この記事では「やぶさかではない」について解説する。

端的に言えば、やぶさかではないの意味は「喜んでする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「やぶさかではない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「やぶさかではない」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「やぶさかではない」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

「やぶさかではない」は良く耳にする言葉ですが、一方で意味を間違えて覚えている人も少なくないようです。使い方を誤ってしまうことが無いように、「やぶさかではない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「やぶさかではない」の意味は?

まず初めに「やぶさかではない」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。

1.そうすることに努力をおしまない(何のためらいもない)の意を表す。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「やぶさかでない」

2.…する努力を惜しまない。喜んで…する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「…にやぶさかではない」

上記のように、「やぶさかではない」は、進んで何かをする、そのことをするのに努力を惜しまない、ということです。「やぶさか」は漢字で「吝か」と書き、ためらうことや、気が進まないことを意味しています。そして「やぶさかではない」と「吝か」を否定していますから、喜んでする、と言う意味になるのですね。とても、前向きな意味の言葉なのですが、実は、しぶしぶやること、やりたくないこと、などと意味を間違って覚えている人がとても多いそうです。全く反対の意味になってしまいますから、気をつけましょう。

「やぶさかではない」の語源は?

次に「やぶさかではない」の語源を確認しておきましょう。先ほど、「やぶさかではない」は「やぶさか」の否定形だと説明しました。この「やぶさか」と言う言葉の語源は古く、平安時代の「やふさがる」と言う言葉が由来であると考えられています。 「やふさがる」の意味は、「やぶさか」と同じく、物惜しみする、躊躇すると言うことです。そして、この言葉が後の鎌倉時代には「やふさか」と変化し、そのまた後に濁点がつけられて現在の「やぶさか」となったと推測されています。そして現在では、「やぶさかではない」と言う否定形をとり、惜しみなく努力する、喜んでやる、と言う意味になったのです。

\次のページで「「やぶさかではない」の使い方・例文」を解説!/

「やぶさかではない」の使い方・例文

それでは、実際に「やぶさかではない」を用いた例文で使い方を確認しましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.私にとって大事な作品ですから、あなたが選んでくれる相手なら、商談をするのはやぶさかではございません。
2.あなたの旅行に同行させていただくのはやぶさかではありませんから、その折にはぜひ声をかけてください。
3.彼のあの笑顔を見るに、今回のお見合い相手とのデートはやぶさかではなさそうだ。

どの例文も「喜んで何かをする」と言う積極的な意味合いで用いられています。とても丁寧な言い回しなので、上手に使えば印象が良い言葉ですね。ただ、表現が「ではない」と言う否定形を用いて遠まわしに積極性を示す表現をしているため、意味を間違ってしまうことが多いようです。 例えば1の例文は、正しい意味は、「喜んで商談をさせてもらう」ということですが、「仕方なく商談する」「商談したくない」と言うように意味を間違うことが多いようです。このようにビジネスなどで誤って使ってしまうと、大変なミスに繋がってしまうことになりかねませんので、「やぶさかではない」は「喜んで何かをしたい」と言う意味だとしっかりと覚えてくださいね。

「やぶさかではない」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「やぶさかではない」の類義語は「願ってもない」が良いでしょう。

「願ってもない」

「願ってもない」とは、「自分がいくら望んでも実現しないような嬉しいことが、相手の力で実現したので喜んでいる」と言う気持ちを表しています。相手の行動や言葉がありがたい、と言うニュアンスが含まれる言葉ですね。何か人にありがたい依頼をされ快諾の意を示したい場合、「やぶさかではない」と「願ってもない」は、どちらも「喜んでやる」と言う意味で使えます

それでは、「願ってもない」の使い方も例文で確認してみましょう。

\次のページで「「やぶさかではない」の対義語は?」を解説!/

・A社との業務提携は我が社にとって願ってもないことだったので、契約はとんとん拍子で進むに違いない。

「やぶさかではない」の対義語は?

image by iStockphoto

「やぶさかではない」の対義語には「不本意」が挙げられます。

「不本意」

「不本意」(ふほんい)とは、自分の望んでいる事とは状況が違っていることを言います。自ら望んだわけではなく、仕方なしにそうなっている気持ちを表す言葉です。ですから、人から何か頼まれて嫌々やっていると言う意味で使う場合、「やぶさかではない」と反対の意味を持つと言えるでしょう。では、「不本意」の使い方も例文で見てみましょう。

・定時退社時間の間際で上司から面倒な事務仕事を押し付けられ、不本意ながらも仕方なく残業をしている。

「やぶさかではない」と「まんざらでもない」の違いは??

やぶさかではない」と紛らわしい言葉に「まんざらでもない」があります。例えば「彼女と会うのはやぶさかではない」と言うのと「彼女と会うのはまんざらでもない」と言うのでは、どう違うのでしょうか。

「まんざらでもない」は、一見して感じられたほど否定的なものではないと判断する様子を表します。つまり、悪くない、と言った評価をすることですね。つまり「彼女と会うのはまんざらでもない」とは、「彼女と会うのは悪い気がしない」と言うことなのです。「やぶさかではない」は自分から積極的に喜んで行う、と言うニュアンスですから、似ているようでまったく違う意味を持っています。間違って使ってしまわないよう気をつけてくださいね。それでは、「まんざらでもない」の使い方も例文で見てみましょう。

・学級委員長に推薦された友人は、めんどくさいと言いながらもまんざらでもない様子だ。

\次のページで「「やぶさかではない」を使いこなそう」を解説!/

「やぶさかではない」を使いこなそう

この記事では「やぶさかではない」の意味・使い方・類語などを説明しました。間違った意味で覚えている人が多い「やぶさかではない」と言う言葉ですが、正しい意味を理解できましたでしょうか。そして、この言葉が誤解されやすいのは、おそらく「やぶさか(=ためらうこと)でない」と言う婉曲的な表現のせいでしょう。しかし、素直に「喜んでやります」と言えば良い所を、このようなわかりにくい言い方をするのは、日本の「控えめであることが美徳」と言う文化なのかもしれません。実はこれは緩徐法と言う文法で、表現の程度を控えることによって、裏にある強い意味を示すやり方なのです。まわりくどい文法ではありますが、物事を直接ではなく柔らかく表現するためなのでしょう。「やぶさかでない」を上手に使って、良い印象を与えることができたらいいですね。

" /> 【慣用句】「やぶさかではない」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「やぶさかではない」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「やぶさかではない」について解説する。

端的に言えば、やぶさかではないの意味は「喜んでする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「やぶさかではない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「やぶさかではない」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「やぶさかではない」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

「やぶさかではない」は良く耳にする言葉ですが、一方で意味を間違えて覚えている人も少なくないようです。使い方を誤ってしまうことが無いように、「やぶさかではない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「やぶさかではない」の意味は?

まず初めに「やぶさかではない」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。

1.そうすることに努力をおしまない(何のためらいもない)の意を表す。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「やぶさかでない」

2.…する努力を惜しまない。喜んで…する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「…にやぶさかではない」

上記のように、「やぶさかではない」は、進んで何かをする、そのことをするのに努力を惜しまない、ということです。「やぶさか」は漢字で「吝か」と書き、ためらうことや、気が進まないことを意味しています。そして「やぶさかではない」と「吝か」を否定していますから、喜んでする、と言う意味になるのですね。とても、前向きな意味の言葉なのですが、実は、しぶしぶやること、やりたくないこと、などと意味を間違って覚えている人がとても多いそうです。全く反対の意味になってしまいますから、気をつけましょう。

「やぶさかではない」の語源は?

次に「やぶさかではない」の語源を確認しておきましょう。先ほど、「やぶさかではない」は「やぶさか」の否定形だと説明しました。この「やぶさか」と言う言葉の語源は古く、平安時代の「やふさがる」と言う言葉が由来であると考えられています。 「やふさがる」の意味は、「やぶさか」と同じく、物惜しみする、躊躇すると言うことです。そして、この言葉が後の鎌倉時代には「やふさか」と変化し、そのまた後に濁点がつけられて現在の「やぶさか」となったと推測されています。そして現在では、「やぶさかではない」と言う否定形をとり、惜しみなく努力する、喜んでやる、と言う意味になったのです。

\次のページで「「やぶさかではない」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: