この記事では「膝を折る」について解説する。

端的に言えば「膝を折る」の意味は「屈服すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「膝を折る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「膝を折る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「膝(ひざ)を折る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「膝を折る」の意味は?

「膝を折る」には、次のような意味があります。

1 膝を折り曲げて、かがんだり正座したりする。「―・って座る」
2 相手の前に身を屈する。また、相手に頭を下げる。「―・って頼む」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「膝を折る」

この言葉は「屈服する、負ける」という意味を持つ慣用表現です。「膝」は足の間接の「ひざ」。実際に膝を折って「座る」という意味で用いることもありますが、言葉そのままのため問題で登場することは少ないでしょう。屈服するとは「負けて従うこと」のため、膝を折る人と相手との力関係が表れます。読解問題などで登場した場合、人物の関係性を読み取るポイントになる表現とも言えるでしょう。

力関係は必ずしも一方的ではなく、強い相手に屈するか、逆に弱い相手にまさかの負けをもらった時のどちらでも使えます。文脈から判断するようにしてくださいね。

「膝を折る」の語源は?

次に「膝を折る」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、特別な由来からではなく動作の持つイメージから出来た表現のようです。歴史ものの作品などで、王様の前に人が「膝をついて」深く頭を下げている場面を見たことはありませんか。そうしたポーズは「相手への忠誠や服従を示す」ものとなります。それが更に、ただ膝をつくのではなく「膝を折って」いたら、どんなイメージになるでしょうか。がっくりと頭が垂れて、心まで折れているような感じを受けると思います。頭を前に垂らすということは、首などの無防備な部分を相手に晒す=負けを認めたことになるのです。

そんな強い敗北感も感じられる「膝を折る」動作が、そのまま慣用表現として定着したのだと考えられます。同様の意味で「膝を屈める、膝を屈する」という表現もありますが、より「負けた」感が感じられる言葉ですね。がっくりと「膝を折る」としたらどんな場面なのか、自分なりに想像してみるのもいいでしょう。

\次のページで「「膝を折る」の使い方・例文」を解説!/

「膝を折る」の使い方・例文

「膝を折る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・スマホの動画再生アプリでシェアナンバーワンを目指し頑張っていたあのベンチャー企業だが、やはり大手にはサービス面でかなわず、最終的に膝を折る決断をした。

・ウェブサイトの著作権問題やデータ流出などで、いくら会員に不利益を与えても謝罪しなかった大手企業が、国からの指導を受けてついに膝を折り、お詫びについてのお知らせを出した。

・他人には従いたくないと、一人で執筆活動を頑張っていたあの作家だが、六十前後になって健康上の問題が持ち上がり、さすがに膝を折る結果となったようだ。

何かに対して屈服する、負けを認める」というニュアンスが伝わりますでしょうか。強い相手に負けるというわかりやすい図式から、例文三番目のように「自分の決心を曲げる、曲げざるを得なかった」という意味合いで使うことも出来ます。

例文一番目のような文章なら、「それほどまでに頑張っていたのに」というニュアンスも読み取れるでしょう。「膝を折る」動作からは、そんな「悔しさや無念さ」も感じられるかもしれませんし、あまりのことに「ショックを受けている」のかもしれません。どうしてそうなったのか、また動作をしている人はどのような気持ちなのか、まで読み取れると、読解力がアップできるでしょう。

「膝を折る」の類義語は?違いは?

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「膝を折る」の類義語は「白旗(しらはた)を掲げる」がいいでしょう。

「白旗を掲げる」

「白旗を掲げる」は、「降参・降伏する、戦意がない意図を示すこと」。単純に「白旗」または「白旗をあげる」などとも言います。「しらはた」という読み方にも注意が必要です。

「屈服、降伏」という意味で「膝を折る」と類義語になりますが、こちらは「戦う気力が無い」ことも表せることがポイント。負けてがっくりしているというよりも、戦いを放棄しているようなイメージでしょうか。細かい違いですが覚えておきましょう。

\次のページで「「膝を折る」の対義語は?」を解説!/

出版社でのアルバイト中、スキマ時間に録音音声をひらがなとローマ字に起こすのをやらせてもらったが、あまりの大変さにすぐ白旗を掲げた。

「膝を折る」の対義語は?

「膝を折る」の対義語は「不退転(ふたいてん)の~」などがいいでしょう。

「不退転の~」

「不退転」は「意志を強く持ち、屈しないこと」を意味する言葉。「不退転の決意」といった使われ方をすることが一般的です。相手に決して負けまいとし、心が折れないことから、「膝を折る」とは反対の意味になりますね。

もともとは仏教用語で、「修行して得たものを失わない。その境地」を指す言葉。その境地を目指して絶え間ない努力をするという意味が転じて、一般的にも使われるようになりました。

入社式で、怖いと思っていた社長が、これから皆さんそれぞれたくさん大変なこともあるだろうけれど、不退転の決意で頑張ってくださいと優しく言っていたのが印象的だった。

「膝を折る」の英訳は?

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「膝を折る」の英訳は「come to one's knees」で表すことができます。

「come to one's knees」

これは直訳すれば「膝を(どこかに)置く」。「knee」はまさに「膝」で、「膝を折って」屈服している様子は、英語圏でも共通のイメージのようです。慣用表現としての意味を知らないと、おかしな訳になってしまうため注意しましょう。「knees」と複数形になるのもポイントです。

ちなみに「他者を屈服させる」場合は、他動詞で「bring ~ to one's knees」とします。こちらも合わせて押さえておきましょう。

\次のページで「「膝を折る」を使いこなそう」を解説!/

・They didn't quit the discussion until the other person came to their knees.
他の人が膝を折るまで、彼らは議論を辞めなかった。

「膝を折る」を使いこなそう

この記事では「膝を折る」の意味・使い方・類語などを説明しました。目標が叶えられなかったり強敵に勝てなかったり、みなさんも思わず「膝を折って」しまった場面などがあるでしょうか。

実はそれは、自分がしていた期待からの落差から生まれたものだったりもします。がっかりした時は、現状をしっかり把握して、過度な期待をせず、着実に進むことを学ぶ機会だと捉えてみるのも、一つの方法ですよ。

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【慣用句】「膝を折る」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「膝を折る」について解説する。

端的に言えば「膝を折る」の意味は「屈服すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「膝を折る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「膝を折る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「膝(ひざ)を折る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「膝を折る」の意味は?

「膝を折る」には、次のような意味があります。

1 膝を折り曲げて、かがんだり正座したりする。「―・って座る」
2 相手の前に身を屈する。また、相手に頭を下げる。「―・って頼む」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「膝を折る」

この言葉は「屈服する、負ける」という意味を持つ慣用表現です。「膝」は足の間接の「ひざ」。実際に膝を折って「座る」という意味で用いることもありますが、言葉そのままのため問題で登場することは少ないでしょう。屈服するとは「負けて従うこと」のため、膝を折る人と相手との力関係が表れます。読解問題などで登場した場合、人物の関係性を読み取るポイントになる表現とも言えるでしょう。

力関係は必ずしも一方的ではなく、強い相手に屈するか、逆に弱い相手にまさかの負けをもらった時のどちらでも使えます。文脈から判断するようにしてくださいね。

「膝を折る」の語源は?

次に「膝を折る」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、特別な由来からではなく動作の持つイメージから出来た表現のようです。歴史ものの作品などで、王様の前に人が「膝をついて」深く頭を下げている場面を見たことはありませんか。そうしたポーズは「相手への忠誠や服従を示す」ものとなります。それが更に、ただ膝をつくのではなく「膝を折って」いたら、どんなイメージになるでしょうか。がっくりと頭が垂れて、心まで折れているような感じを受けると思います。頭を前に垂らすということは、首などの無防備な部分を相手に晒す=負けを認めたことになるのです。

そんな強い敗北感も感じられる「膝を折る」動作が、そのまま慣用表現として定着したのだと考えられます。同様の意味で「膝を屈める、膝を屈する」という表現もありますが、より「負けた」感が感じられる言葉ですね。がっくりと「膝を折る」としたらどんな場面なのか、自分なりに想像してみるのもいいでしょう。

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