この記事では「怪我の功名」について解説する。

端的に言えば怪我の功名の意味は「過失でやったことが意外に良い結果になること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「怪我の功名」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

怪我と言えば、年齢のせいかちょっとした怪我をしたときの治りが遅いのが気になる今日この頃だとか。功名に結びつくことはそうそうないとも語るヤザワナオコに、怪我の功名について解説してもらう。

「怪我の功名」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「怪我の功名(けがのこうみょう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「怪我の功名」の意味は?

「怪我の功名」には、次のような意味があります。

過失と思われたこと、なにげなしにやった事が、意外によい結果になること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「過失」とあるように、うっかりやってしまった間違いが予想外に良い結果を招いたことを意味しています。ポイントは2つあり、「過失による悪いことが良い方向に進展した」ことと、「それが予想外であること」が必要。ですから、頑張って成し遂げた事柄や、想定どおりの良い結果について使うのは不適切です。

また、不思議な出来事だからといって「巧妙」と書いたり、良いことが起こったからといって「光明」と書いてしまうと誤りなので注意しましょう。

「怪我の功名」の語源は?

次に「怪我の功名」の語源を確認しておきましょう。

「功名」は手柄を立てて名を挙げることを指し、「功名を争う」といえば手柄を奪い合うことを示し、「功名心が強い」というと成功して有名になりたい様子を表します。昔は主に戦場で手柄を立てることを「高名(こうみょう)」と言い、これが転じて今の「功名」という字を使うように。現在では、「高名」は(こうめい)の読み方で、高い評価を受けて有名になった人のことを言う場合がほとんどなので気をつけましょう。ある世界で著名な人との初対面の挨拶で「ご高名はかねがねお聞きしております」のように使いますよ。

「怪我」という、できれば誰しもが避けたいと思うような事態から、手柄を立てて名を挙げることにつながるなどということはあまり起こりそうもなく、意外性が大きいのではないでしょうか。ここから、「怪我の功名」は「過失から意外にも良い結果が生まれる」という意味を表しています。

\次のページで「「怪我の功名」の使い方・例文」を解説!/

「怪我の功名」の使い方・例文

「怪我の功名」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・大統領選挙を巡る意見の対立でけんかをしてしまったが、議論を通して一生の友と思える仲間が見つかったのは怪我の功名かもしれない。

・親の説教が長くて電車に乗り遅れたが、おかげで脱線事故に遭わなくて済んだ。怪我の功名とはこのことだな。

1つ目の例のように、不注意による出来事が想定外に良い結果を生んだ場合に使う「怪我の功名」。

ここで言う良い結果とは平常時以上の大きな幸運には限定されず、2つ目の例のように、うっかりした出来事のおかげで「悪い結果を避けられた」というときにも使える言葉です。

「怪我の功名」の類義語は?違いは?

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「怪我の功名」の類義語にはどんなものがあるでしょうか。「怪我勝ち」「過ちの功名」は解説不要かと思いますので、ここではその他の類義語をご紹介します。

「災い転じて福となす」

読み方は「わざわいてんじてふくとなす」。天災などの不幸な災いに襲われたとき、それをうまく利用して自分の有利な方に導いていく様を表わしています。

思わぬ不幸が良い結果に転じる点で「怪我の功名」と似ていますが、違いは2つ。怪我の功名と異なり、悪いことが過失によるものというよりは降って湧いた災難の場合に用いられること。また、こちらは偶然というよりも、自らの努力でよい結果に転じさせるニュアンスが強い点といえるでしょう。その点から、不幸に見舞われた人を励ます際に使われることもある言葉です。「雨降って地固まる」も似た意味で用いられますよ。

\次のページで「「棚から牡丹餅」」を解説!/

・会社を首になったのでしかたなく起業したら大成功してしまった。災い転じて福となすとはこのことだね。

・女性同士の揉め事に巻き込まれるとは厄介だったね。でも災い転じて福となすというから、揉めた当人たちの信頼を勝ち取るチャンスかもしれないよ。

・急な停電で一時はどうなることかと思ったが、近隣住民が助け合って結束が強まった。雨降って地固まるを地でいく展開だったよ。

「棚から牡丹餅」

「たなからぼたもち」と読み「思いがけない幸運」を表します。「棚ぼた」と絡した言い方で聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。昔は今以上に甘いものが貴重でしたから、思いがけない場所に牡丹餅を発見したときの嬉しさは現代人の想像以上かもしれませんね。同様に「思いがけない幸運」を表現する場合は、「偶然の産物」という言い方もできますよ。

・努力もせずに棚から牡丹餅を期待するようでは成長は望めない。

・試験勉強はほとんどしなかったが、棚ぼたなことに登校中に電車で読んだところがたまたま出題されたよ。

・親しくしている町内会長が、まさか取引先の顧問だったとは。偶然の産物をフル活用し、なんとか仕事を受注したいものだ。

「人間万事塞翁が馬」

「にんげんばんじさいおうがうま』と読みますが、「人間」は音読みで「じんかん」と読むことも。中国の故事に基づく言葉で、この「人間」はいわゆる「人」ではなく「世の中」「世間」といった意味合いです。

ある人が、買っていた馬が逃げてしまい落胆していたら、その馬が別の優れた馬を連れて戻ってきた。喜んでいたら、息子が優れた馬から落馬して怪我をした。災難だと思ったが、怪我のおかげで兵役を免れることができた。

簡単に言うと、このようなストーリーがもとになっています。「怪我の功名」が意味する「悪いことがいいことに転じる」とは少々異なりますが、「世の中は何が起きるかわからない」という点は似ていますね。その意味ではほかに「禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし)」もあります。より合わせた縄の表と裏のように、不幸と幸福も交互にやってくるという意味です。なお「人間万事塞翁が馬」は、「様々なことが起きるのが常なのだから、いちいち一喜一憂しても仕方がない」と捉え、人生訓らしく語られることもありますよ。

「怪我の功名」の対義語は?

今度は「怪我の功名」と反対の意味を表す言葉を見てみましょう。

「不幸中の幸い」

不幸な出来事の中に、少しは救いになるような幸運も含まれている様子を表します。交通事故に遭って車は大破したけれど、自身にけがはなかったなど、悪いことは起こっても最悪の事態は免れたというケースで用いるこの言葉。

「怪我の功名」と似ているように思うかもしれませんが、過失による間違いだったものが、想定外の良いことに「完全に転じた」というニュアンスはありません。

\次のページで「「藪をつついて蛇を出す」」を解説!/

「藪をつついて蛇を出す」

「やぶをつついてへびをだす」と読みます。

必要もないのに藪をつついた結果、蛇が出てきてしまったら、驚きますし何かしらの対処も必要で面倒ですね。このように「余計なことをして物事を悪い方向に進めてしまうこと」を表す言葉です。

 

「怪我の功名」の英訳は?

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英語で「怪我の功名」の意味を表すにはどうしたらよいでしょうか。以下の表現をお勧めします。

「comes out smelling like a rose」

直訳すれば「バラのような香りが漂う」となります。ゴミの山に落ちてしまった人が無傷、無臭で出てこられたことから使われるようになったとか。そこから、「うまく切り抜ける」「困難な状況から脱する」様子を表す際に使われます。

「lucky break」

luckyは日本語でも使われるとおり「幸運な、運の良い」という意味。breakは「壊れる」のイメージが強いかもしれませんが、「突然~になる」の意味もあります。この2つが合わさって「思わぬ幸運」を表すのがlucky breakです。

「怪我の功名」を使いこなそう

この記事では「怪我の功名」の意味・使い方・類語などを説明しました。不幸なことが偶然幸運に転じればそれに越したことはありませんが、怪我の功名は狙って訪れるものではありません。私自身は、災い転じて福となすという言葉のように、自らの行動で幸福を招き寄せるほうが性に合っていると感じました。

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国語言葉の意味

【慣用句】「怪我の功名」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「怪我の功名」について解説する。

端的に言えば怪我の功名の意味は「過失でやったことが意外に良い結果になること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「怪我の功名」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

怪我と言えば、年齢のせいかちょっとした怪我をしたときの治りが遅いのが気になる今日この頃だとか。功名に結びつくことはそうそうないとも語るヤザワナオコに、怪我の功名について解説してもらう。

「怪我の功名」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「怪我の功名(けがのこうみょう)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「怪我の功名」の意味は?

「怪我の功名」には、次のような意味があります。

過失と思われたこと、なにげなしにやった事が、意外によい結果になること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「過失」とあるように、うっかりやってしまった間違いが予想外に良い結果を招いたことを意味しています。ポイントは2つあり、「過失による悪いことが良い方向に進展した」ことと、「それが予想外であること」が必要。ですから、頑張って成し遂げた事柄や、想定どおりの良い結果について使うのは不適切です。

また、不思議な出来事だからといって「巧妙」と書いたり、良いことが起こったからといって「光明」と書いてしまうと誤りなので注意しましょう。

「怪我の功名」の語源は?

次に「怪我の功名」の語源を確認しておきましょう。

「功名」は手柄を立てて名を挙げることを指し、「功名を争う」といえば手柄を奪い合うことを示し、「功名心が強い」というと成功して有名になりたい様子を表します。昔は主に戦場で手柄を立てることを「高名(こうみょう)」と言い、これが転じて今の「功名」という字を使うように。現在では、「高名」は(こうめい)の読み方で、高い評価を受けて有名になった人のことを言う場合がほとんどなので気をつけましょう。ある世界で著名な人との初対面の挨拶で「ご高名はかねがねお聞きしております」のように使いますよ。

「怪我」という、できれば誰しもが避けたいと思うような事態から、手柄を立てて名を挙げることにつながるなどということはあまり起こりそうもなく、意外性が大きいのではないでしょうか。ここから、「怪我の功名」は「過失から意外にも良い結果が生まれる」という意味を表しています。

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