この記事では「伏線」について解説する。

端的に言えば伏線の意味は「後の展開を前もってほのめかすこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本文学科出身で事務職を経て現在はライター業のかたわら校正もしているjasminを呼んです。一緒に「伏線」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/jasmin

日本文学を専攻し事務職を経て現在は校正者兼ライター。正しく美しい日本語を追求している。日本のドラマよりは海外のドラマが好きなほうだが、難解な作品よりは分かりやすい作品が好きだという。しかしありがちな設定では早々とオチが分かってしまってつまらなくなってしまうとか。今回は「伏線」について説明していく。

「伏線」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「伏線」の意味や使い方などを見ていきましょう。

「伏線」の意味は?

「伏線」には、次のような意味があります。

1.小説や戯曲などで、のちの展開に備えてそれに関連した事柄を前のほうでほのめかしておくこと。また、その事柄。「主人公の行動にーを敷く」
2.あとのことがうまくゆくように、前もってそれとなく用意しておくこと。また、そのもの。「断られたときのためにーを張る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ふく-せん」

「伏線」(ふくせん)は小説や漫画、映画やドラマなどで用いられる手法でありその後の展開に関連する物や事柄を見せておいてストーリーを進行させていくことで「伏線を敷く」という言い方をよく聞きますね。一般的な意味はこちらです。もうひとつの意味は後に起こりそうなことを予想して、前もって対策を立てておくことになります。前者の意味とは対照的にあまり目立ちませんが、後に起こることに対してという部分は共通していますね。ここで気になるのが「伏線を張る」と「伏線を敷く」の違いですが、「張る」は小説や戯曲の展開をほのめかすときに使い、「敷く」はこれから起こる事柄に対しての備えをする場合に使います。

「伏線」の使い方・例文

「伏線」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「伏線」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.この人気ドラマが張った伏線に対して公式サイトには視聴者からの投稿が殺到し、ツイッターの検索トレンド上位にランクインした。
2.  商社に就職して1年目に、仕事で起こる予想できる事態には事前に対策を立て伏線を敷いておくようにと先輩社員から教えられたことが今の土台となっている。
3.私の好きなミステリー小説のシリーズは伏線の張りかたが絶妙で、いつも予想を超えた展開のため最近出版された最新作を読んでも犯人の手がかりが見つからないのは読み方が悪いのだろうか。

例文1と3は映画と小説のストーリー展開としての伏線に対するリアクションの文で、2は起こるべく事態に対策を立てておくという意味で使われている文章です。前にも述べましたが、どちらも後で起こることに対してのことで未来のことに関連する事柄を見せる、もう一方は起こるかもしれない事柄に先手を打つといった違うアプローチをしています。 前者は小説などの技法、後者は現実社会での危機管理と同じ語句でも違う意味になりますので、混同して意味を間違えないようにすることはもちろんですが、「伏線」の意味だけではなく「敷く」と「張る」の使い分けにも注意しましょう。

「伏線」の類義語は?違いは?

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2つの意味を持つ「伏線」の類義語としては何があるでしょうか、似た意味の言葉を見ていきましょう。

「示唆」

「示唆」(しさ)とはそれとなく知らせること、またはほのめかすことをいいます。ある事柄について分かりやすく伝えるのではなく、匂わせるようにさり気なく知らせるなどあえてはっきりと伝えないところが共通していますね。「布石」という言葉も似た意味を持っていると思われがちですが、こちらは将来のための備えという意味なのでストーリー展開の「伏線」という意味よりはもしものときのために伏線を張っておくほうの意味と同じということでしょう。

「ほのめかす」

それとなく態度や言葉に表わして示すことや匂わせることと、もてはやすという意味がありますがこの場合は前者のことをいいます。先の「示唆」でも述べましたが、分かりやすく伝えるというよりはあえて核心をぼかして真実を伝えるというニュアンスがありますね。「彼は著作権を売り渡すことをほのめかしていた」というような使い方をします。はっきりと真実を聞いたわけではないが、それらしきことを言ってということでしょうか。

\次のページで「「伏線」の対義語は?」を解説!/

「伏線」の対義語は?

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それとなく相手に知らせることが「伏線」ですが、反対の意味を持つことばは何になるのでしょうか、見ていきましょう。

「誤解」

「誤解」は広く知られているように間違って理解することや思いちがい、考えちがいをすることです。「伏線」というのは最終的に真実を見せるということですが、「誤解」は間違えて解釈をすることや勘違いをするという意味になりますが、ここでは後に起こる事柄をそれとなく伝えたのに「誤解」されたので「伏線」を敷いたのに成立しなかったということを表わして対照的な意味をなし、具体的な使い方としては「真実をそれとなく伝えたのに、なぜか彼女に誤解をされてしまっている状態のようだ」になります。

「場当たり」

演劇や集会などでその場の雰囲気に合わせて即興でせりふや演説をすること、または物事に計画性がなく先のことを考えないで思いつきで行動したりすることを言います。「伏線を敷く」ように関連する事柄を匂わせるなどして細かくストーリーを練るのではなく思いつきや勢いで展開させてしまったり、後で起こることも予測せずにその場限りのことを繰り返していることを指すのでしょうか。よく「場当たり的な展開」というコメントで使われていますね。

「伏線」の英訳は?

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類義語と対義語の次は英訳ですが、「伏線」を英訳するとどのようになるのでしょうか。

「foreshadowing 」

「伏線」の英訳は「foreshadowing 」であらかじめ準備するという意味を持ち、この語は使われていない例文ですが「彼はそう言って断られた時のために伏線を張った」が「He mentiond it to protect himself in case she should turn him down」となります。

\次のページで「「伏線」を使いこなそう」を解説!/

「伏線」を使いこなそう

この記事では「伏線」の意味・使い方・類語などを説明しました。よく「伏線回収」と言われていますが、これは映画や小説、漫画などの劇中で敷かれた伏線(手がかり)が明かされたときをあらわす言葉です。前もってストーリー上で匂わせた事柄がその後の展開として成り立ったときに使いますが、名作と呼ばれる文学や映像作品の伏線の敷き方はなぜかストーリーに引き込まれてしまいますね。原作者や脚本家はすごいなとあらためて思います。何度も言いますが「伏線を敷く」は小説や映画などの一つの手法ですので正しい意味を知ってから使うようにしましょう。

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国語言葉の意味

「伏線」の意味や使い方は?例文や類語を文学部卒の校正者兼ライターがわかりやすく解説!

この記事では「伏線」について解説する。

端的に言えば伏線の意味は「後の展開を前もってほのめかすこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本文学科出身で事務職を経て現在はライター業のかたわら校正もしているjasminを呼んです。一緒に「伏線」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/jasmin

日本文学を専攻し事務職を経て現在は校正者兼ライター。正しく美しい日本語を追求している。日本のドラマよりは海外のドラマが好きなほうだが、難解な作品よりは分かりやすい作品が好きだという。しかしありがちな設定では早々とオチが分かってしまってつまらなくなってしまうとか。今回は「伏線」について説明していく。

「伏線」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「伏線」の意味や使い方などを見ていきましょう。

「伏線」の意味は?

「伏線」には、次のような意味があります。

1.小説や戯曲などで、のちの展開に備えてそれに関連した事柄を前のほうでほのめかしておくこと。また、その事柄。「主人公の行動にーを敷く」
2.あとのことがうまくゆくように、前もってそれとなく用意しておくこと。また、そのもの。「断られたときのためにーを張る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ふく-せん」

「伏線」(ふくせん)は小説や漫画、映画やドラマなどで用いられる手法でありその後の展開に関連する物や事柄を見せておいてストーリーを進行させていくことで「伏線を敷く」という言い方をよく聞きますね。一般的な意味はこちらです。もうひとつの意味は後に起こりそうなことを予想して、前もって対策を立てておくことになります。前者の意味とは対照的にあまり目立ちませんが、後に起こることに対してという部分は共通していますね。ここで気になるのが「伏線を張る」と「伏線を敷く」の違いですが、「張る」は小説や戯曲の展開をほのめかすときに使い、「敷く」はこれから起こる事柄に対しての備えをする場合に使います。

「伏線」の使い方・例文

「伏線」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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