、「この先の人生はいばらの道だ」と似た意味になりますね。ただ、「地獄」の方が「いばらの道」よりも、絶望の度合が強いと言えるでしょう。

「針の山」苦痛を与えられる場所

針の山」は、先ほど紹介した「地獄」にある、一面に針が植えてある、罪人たちを苦しめる山だとされています。そこから転じて、「大きな苦痛を与えられる場所」のことを「針の山」と言うようになりました。たとえば、子どもにとって虫歯の治療で行く歯医者は、「針の山」かもしれませんね。

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「いばらの道」の英訳は?

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「いばらの道」の英語表現について解説します。英語でも日本語と同様に”トゲのある植物”が、困難や苦難のたとえとして使われるのでしょうか。例文と一緒に確認していきましょう。

「rocky road」岩だらけの道

rocky road」は、本来は「岩だらけの道」という意味の英語表現で、そこから転じて「苦難の道」という意味でも使用されるようになりました。「苦難の道」とは、まさに「いばらの道」のことですよね。日本語はトゲのある植物で苦難を表しましたが、英語は岩で苦難を表現します。例文を見ていきましょう。

1.She has travelled a rocky road. 彼女はいばらの道を歩んできた。
2.I have a rocky road ahead. 私の前にあるのはいばらの道だ。

トゲだらけの状況や人生。それが「いばらの道」

今回は「いばらの道」について解説しました。「いばらの道」は、「困難な状況」または「苦難の多い人生」という意味で、例えとして用いられる慣用句です。この「いばら」はバラなどのトゲのある低い植物のことをいい、困難や苦難をトゲのある植物に例えています。「いばらの道」は、トゲの生えた植物だらけの状況や人生、つまり、困難や苦難だらけの状況や人生というわけですね。

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国語言葉の意味

「いばらの道」ってどんな道?困難?苦難?意味や類義語・英訳を院卒日本語教師がわかりやすく解説

今回は「いばらの道」っていう言葉について見ていきます。聞いたり読んだりしたことはあるけど正確な意味は…っていう人も多いかもしれませんね。

「いばらの道」はずばり「困難な状況」「苦難の多い人生」という意味です。ただ、「いばら」って何か気になった人間もいるんじゃねぇか。

今回はその「いばら」の意味も含めて、「いばらの道」を類義語や英訳と一緒に、大学院卒の日本語教師・むかいひろきに解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「いばらの道」の意味・語源は?

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「いばらの道」は、日常生活の中でたまに聞く言葉でしょう。しかし「どんな意味?」と聞かれると答えづらいかもしれません。まずは、そのような「いばらの道」の意味や語源を、国語辞典を参考にしつつ見ていきましょう。

困難な状況・苦難の多い人生

「いばらの道」は、国語辞典では次のような意味が掲載されています。

茨の生えている道。困難な状況や苦難の多い人生にたとえる。いばらみち。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「いばら‐の‐みち【茨の道】」

「いばらの道」は、「困難な状況」または「苦難の多い人生」という意味で、例えとして用いられる慣用句です。ある人の将来について困難が予想される場合や、ある人の人生を振り返った時に苦難が多かった場合などで用いられます。漢字で「茨の道」と表記することも多いです。この「茨(いばら)」は茨城県(いばらけん)の「茨」と同じ字ですね。

「いばら」って何?

ここで気になった方もいらっしゃるかもしれません。「いばら」とは何だろうかと。「いばら」はバラやカラタチといった、トゲのある背の低い植物の名前の総称です。トゲがある植物がたくさん生えている道は、当然歩くのは困難ですよね。そのようなトゲがある植物を困難や苦難にたとえ、生まれた慣用句が「いばらの道」なのです。

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