この記事ではことわざ「実るほど頭を垂れる稲穂かな」について解説する。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」はどこかで一度は聞いたことのあるようなことわざですが、意味や由来をきちんと把握しているか?多くの人の座右の銘にもされるくらい、人生の教訓として参考になる言葉だから、知っておいて損はないぞ。
今回は年を重ねてもなかなか頭の垂れてこない、不遜なライターであるぷーやんを呼んです。「実るほど頭の垂れる稲穂かな」の意味と使われ方について、自省も兼ねて説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。頭を垂れないどころか慇懃無礼ですらあるため、解説の傍ら反省していく。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の意味からみていこう!

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まずは「実るほど頭を垂れる稲穂かな」が、なにを表現することわざなのかをご紹介します。ちなみに『頭』は「あたま」ではなく『こうべ』です。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を辞書引き!

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は五・七・五のテンポですが、俳句ではなく作者不詳の故事成語(ことわざ)です。その意味について、辞書には次のように書かれています。

稲の穂は実が入ると重くなって垂れ下がってくる。学徳が深まると、かえって他人に対し謙虚になることのたとえ。
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「実るほど頭の下がる稲穂かな」

知識を得たり実績を積み上げたりしていくと、自信がついて態度が尊大になっていきそうなもの。それでもなお他人に謙虚になれるとすれば、どういう心理がはたらくのでしょうか。本記事の次項以降では、そのあたりのこともご紹介していきます。

例文でみる「実るほど頭を垂れる稲穂かな」

次に、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を使った例文をみていきましょう。

\次のページで「「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の類似表現」を解説!/

1.うちの自治会長は老成された方だが、私のような若輩にも丁寧に対応してくれる。『実るほど頭を垂れる稲穂かな』を地で行く人だ。
2.部長は年甲斐もなく、部署の中だけでお山の大将を気取っている。井の中の蛙でいる限り、『実るほど頭を垂れる稲穂かな』の精神は到底理解できず、誰からも慕われることはないだろう。
3.専門分野や所属業界の違う人と話す機会があると、いつもの生活にはない知的刺激や閃きを得られる。他人には、自分にとって見習うべきことや吸収するべき知識が、なにかしらあるものだ。そして『実るほど頭を垂れる稲穂かな』、知識が増えれば理解できる話しも増えるので、ますます他者とのコミュニケーションが欲しくなる。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は、人生の苦しみも楽しみも、すべて正面から向き合ってきた方が至れる境地ではないでしょうか。人生でぶつかった課題には逃げずに立ち向かい、楽しめる場面では思い切り楽しむことで、豊かな知識と経験が育まれていくものです。

哲学に『無知の知』という言葉があるように、自分の得意とする分野で功績を挙げられたとしても、この世にはまだ知らないことのほうが多いでしょう。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は、こうして培われる精神と言えそうです。自分と違う人生を歩む他人は、きっと自分の知らないことをたくさん知っています

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の類似表現

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「実るほど頭を垂れる稲穂かな」と似た表現にはどんなものがあるでしょうか?

「大智如愚(だいちじょぐ)」:賢い人は一見愚かに見える

大きな智慧を持つ人はそれをひけらかさず、むしろ一見すると愚かなように振る舞うという意味。

「和光同塵(わこうどうじん)」:徳を隠して世俗に交じる

本来の老子の言葉では上記の通りの意味です。仏教では少し意味が転じており、仏が俗世を救うために、民衆が垣根を感じないよう徳を隠した姿になることを指します。

\次のページで「「能ある鷹は爪を隠す」:能力のある者は力を誇示しない」を解説!/

「能ある鷹は爪を隠す」:能力のある者は力を誇示しない

言わずと知れたことわざですね。「爪を隠す」とありますが、これは爪が見えないようにすることではなく、むやみに爪を使って獲物を脅す行為をしないということ。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」に対義語はある?

類似表現の次は、反対の意味の表現をみていきましょう。

「弱い犬ほどよく吠える」:実力のない者ほど威張る

周囲を威嚇するなどの攻撃的な言動は、恐怖から身を護るための原始的な防御反応です。弱いものほど恐怖の対象が多いため、よく吠えるわけですね。「弱い犬」は「未熟な実」、「よく吠える」は「頭を垂れない」と対照できますので、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の対義表現と言えそうですね。

「増上慢(ぞうじょうまん)」:自分を過信して思い上がる

仏教用語で、悟りを得た気になって驕っている心のこと。これが転じて、自分に等身大以上の価値があると思い込むことを指す言葉に。

「井の中の蛙大海を知らず」:狭い世界しか知らない

井戸の中から出たことのない蛙は、世界の広さを知らないという意味です。この言葉を使うときはたいてい、「井の中でしか威張れない」ということを含意しますよね。見識を広めず狭い世界で頂点を取った気になっていては、頭を垂れることもできないでしょう。

\次のページで「「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は座右の銘にも!」を解説!/

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は座右の銘にも!

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この記事の最後に、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」が教訓とされている例をご紹介します。

松下幸之助も目指した「実るほど頭を垂れる稲穂かな」

パナソニック(旧松下電器)創業者の松下幸之助氏も、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を信条としていたそうです。松下氏といえば、わずか9歳で奉公のため親元を離れるなど、年齢の低いうちから多くの苦労をされた方。大変な人生を歩まれたからこそ人の痛みもわかり、謙虚な姿勢が身についていったのかもしれません

早稲田大学の教旨にも!

早稲田大学には『志は高く、頭は低く』という伝統的な理念があるとのこと。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の態度が、学生が卒業してからの人生にも浸透するような教旨を掲げているそうです。

実るほど頭を垂れる人生の勧め

この記事では「実るほど頭を垂れる稲穂かな」について、言葉の意味だけでなく、その重要性について考えてきました。

唐突ですが、「知識の浅い人ほど自信家である」という研究成果があります(ダニング=クルーガー効果)。この研究によれば、さらに知識を深めていくと一度物事の奥の深さに絶望したのち、最終的には精確な自己評価ができるとのこと。絶望の過程を経て謙虚さを学ぶことで、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」に至ることができるのかもしれません。『若いうちの苦労は買ってでもしろ』とよく聞きますが、これも同じことを言っているのでしょう。

ダニング=クルーガー効果の「少しの知識で自信にあふれている段階」で歩みを止めず、さらに真剣に打ち込んでこそ「実るほど頭を垂れる稲穂かな」が経験的・体感的に理解できるということ。この記事が、そうした人生を吟味する動機づけになれば幸甚です。

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国語言葉の意味

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は作者不詳?意味・類似表現・対義語をwebライターがわかりやすく解説!

1.うちの自治会長は老成された方だが、私のような若輩にも丁寧に対応してくれる。『実るほど頭を垂れる稲穂かな』を地で行く人だ。
2.部長は年甲斐もなく、部署の中だけでお山の大将を気取っている。井の中の蛙でいる限り、『実るほど頭を垂れる稲穂かな』の精神は到底理解できず、誰からも慕われることはないだろう。
3.専門分野や所属業界の違う人と話す機会があると、いつもの生活にはない知的刺激や閃きを得られる。他人には、自分にとって見習うべきことや吸収するべき知識が、なにかしらあるものだ。そして『実るほど頭を垂れる稲穂かな』、知識が増えれば理解できる話しも増えるので、ますます他者とのコミュニケーションが欲しくなる。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は、人生の苦しみも楽しみも、すべて正面から向き合ってきた方が至れる境地ではないでしょうか。人生でぶつかった課題には逃げずに立ち向かい、楽しめる場面では思い切り楽しむことで、豊かな知識と経験が育まれていくものです。

哲学に『無知の知』という言葉があるように、自分の得意とする分野で功績を挙げられたとしても、この世にはまだ知らないことのほうが多いでしょう。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は、こうして培われる精神と言えそうです。自分と違う人生を歩む他人は、きっと自分の知らないことをたくさん知っています

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の類似表現

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「実るほど頭を垂れる稲穂かな」と似た表現にはどんなものがあるでしょうか?

「大智如愚(だいちじょぐ)」:賢い人は一見愚かに見える

大きな智慧を持つ人はそれをひけらかさず、むしろ一見すると愚かなように振る舞うという意味。

「和光同塵(わこうどうじん)」:徳を隠して世俗に交じる

本来の老子の言葉では上記の通りの意味です。仏教では少し意味が転じており、仏が俗世を救うために、民衆が垣根を感じないよう徳を隠した姿になることを指します。

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