この記事では「感慨深い」について解説する。

「感慨深い」の意味は?と聞かれて、きっちり答えられる奴は案外少ない。分かった気になりやすい、勘違いされやすい言葉のひとつです。

元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「感慨深い」の意味や語源、言い換えなどを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「感慨深い」ってどういう意味?

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「感慨深い」の意味は以下の通りです。

しみじみと感じ入るものがある、感じ入っている、という意味で用いられる表現。「感慨」の語そのものが「心に深く感じる」というような意味合いであり、「感慨深い」という表現は感慨を充分に感じ取っているようなさまを表明する言い方として用いられる。

~中略~

喜び・達成感・充実感・誇らしさなどの感情があったり、人情に助けられたり奇縁に恵まれたりあるいは世間の逆風にさらされたりといった幾多の記憶が思い出されていたりと、種類も程度も容易には表現しがたいものが胸裡に去来している、そのような心境が「感慨深い」と表現されている

出典:Weblio辞書 「感慨深い 意味」

「感慨深い」という言葉自体は知らなくとも、「感慨深い」という状態になった経験は、多くの人にあることでしょう。強い感情を示す言葉ではありますが、衝動的で勢いが良いというニュアンスはありません。心の深い所まで、静かにかつ確実に、大きい感情が沁みわたっていくようなイメージを持つ言葉です。

また、単純な嬉しさというよりも、いろいろな感情を覚えた上で喜びや充足感に繋がるような、人間の心理の複雑さを表現した言葉でもあります。

「感慨深いもの」ってどういう意味の言い回し?

「感慨深い」は頻繁に「もの」とセットになり、「感慨深いもの」という名詞となって使われます。これは形容詞である「感慨深い」に「もの」を付けることにより、名詞としているわけです。「感慨深いもの」のさらに後には、「感じる」「ある」「覚える」などが続きます。いずれも感情を表現する単語に続く言葉であり、「感慨深い」もこの例に漏れないというわけです。

\次のページで「「感慨深い」の使い方」を解説!/

「感慨深い」の使い方

「感慨深い」の使い方は以下の通りです。

1.明日はもう娘の結婚式だと思うと、「感慨深い」。
2.いざ卒業となると「感慨深い」ものがある。
3.長年取り組んだプロジェクトが成功して、さぞ「感慨深い」と思います。

いずれの例も、「いろいろと深く思うところがある」というニュアンスを持っていることがわかります。逆に言うと、どんな文脈であっても「しみじみと深く感じています」という意味合いが自動的に組み込まれてしまうということです。そのため、他愛ないことに対して「感慨深い」を使用していると、「大げさだ」「過剰な表現だ」と取られることもあるかもしれません。使いどころには注意してください。

「感慨深い」の勘違いしやすいポイントって?

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「感慨深い」は勘違いや誤解を抱かれることも多い言葉です。そして、言葉に対する勘違いは、一度発生してしまうと訂正は困難となります。なぜなら、「自分は間違っているかもしれない」と顧みる機会が無いからです。ぜひ本記事を参考にして、やりがちな失敗を押さえ、正しい意味を覚えてください。

その1 「感慨深い」は悪い意味では使わない

「感慨深い」は「心にしみじみと感じ入る」という意味ですが、この抱いている感情は、主に充足感や達成感や喜び、さらにそこに至るまでの苦労や困難について思い返すような、一言では表せないような深い感情です。つまり、部分的に悲しみや怒りに思いは馳せているものの、感情の行く末としては充足感に辿り着くことになります。

ところが「感慨深い」に対して、単に「強い感情を抱いているという意味だ」と思い込んでしまうと、悲しみや怒りに対して「感慨深い」を使用してしまいかねません。基本的に負の感情に向かって「感慨深い」は使用しないという点を押さえておきましょう。

その2 「感慨深い」と「趣深い」は違う意味

「趣深い」という言葉を知っているでしょうか。端的に言うと、情緒がある、趣が感じられるという意味ですが、「感慨深い」と非常によく混同されます。共通点は「しみじみと感じる」というニュアンスが双方入っている点です。これによって両者はほぼ同じ意味だと思われているケースがしばしば見受けられます。

しかし、「感慨深い」は、「自分のこれまで」に対して「さまざまなことを踏まえた上での満足感」を覚えることです。「趣深い」は、綺麗な景色など「趣を感じさせるもの」に対して「情緒のみ」を深く感じることになります。感情を抱く対象も、抱く感情の種類も違うため、注意してください。

\次のページで「聞き間違いに注意!「考え深い」とは無関係?」を解説!/

聞き間違いに注意!「考え深い」とは無関係?

「感慨深い」は「かんがいぶかい」と読みますが、たびたび「かんがえぶかい」と聞き間違えられ、「考え深い」と勘違いされることがあります。

内面的なことに対して深く思っているという意味では、共通している部分もなくはありませんが、基本的には遠い意味の言葉です。「感慨深い」は思いが深いことを示していますが、「考え深い」は感情ではなく、頭での思考が深いことを指します。また、「感慨深い」は一時の感情を示しますが、「考え深い」はどちらかというと性格の話であり、一時的なものではなく恒常的なものです。

「感慨深い」の類義語は?

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「感慨深い」の類義語は以下の通りです。

心に染み入る/静かで深い感動を覚える/さまざまなことが思い起こされる/余韻を感じる

上記を見ると明らかですが、「感慨深い」を言い換えようとした場合、単語での置き換えは困難です。「感慨深い」は示している意味がとても複雑で繊細なため、簡潔な表現ではどうしてもニュアンスの過不足が生じてしまいがちになります。逆に言うと、通常であれば多くの言葉を使って説明しなければならないような、心理状態を、「感慨深い」という単語は一言で納めてしまうことができるのです。

\次のページで「「感慨深い」を英語に置き換えると?」を解説!/

「感慨深い」を英語に置き換えると?

英語で「感慨深い」を示す言葉は、以下の通りです。

emotional/deeply emotive/moving/Impressive

「え?これ全部感慨深いっていう意味なの?」と思われるかもしれませんが、厳密には違います。英語には「感慨深い」にぴったりと当てはまる言葉は存在しません。そのため、あえて言うならばどう表現するか?ということになるのです。

「emotional」は「感情に訴えかける」という意味を持っており、ここに「deeply」が続くことで、「深く」というニュアンスが付け加えられます。「moving」も同様の意味です。「move」は「動く」という意味ですが、ものだけでなく心も動く対象であるため、転じて「感動する」という意味になります。「impressive」は「印象的である」という意味です。「私にとって心に残るできごとです」、と表現することで、「感慨深い」に近しい意味になっています。

「感慨深い」と表現する方法

「感慨深い」は、日本語でも英語でも、置き換えが非常に難しい言葉です。「感慨深い」をぴったり言い表す言い換えは、存在しないと言っても良いかもしれません。どのような置き換えであっても、どこかでニュアンスのズレは生じてしまいます。「感慨深い」は唯一無二の単語であると同時に、口では長々と説明できないような、人間に欠かせない繊細な充足感を示してくれる、重要な言葉なのです。

いつかどこかで「感慨深い」状態になったら、ぜひ「感慨深い」という言葉を思い出してください。その時にきっと、「感慨深い」としか表しようのない感情があることが体感できるでしょう。

" /> 「感慨深い」の内容を人に説明できる?意味・特徴・類義語を言葉大好きライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「感慨深い」の内容を人に説明できる?意味・特徴・類義語を言葉大好きライターがわかりやすく解説!

この記事では「感慨深い」について解説する。

「感慨深い」の意味は?と聞かれて、きっちり答えられる奴は案外少ない。分かった気になりやすい、勘違いされやすい言葉のひとつです。

元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「感慨深い」の意味や語源、言い換えなどを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「感慨深い」ってどういう意味?

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「感慨深い」の意味は以下の通りです。

しみじみと感じ入るものがある、感じ入っている、という意味で用いられる表現。「感慨」の語そのものが「心に深く感じる」というような意味合いであり、「感慨深い」という表現は感慨を充分に感じ取っているようなさまを表明する言い方として用いられる。

~中略~

喜び・達成感・充実感・誇らしさなどの感情があったり、人情に助けられたり奇縁に恵まれたりあるいは世間の逆風にさらされたりといった幾多の記憶が思い出されていたりと、種類も程度も容易には表現しがたいものが胸裡に去来している、そのような心境が「感慨深い」と表現されている

出典:Weblio辞書 「感慨深い 意味」

「感慨深い」という言葉自体は知らなくとも、「感慨深い」という状態になった経験は、多くの人にあることでしょう。強い感情を示す言葉ではありますが、衝動的で勢いが良いというニュアンスはありません。心の深い所まで、静かにかつ確実に、大きい感情が沁みわたっていくようなイメージを持つ言葉です。

また、単純な嬉しさというよりも、いろいろな感情を覚えた上で喜びや充足感に繋がるような、人間の心理の複雑さを表現した言葉でもあります。

「感慨深いもの」ってどういう意味の言い回し?

「感慨深い」は頻繁に「もの」とセットになり、「感慨深いもの」という名詞となって使われます。これは形容詞である「感慨深い」に「もの」を付けることにより、名詞としているわけです。「感慨深いもの」のさらに後には、「感じる」「ある」「覚える」などが続きます。いずれも感情を表現する単語に続く言葉であり、「感慨深い」もこの例に漏れないというわけです。

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