今回は「テルミット反応」について解説していきます。

テルミット反応は、アルミニウムと酸化鉄(Ⅲ)を反応させることで、融解した鉄を生じさせる反応です。簡単な操作で反応を進行させることができるため、テルミット反応は様々な場面で役に立っているぞ。今回は、テルミット反応の実験方法、メカニズム、応用例などを化学の視点で詳しく説明していく。ぜひ、この機会に、テルミット反応についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

テルミット反応の実験

Thermit welding.jpg
User:欅 - User:欅が撮影, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

今回の記事は、テルミット反応をテーマとして書きました。聞きなれない方もおられるかと思いますが、無機化学について学ぶと、テルミット反応は必ず目にします。一体、どのような反応なのでしょうか?以下では、テルミット反応のメカニズムや応用例について詳しく説明していきますね

はじめにテルミット反応の実験について紹介します。まず実験の流れを知ることで、テルミット反応の概要をつかむことができると思いますよ。どのような物質を使用するのか、反応の様子はどのようなものなのかといったことに注目して、読み進めてくてくださいね。

実験の準備

実験の準備

image by Study-Z編集部

テルミット反応の実験で使用する試薬は、アルミニウム粉末酸化鉄(Ⅲ)硝酸カリウムの3つです。また、マグネシウムリボンろ紙も用意します。用意する器具は、三脚マッフルです。

まず、アルミニウム粉末と酸化鉄(Ⅲ)を薬さじなどを用いて十分に混合させます。その後、この混合物を、ろ紙を入れたマッフル内に注ぎますよ。さらに、アルミニウム粉末と酸化鉄(Ⅲ)の混合物の上に、硝酸カリウムを偏りなく撒きます。そして、マッフルの直下には、十分な量の砂を置いておきましょう。また、三脚を置く机には、あらかじめ新聞紙を広げておきます。テルミット反応では、高温の反応物が周囲に飛び散ることがあるのです。それによって、周りの物が燃えたり、焦げたりするようなことを防ぐために、砂や新聞紙を置いておくのですね。

着火作業

着火作業

image by Study-Z編集部

それでは、テルミットの実験をはじめましょう。最初に、マグネシウムリボンに火をつけます。そして、火をつけたマグネシウムリボンをアルミニウム粉末と酸化鉄(Ⅲ)の混合物の入ったマッフルに入れますよ。このようにすると、テルミット反応がはじまります

この際、注意すべきことがいくつかありますよ。マグネシムリボンに火をつけると、マグネシウムは強い光を発しますこの強い光によって、目を傷めることがあるので、光を減衰させることができる保護メガネをつけておきましょう

また、マグネシウムリボンをマッフルに入れた瞬間から、非常に激しい反応がはじまりますよ。この際、高温の反応物が飛び散ることがあるので、離れた場所からトングなどでマグネシウムをマッフルに入れるといった工夫が必要になるのです。他に、電気着火といった方法でも構いません。

\次のページで「テルミット反応の進行」を解説!/

テルミット反応の進行

テルミット反応の進行

image by Study-Z編集部

テルミット反応がはじまると、真っ赤な火花を散らしながら、勢いよく反応が進みますよ。そして、鉄が生成され、マッフルの底から流れ出てきます。この鉄は純鉄に近いものであり、単体であると考えることができるのです。

流れ出てきた鉄は冷やされて固まり、鉄塊となりますこの鉄塊に磁石を近づけると、鉄塊と磁石はくっ付くのです。酸化鉄(Ⅲ)は磁石に引き寄せられることはないので、テルミット反応によって、酸化鉄(Ⅲ)から鉄が作り出されたことがわかります。

テルミット反応のメカニズム

ここまで、実験操作を学ぶことを通して、テルミットの反応の全体像を学びました。以下では、テルミット反応がなぜ進行するのかといったメカニズムについて詳細に解説していきます

なぜ、マグネシムによって着火を行うだけで、鉄を溶かしてしまうような反応になるのでしょうか?このような疑問を、化学の視点で考察することで、解明していきますよ。

化学反応式

ここでは、テルミット反応の化学反応式について考えますね。テルミット反応の化学反応式は、Fe2O3+2Al→2Fe+Al2O3となります。Fe2O3は酸化鉄(Ⅲ)Alはアルミニウム粉末のことを表していますよ。また、Feは反応後に流れ出てくる鉄のことですAl2O3は、副生成物のアルミナ(酸化アルミニウム)を表しますよ

この反応では、AlがFe2O3に含まれるまれる酸素原子を奪い取ることで、Feを取り出しています。このような現象が生じるのは、Alが電子を放出し、他の化合物から酸素を奪う還元反応を起こしやすい性質をもつからです。テルミット反応のように、酸素や電子をやりとりする反応のことを、酸化還元反応といいますよ

また、ここで説明したテルミット反応は鉄を還元するものですが、鉄以外の金属酸化物もアルミニウムを用いて還元することができるのです。そして、鉄以外の金属酸化物を還元する反応も、テルミット反応に含める場合もあります。

\次のページで「反応熱」を解説!/

反応熱

テルミット反応について理解する上で、重要になる要素に反応熱の概念があります。テルミット反応の様子を熱化学方程式で表現すると、Fe2O3+2Al=2Fe+Al2O3+851kJとなりますよ。これは、1molのFe2O3が反応すると、851kJの熱エネルギーが放出されることを意味しますこの熱エネルギーによって、生じたFeが溶けるのです

また、発生した熱エネルギーによって、Fe2O3+2Al→2Fe+Al2O3の化学変化は促進されます。つまり、熱エネルギーが次々と出てくることで、化学変化もドミノ倒しのように進むのです。これが、マグネシウムの点火以外に外部からエネルギーを供給することなく、テルミット反応が進行する理由なのですね。

テルミット反応の応用例

最後にテルミット反応の応用例について紹介します。テルミット反応は、マグネシウムの着火のみで鉄を溶かすことができるという便利さから、様々な分野で応用されていますよ。

また、副生成物が酸化アルミニウム(アルミナ)だけであることから、環境汚染などの問題も引き起こしにくいというメリットもあります。このような点を頭に入れ、テルミット反応の特徴を活かした事例をみていきましょう。

レールの溶接

image by iStockphoto

鉄道車両を走らせるためには、車輪を乗せるレールが必要です。レールには継ぎ目があります。電車が走行時に「ガタンガタン」という音が聞こえてくる理由は、レールの継ぎ目にありますよ。ですが、近年、電車の乗り心地を向上させるために、レールの継ぎ目を溶接することが増えてきています

レール同士を溶接するときに、テルミット反応で生じた鉄が使われるのですアルミニウム粉末と酸化鉄(Ⅲ)をマグネシムで着火するだけで良いので、山間部などの機材を持ち込みにくい場所であっても、簡単に溶接を行うことができますよ

\次のページで「テルミット反応について理解を深めよう!」を解説!/

テルミット反応について理解を深めよう!

テルミット反応は、アルミニウムと酸化鉄(Ⅲ)の単純な酸化還元反応です。準備すべき物質は少ない種類で済み、反応物と生成物の毒性は少ないというメリットをもつことから、様々な場面で活用されている反応ですよ。

テルミット反応の様子は迫力があり、科学実験教室などでも頻繁に取り上げられる定番の実験です。雑学として知っておいても、損はありません。ぜひ、この機会にテルミット反応について理解を深めてみてくださいね。

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化学原子・元素無機物質理科

3分で簡単テルミット反応!どのように役立つのか?理系学生ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は「テルミット反応」について解説していきます。

テルミット反応は、アルミニウムと酸化鉄(Ⅲ)を反応させることで、融解した鉄を生じさせる反応です。簡単な操作で反応を進行させることができるため、テルミット反応は様々な場面で役に立っているぞ。今回は、テルミット反応の実験方法、メカニズム、応用例などを化学の視点で詳しく説明していく。ぜひ、この機会に、テルミット反応についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

テルミット反応の実験

今回の記事は、テルミット反応をテーマとして書きました。聞きなれない方もおられるかと思いますが、無機化学について学ぶと、テルミット反応は必ず目にします。一体、どのような反応なのでしょうか?以下では、テルミット反応のメカニズムや応用例について詳しく説明していきますね

はじめにテルミット反応の実験について紹介します。まず実験の流れを知ることで、テルミット反応の概要をつかむことができると思いますよ。どのような物質を使用するのか、反応の様子はどのようなものなのかといったことに注目して、読み進めてくてくださいね。

実験の準備

実験の準備

image by Study-Z編集部

テルミット反応の実験で使用する試薬は、アルミニウム粉末酸化鉄(Ⅲ)硝酸カリウムの3つです。また、マグネシウムリボンろ紙も用意します。用意する器具は、三脚マッフルです。

まず、アルミニウム粉末と酸化鉄(Ⅲ)を薬さじなどを用いて十分に混合させます。その後、この混合物を、ろ紙を入れたマッフル内に注ぎますよ。さらに、アルミニウム粉末と酸化鉄(Ⅲ)の混合物の上に、硝酸カリウムを偏りなく撒きます。そして、マッフルの直下には、十分な量の砂を置いておきましょう。また、三脚を置く机には、あらかじめ新聞紙を広げておきます。テルミット反応では、高温の反応物が周囲に飛び散ることがあるのです。それによって、周りの物が燃えたり、焦げたりするようなことを防ぐために、砂や新聞紙を置いておくのですね。

着火作業

着火作業

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それでは、テルミットの実験をはじめましょう。最初に、マグネシウムリボンに火をつけます。そして、火をつけたマグネシウムリボンをアルミニウム粉末と酸化鉄(Ⅲ)の混合物の入ったマッフルに入れますよ。このようにすると、テルミット反応がはじまります

この際、注意すべきことがいくつかありますよ。マグネシムリボンに火をつけると、マグネシウムは強い光を発しますこの強い光によって、目を傷めることがあるので、光を減衰させることができる保護メガネをつけておきましょう

また、マグネシウムリボンをマッフルに入れた瞬間から、非常に激しい反応がはじまりますよ。この際、高温の反応物が飛び散ることがあるので、離れた場所からトングなどでマグネシウムをマッフルに入れるといった工夫が必要になるのです。他に、電気着火といった方法でも構いません。

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