今回は「暗礁に乗り上げる」という言葉について見ていきます。交渉などが上手くいかなくなった時に使われる言葉…と何となくイメージしているが、正確な意味は知らないっていう人が多いんじゃないか。

この「暗礁に乗り上げる」は、簡潔に言えば「障害によって進行が妨げられる」という意味です。

今回は、その「暗礁に乗り上げる」の意味や類義語・対義語などを、大学院卒の日本語教師・むかいひろきに解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「暗礁に乗り上げる」の意味や使い方は?

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誰もが聞いたことがあるであろう「暗礁に乗り上げる(あんしょうにのりあげる)」という言葉。しかし、正確な意味を答えられる人は少ないのではないでしょうか。まずは、「暗礁に乗り上げる」の意味や使い方を見ていきましょう。

「暗礁に乗り上げる」の意味は「障害によって進行が妨げられる」

最初に、「暗礁に乗り上げる」の意味を確認していきましょう。「暗礁に乗り上げる」は、国語辞典では次のような意味が掲載されています。

思わぬ障害にあって、物事の進行が妨げられる。
「捜査がー」

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆暗礁に乗り上・げる」

「暗礁に乗り上げる」は「思わぬ障害によって物事の進行が妨げられる」という意味の慣用句です。交渉や計画が、思わぬトラブルや問題の発生によって途中で進まなくなることを表します

この「暗礁」というのは、海面の下に隠れていて見えない岩のことです。この「暗礁」がしばしば船の座礁事故を引き起こします。思わぬ障害(=暗礁)によって、物事の進行が妨げられる(=船が座礁する)というように、物事の進行のストップを船の事故に例えている言葉ですね。

「暗礁に乗り上げる」の使い方を例文とともに解説!

続いて、「暗礁に乗り上げる」の使い方を具体的に例文を用いて見ていきましょう。「暗礁に乗り上げる」は、事業や計画、交渉や話し合いなど、幅広い出来事に使用することができます。

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1.A国とB国との戦争の停戦交渉は昨日で暗礁に乗り上げてしまった。その結果、今日から再び戦闘が各地で始まった。
2.カエルや貝類のの研究で有名なC教授だが、スポンサーとの交渉が暗礁に乗り上げてしまい、今年は厳しい予算の中で研究を続けることになりそうだ。
3.カニ料理専門店を作るというD氏の計画は、想定外に費用が必要なことが分かり、現在暗礁に乗り上げている

例文1と例文2では、「交渉がまとまらずに進まなくなった」という意味で「暗礁に乗り上げる」が使用されています。交渉の停滞を表現する場合は、辞書にある「思わぬ障害」というニュアンスは薄くなり、ただ問題が発生し交渉が停滞していることを表すことが多いです。

例文3は、「計画が思わぬ事態によって進まなくなった」という意味で「暗礁に乗り上げる」が使用されています。事業や計画が途中でうまくいかなくなった場合に、「暗礁に乗り上げる」が使用されることは多いですね。

注意が必要な点として、「暗礁に乗り上げる」は、物事が完全にストップしたことを必ずしも表すわけではありません。あくまで現段階でストップしていることを表します。「暗礁に乗り上げた」後でも、物事が前に進むことも十分に考えられますね。

「暗礁に乗り上げる」の類義語と対義語は?

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ここでは「暗礁に乗り上げる」の類義語と対義語を確認していきましょう。「暗礁に乗り上げる」の類義語は、少し意味合いが異なりますが「水を差される」です。一方の対義語は「順風満帆」ですね。それぞれ確認していきましょう。

類義語!「水を差される」妨害される

「水を差される」は「邪魔をされる」という意味の慣用表現です。物事が調子よく進行している時に、何らかの妨害があった時に使用されます。例えば、ある政権の運営が順調に進んでいる時に、大臣のスキャンダルが発覚し政権運営に支障をきたした場合…などですね。

「暗礁に乗り上げる」との違いは、「途中で進まなくなる」というニュアンスがあるかないかです。「暗礁に乗り上げる」の場合、進行がその時点でストップしています。一方の「水を差す」は、妨害はありましたが、進行がストップしたという意味はありません

対義語!「順風満帆」物事が順調に運ぶ

「順風満帆」は、「帆に風をいっぱいに受けて船が快調に進むこと」「物事が極めて順調に運ぶこと」という意味の四字熟語です。1番目の意味が元々の意味で、派生して2番目の「物事が極めて順調に運ぶこと」という意味が生まれました。トラブルや問題の発生によって物事の進行がストップしてしまう「暗礁に乗り上げる」とは、まさに対義語だと言えますね。

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「暗礁に乗り上げる」の英語表現は?

次に、「暗礁に乗り上げる」の英語表現を見ていきましょう。「暗礁に乗り上げる」の英語表現は「reach a deadlock」と「hit a snag」です。例文とともに使い方を確認していきましょう。

「reach a deadlock」

「reach a deadlock」は、「(交渉などが)暗礁に乗り上げる、行き詰る」という意味の英語表現です。「deadlock」は「膠着状態」や「行き詰り」を意味する英単語ですね。直訳すると「膠着状態に辿り着く」となります。例文を見てみましょう。

1.Negotiations for a ceasefire between Country A and Country B reached a deadlock. A国とB国の停戦交渉は暗礁に乗り上げた
2.Negotiations for Smith's acquisition of Company B reached a deadlock. スミス氏によるB社の買収交渉は暗礁に乗り上げた

「hit a snag」

「hit a snag」は「(計画・事業などが)暗礁に乗り上げる」という意味の英語表現です。「snag」は「(思いがけぬ)障害、困難」という意味であるため、直訳は「(思いがけぬ)障害や困難にぶつかる」という意味になります。例文を見ていきましょう。

1.Plans for redevelopment of the area in front of Station C hit a snag due to opposition from local residents. C駅前の再開発の計画は地元住民の反対で暗礁に乗り上げた
2.Plans to build a casino in the City A have hit a snag due to financial difficulties. A氏にカジノを作るという計画は、資金難で暗礁に乗り上げている

航海に関連する日本語のその他のことわざ・慣用句

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ここまで解説した「暗礁に乗り上げる」も、その対義語である「順風満帆」も、航海に関連した日本語の表現ですね。実は航海に関連することわざや慣用句はほかにもあります。その一部をご紹介しましょう。

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「待てば海路の日和あり」

「待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり)」は、「焦らずに待っていれば、そのうちにきっと良いことがある」という意味のことわざです。昔の船は帆を使って風の力で動いていました。風待ちの港にいれば、今は出航できなくても、やがて出航に相応しい天候に恵まれる…ということから生まれた言葉ですね。

「大船に乗ったよう」

「大船に乗ったよう」は「信頼できるものに身を任せて、すっかり安心している様子」という意味の慣用句です。「大船」は滅多に転覆する恐れのない大きな船のことを指します。小さな船では強風にあおられた場合に転覆などの可能性がありますが、大きな船ではその心配は少ないですよね。特に昔の船の場合は尚更です。大きな船に乗って身の危険の心配なく安心している様子…から来ている言葉だとされています。

“障害”という岩の上に座礁して…「暗礁に乗り上げる」

今回は「暗礁に乗り上げる」について解説しました。「暗礁に乗り上げる」は「思わぬ障害によって物事の進行が妨げられる」という意味の慣用句です。交渉や計画が、思わぬトラブルや問題の発生によって途中で進まなくなることを表します。この「暗礁」は、海中にある隠れて見えない岩のことで、そこに船が乗り上げて座礁してしまうことがあるのです。つまり、「暗礁に乗り上げる」は、船が座礁して動かなくなることを、障害が発生して物事が進まなくなることに例えている言葉ですね。

ただ、「暗礁に乗り上げる」は物事の進行の完全な停止を意味しません。何かが「暗礁に乗り上げて」しまった場合も、再び動き出せるように努力していくのが大切でしょう。

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国語言葉の意味

暗礁って?どんな状況?「暗礁に乗り上げる」の意味や類義語・対義語を院卒日本語教師がわかりやすく解説

今回は「暗礁に乗り上げる」という言葉について見ていきます。交渉などが上手くいかなくなった時に使われる言葉…と何となくイメージしているが、正確な意味は知らないっていう人が多いんじゃないか。

この「暗礁に乗り上げる」は、簡潔に言えば「障害によって進行が妨げられる」という意味です。

今回は、その「暗礁に乗り上げる」の意味や類義語・対義語などを、大学院卒の日本語教師・むかいひろきに解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「暗礁に乗り上げる」の意味や使い方は?

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誰もが聞いたことがあるであろう「暗礁に乗り上げる(あんしょうにのりあげる)」という言葉。しかし、正確な意味を答えられる人は少ないのではないでしょうか。まずは、「暗礁に乗り上げる」の意味や使い方を見ていきましょう。

「暗礁に乗り上げる」の意味は「障害によって進行が妨げられる」

最初に、「暗礁に乗り上げる」の意味を確認していきましょう。「暗礁に乗り上げる」は、国語辞典では次のような意味が掲載されています。

思わぬ障害にあって、物事の進行が妨げられる。
「捜査がー」

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「◆暗礁に乗り上・げる」

「暗礁に乗り上げる」は「思わぬ障害によって物事の進行が妨げられる」という意味の慣用句です。交渉や計画が、思わぬトラブルや問題の発生によって途中で進まなくなることを表します

この「暗礁」というのは、海面の下に隠れていて見えない岩のことです。この「暗礁」がしばしば船の座礁事故を引き起こします。思わぬ障害(=暗礁)によって、物事の進行が妨げられる(=船が座礁する)というように、物事の進行のストップを船の事故に例えている言葉ですね。

「暗礁に乗り上げる」の使い方を例文とともに解説!

続いて、「暗礁に乗り上げる」の使い方を具体的に例文を用いて見ていきましょう。「暗礁に乗り上げる」は、事業や計画、交渉や話し合いなど、幅広い出来事に使用することができます。

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