端的に言えば備あれば憂いなしの意味は「ものごとに対する準備を整えれば不安を除けること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
小説や記事の執筆など、言葉に多く携わっている中低青黄を呼んです。一緒に「備えあれば憂いなし」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/中低青黄
大学生ライター。大学生活を送る傍ら、PR会社にて記事の添削・校正などを担当。また、高校生の頃から小説をはじめとした書籍を多数通読。小説の執筆や記事の作成なども行っている。
「備えあれば憂いなし」の意味は?
「備えあれば憂いなし」には、次のような意味があります。
・万一に備えて、あらかじめ準備をしておけば、事が起こっても少しも心配事がない。備えあれば憂えなし。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「備えあれば憂いなし」
読み方は「そなえあればうれいなし」。「備えあれば憂いなし」の意味は、万一のことに備えてしっかり準備を行っておけば、もしもの事態が起こっても対応できるということ。準備の大切さを伝えるための慣用句なわけですね。
それではこの慣用句を要素ごとにとらえて、より深く理解しましょう。「備え」はそのまま、準備のことですね。「しっかり備えておきなさいね」などの使われ方をしています。
そして「憂い」。こちらは「思うようにならずに辛いこと」や「憂鬱な気持ち」を表しています。「万一のことが起こるかも」という不安心のことを示していると言えるでしょう。この2つを組み合わせて「備え」があることで「憂い」が生じないことを表しているという構造が「備えあれば憂いなし」にはあるのです。
「備えあれば憂いなし」の語源は?
次に「備えあれば憂いなし」の語源を確認しておきましょう。この慣用句の語源は、古代中国の書物であるとされています。2つの書物にてこの慣用句の元となるような表現が使われているのです。
1つは「春秋左氏伝」。この中の殷国の宰相であった傳説は「これ事を事とする乃ち其れ備え有り、備えあれば患い無し」という言葉を残しています。ここでいう「患(うれ)い」は「憂い」と同義。「心配」「不安」「災い」を表しており、この言葉は「するべきことをすることが備えがある状態。そして備えがあれば憂いがない」と言い表しているのです。
もうひとつの書物は、「書経」。ここには「書曰、居安思危、思則有備、有備無憂」とあります。これを書き下すと「書にいわく、安きに居りて危うきを思う、思えば則ち備え有り、備え有れば憂い無し」。「安全な状態でも危険なときのことを想定する。それにより備えをするようになる。備えていれば憂いなどない」ということです。この最後の部分から「備えあれば憂いなし」が生まれたのではないか、と言われています。
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