この記事では「自腹を切る」について解説する。

端的に言えば自腹を切るの意味は「自分のお金で払うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「自腹を切る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「自腹を切る」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「自腹を切る」の意味や語源・使い方まとめ

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「自腹を切る」(じばらをきる)は身近な慣用句ですね。よく使う言葉こそ、正確な意味を知っておくことが大事です。それでは早速「自腹を切る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「自腹を切る」の意味は?

まず初めに、「自腹を切る」の正確な意味を辞書からの引用で確認していきましょう。

1.組織・団体などの公的な経費にすることを当てにせず自分で費用をまかなうこと。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「自腹を切る」

2.必ずしも自分が負担する必要のない経費などを、自分の金で支払う。身銭を切る。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「自腹を切る」

自腹を切る」は簡単に言うと、自分のお金で費用を払う、と言うことですが、単に支払いをすると言うことではありません。例えば会社の経費など、本来は自分が払うべきものではない費用を自分のお金でまかなう、と言うことなのです。

「自腹を切る」の語源は?

次に「自腹を切る」の語源には二つの説があります。確認してみましょう。

まず一つめは、「自腹を切る」が読んで字のごとく自分自身の腹を切ることだと言う説です。つまり「自腹を切る」が武士の切腹に由来しているのではないかと言うことですね。つまり、自分から払うと言うことは、自ら痛い思いをして切るのだから切腹のようなもの、と言う連想が語源になったと考えなのでしょう。

二つめの説は、「自腹」は単にお腹のことではなく、懐に入っている自分のお金のことであると言う考えです。そもそも「自腹を切る」は、江戸時代から使われ始めた言葉ですが、この時代、お財布は着物の合わせ、つまり、懐…お腹のところに入れていましたね。そのことから自分のお金のことを「自腹」と言っていたと考えられます。そして「自腹を切る」の「切る」は、単純に切断するという意味ではなく、思い切った行動をすると言う意味です。歌舞伎の「見栄を切る」などと同じ使い方ですね。他にも「札びらを切る」(景気よく大金を使うこと)の「切る」も同じ意味を持っています。そして「自腹」と「切る」を合わせて、懐から自分のお金を思い切って出すと言う意味になるのです。

どちらも語源として納得できる説ですね。江戸時代からの言葉の変遷はとても面白いので、興味があれば調べてみるといいでしょう。

\次のページで「「自腹を切る」の使い方・例文」を解説!/

「自腹を切る」の使い方・例文

それでは「自腹を切る」の使い方を、実際の例文で見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.仕事の取引相手との食事代を経理担当にまわし忘れ、結局自腹を切ることになってしまった。
2.アルバイト先のケーキ屋でついうっかりクッキーを割ってしまい、責任を取ると言う気持ちで自腹を切って購入した。
3.ここのところずっと営業成績が悪かったので、いけない行為と知りつつも自腹を切って商品を自分で買ってしまった。

どの例文も、本来は自分が出さなくともよい公的な経費を自分のお金からまかなっていますね。このように「自腹を切る」には仕方がなく支払うと言うネガティブなニュアンスがあります。ですから、個人の付き合いで自分から人に奢るような場合には用いることができませんので、注意してくださいね。

「自腹を切る」の類義語は?違いは?

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自腹を切る」の類義語は「身銭を切る」です。

「身銭を切る」

身銭を切る」の読み方は「みぜにをきる」です。「自腹を切る」に比べると、あまり耳にする頻度は高くないかも知れません。「身銭」とは、自分で持っている個人のお金のことです。 私用な目的で使うことができるお金を指し、「自腹」と同じ意味を持っています。そして「切る」は、語源のところで前述したように切断すると言う意味ではなく、「思い切った行動をする」という意味ですから、「身銭を切る」は本当は払わなくてもよいことに自分のお金を使うと言う意味になるのですね。「自腹を切る」と全く同じ意味ではありますが、「身銭を切る」は自分のお金を投資する、というような、良い意味で使われることが多いでしょう。それでは、「身銭を切る」の使い方を例文で確認してください。

\次のページで「「自腹を切る」の対義語は?」を解説!/

・会社主催の英会話教室ではなく、あえて時間を作り身銭を切って英会話スクールに通った結果、英検の試験に合格することができた。

「自腹を切る」の対義語は?

「自腹を切る」の対義語には「私腹を肥やす」が挙げられます。

「私腹を肥やす」

私腹を肥やす」は「しふくをこやす」と読みます。意味は、不正な行為をして自分のお金を増やし貯めること、です。「私腹」とは、不正で得た個人の利益を指します。「肥やす」とは太らせると言うことですから、不正な利益でお金を増やすと言う意味になりますね。

「自腹を切る」が公費や経費などの払わなくてもよい支出を自分のお金でまかなうことに対し、「懐を肥やす」は本来得ることができないお金を不正によって得る事ですから、対義語としてふさわしいでしょう。

「自腹を切る」を現代語で言うと??

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「自腹を切る」を現代語で言い換えると、似ている言葉に「ポケットマネーで払う」がありますね。語彙力向上のためにも使い方などを簡単に説明しましょう。

「ポケットマネーで払う」

ポケットマネーとはポケットに入れていつでも使える小銭と言う意味で、いわゆる小遣い銭のことです。「ポケットマネーで払う」はビジネスにおいては、「自腹を切る」と同じ意味で用いられることがしばしばあります。例えば、自分の仕事の一部を友人に手伝ってもらった場合に、自分のお金からお礼を出すとしましょう。 そんな時には「ポケットマネーで礼金を払う」と言ったりしますね。他にも会社には請求するまでもない経費を自分の支払いで済ませてしまったりした場合にも「ポケットマネーで払う」と言うことがあります。このように「自腹を切る」と同じように、経費に含まれるような支払いを自分の小遣いから払ってしまうことを「ポケットマネーで払う」と言うことを覚えておいてくださいね。ただし、ニュアンスとして少額な金額を言いますので、大金に対してはあまり使われることはないでしょう。

\次のページで「「自腹を切る」を使いこなそう」を解説!/

「自腹を切る」を使いこなそう

この記事では「自腹を切る」の意味・使い方・類語などを説明しました。江戸時代から使われてきた慣用句ですが、語源ははっきりとは分かっておらず、二つの説がありましたね。「自腹を切る」で想像しやすいのは「切腹」ですから、わかりやすい「切腹」説の方が主流化かもしれません。ですが、「身銭を切る」と言う言葉があることからも、「自腹」と言うのは懐のお金を指していて、「切る」は切断ではなく、思い切った行動、と言う意味だと考えるのが自然かも知れませんね。江戸時代は商人の言葉や廓言葉など、言葉の発展が独自で興味深いものです。江戸言葉の辞典なども発行されていますから、興味があれば勉強してみてください。

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【慣用句】「自腹を切る」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「自腹を切る」について解説する。

端的に言えば自腹を切るの意味は「自分のお金で払うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「自腹を切る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「自腹を切る」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「自腹を切る」の意味や語源・使い方まとめ

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「自腹を切る」(じばらをきる)は身近な慣用句ですね。よく使う言葉こそ、正確な意味を知っておくことが大事です。それでは早速「自腹を切る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「自腹を切る」の意味は?

まず初めに、「自腹を切る」の正確な意味を辞書からの引用で確認していきましょう。

1.組織・団体などの公的な経費にすることを当てにせず自分で費用をまかなうこと。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「自腹を切る」

2.必ずしも自分が負担する必要のない経費などを、自分の金で支払う。身銭を切る。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「自腹を切る」

自腹を切る」は簡単に言うと、自分のお金で費用を払う、と言うことですが、単に支払いをすると言うことではありません。例えば会社の経費など、本来は自分が払うべきものではない費用を自分のお金でまかなう、と言うことなのです。

「自腹を切る」の語源は?

次に「自腹を切る」の語源には二つの説があります。確認してみましょう。

まず一つめは、「自腹を切る」が読んで字のごとく自分自身の腹を切ることだと言う説です。つまり「自腹を切る」が武士の切腹に由来しているのではないかと言うことですね。つまり、自分から払うと言うことは、自ら痛い思いをして切るのだから切腹のようなもの、と言う連想が語源になったと考えなのでしょう。

二つめの説は、「自腹」は単にお腹のことではなく、懐に入っている自分のお金のことであると言う考えです。そもそも「自腹を切る」は、江戸時代から使われ始めた言葉ですが、この時代、お財布は着物の合わせ、つまり、懐…お腹のところに入れていましたね。そのことから自分のお金のことを「自腹」と言っていたと考えられます。そして「自腹を切る」の「切る」は、単純に切断するという意味ではなく、思い切った行動をすると言う意味です。歌舞伎の「見栄を切る」などと同じ使い方ですね。他にも「札びらを切る」(景気よく大金を使うこと)の「切る」も同じ意味を持っています。そして「自腹」と「切る」を合わせて、懐から自分のお金を思い切って出すと言う意味になるのです。

どちらも語源として納得できる説ですね。江戸時代からの言葉の変遷はとても面白いので、興味があれば調べてみるといいでしょう。

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