この記事では「あばたもえくぼ」について解説する。
端的に言えば、あばたもえくぼの意味は「相手に好意を持つと欠点も長所に見える」です。なぜ「あばたもえくぼ」に見えるのか?その由来や心理についても見ていこう。
日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。「あばたもえくぼ」の意味をチェックし、使い方や類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「あばたもえくぼ」の意味・語源・例文など

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まずは「あばたもえくぼ」の意味や語源を見ていきましょう。なぜ「あばたもえくぼ」に見えるのかも解説しますよ。理解できたら例文で使い方も見ていきましょう。

「あばたもえくぼ」の意味

まず、辞書で「あばたもえくぼ」の意味をチェックしましょう。

恋する者の目には、相手のあばたでもえくぼのように見える。ひいき目で見れば、どんな欠点でも長所に見えるということのたとえ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「あばたもえくぼ」

「あばた」とは、天然痘(てんねんとう)が治ったあとに残る皮膚の小さなくぼみのこと。「あばたもえくぼ」「恋する者の目にはあばたもえくぼのように見える」つまり「相手に好意を持つと欠点も長所に見える」という意味です。

「あばたもえくぼ」の語源

「あばた」と言われてもピンとこないかもしれないですね。「あばた」は漢字では「痘痕」と書きます。天然痘(痘そう)の痕(あと)という意味です。天然痘は1980年に地球上から根絶されるまで、感染力や致死率が高い病気として恐れられていました。

たとえ治っても、「あばた」が残って見た目が悪くなるため「見目定(みめさだ)めの病」として忌み嫌われていたのです。恋する者の目には、そんな「あばた」すらもえくぼに見えてしまうというのが「あばたもえくぼ」の語源ですよ。いつから使われていたかはわかりませんが、江戸時代の洒落本(しゃれぼん)に記載が見られます。

「あばたもえくぼ」に見えるのは「ハロー効果」のせい!

「ハロー効果」をご存じでしょうか。「ハロー」とは、神仏の背後に描かれる後光のことで、日本語では「後光効果」などと訳されています。「ハロー効果」とは、「人などを評価するときに、目立った特徴があると、その一部分の印象によって全体の評価が影響を受けてしまう」こと。

好きなタレントが起用されているCMを見ると、その商品にも好感を持ちますよね。相手のことを好きになると「あばた」も欠点には見えず、相手を全体的に高く評価してしまうものなのです。

\次のページで「「あばたもえくぼ」の例文」を解説!/

「あばたもえくぼ」の例文

「あばたもえくぼ」の意味や心理状態がわかったところで、次は例文で使い方を見ていきますよ。

1.彼は親しい友人からは相当な吝嗇家(りんしょくか)と思われていたが、お見合いパーティーで一目ぼれした彼女からは堅実な人間と思われているらしい。あばたもえくぼというやつだ。
2.彼女はおしゃべりでうわさ話が大好きだ。口下手な彼にとってはあばたもえくぼに見えるのか、彼女が明るく社交的な素晴らしい女性だと思っているらしい。

最初の例文は、友人からはケチだと思われているが、恋する彼女の目からは堅実な人間に見えるという意味です。「吝嗇家」とは「けちな人」「けちんぼう」という意味ですよ。2番目の例文は、彼女のおしゃべりでうわさ話好きという欠点が、彼には明るく社交的という長所に見えるという意味です。

「あばたもえくぼ」の類義語

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「あばたもえくぼ」と同じような意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「屋烏(おくう)の愛」:その人の家の屋根にとまったカラスまで愛する

「屋烏」とは屋根にとまっているカラスのこと。「鳥(とり)」より一本少ない「烏」ですので間違えないようにしましょう。「屋烏の愛」「人を深く愛すると、その人の家の屋根にとまっているカラスまで愛する」という意味で、愛情が深いことのたとえです。「愛、屋烏に及ぶ」とも言います。語源は漢の時代の説話集『説苑(ぜいえん)』ですよ。

「面面の楊貴妃」:好きになると欠点が目につかず美しく見える

「面面」は「各自」「おのおの」「一人一人」という意味です。「楊貴妃」は唐の玄宗皇帝のお妃で、美人として名高い女性ですね。「面面の楊貴妃」は、「各自がそれぞれの妻や愛人を、楊貴妃のような美人だと思うこと」「人には好みがあり、好きになると欠点が目につかず、美しく見える」という意味です。

\次のページで「「惚れた欲目」:実際以上によく思ってしまう」を解説!/

「惚れた欲目」:実際以上によく思ってしまう

「欲目」とは自分の好みや愛情のため、自分に都合がいいように実際よりよく受け取る見方のこと。「ひいき目」ともいいますね。「惚れた欲目」「好きになった相手を実際以上によいと思ってしまう」ことです。

「あばたもえくぼ」の反対語

「あばたもえくぼ」と反対の意味あいの言葉には、どのような言葉があるのでしょうか。

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」:その人に関わるものすべてが憎い

「袈裟」とは僧侶の法衣のこと。僧侶が憎くなると、その人が身に着けている袈裟まで憎く思うということから「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」「その人を憎むと、その人に関係あるものすべてに嫌悪感を抱く」という意味になったのです。

江戸時代、寺請制度によって僧侶は戸籍の管理など役所の役割を担っていました。しかし証文の発行の際に金銭を請求するなど、汚職がはびこっていたので民から憎まれていたのです。そんな背景を知ると言葉の意味が納得できますね。

「親が憎けりゃ子も憎い」:その人に関わるものすべてが憎い

「親のことを憎いと思うと、罪のないその子どものことまで憎い」ということから、「親が憎けりゃ子も憎い」「その人に関わるものすべてが憎い」という意味になりました。親のことと切り離して考えられない気持ちもわからなくはないですが、子どもの立場からすると、何も悪いことはしていないのに憎まれてしまうのは理不尽ですね。

「あばたもえくぼ」の英訳

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次は英語で「あばたもえくぼ」をどのような言い回しで表現するか見ていきましょう。

「Love is blind.」:恋は盲目

「love」は「恋」、「blind」は「盲目」のほかに「見えなくする」「わからなくさせる」という意味があるのでLove is blind.「恋は盲目」です。恋に落ちると相手の短所はまったく目に入らなくなりますね。

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「Love sees no faults.」:惚れた欲目

Love sees no faults.は英語のことわざ。「faults」は「fault」の複数形。「fault」は「短所」「欠点」という意味です。直訳すると「恋は短所を見ない」なので「惚れた欲目」「あばたもえくぼ」という意味になりますよ。

「Love covers many infirmities. 」:愛は多くの欠点を隠す

「cover」は「覆う」「「覆い隠す」「かばう」などの意味があります。「infirmities」は「infirmity」の複数形で、「虚弱」「欠点」「弱点」「欠陥」という意味です。Love covers many infirmities. 「愛は多くの欠点を隠す」という意味になるので「あばたもえくぼ」ですね。

「あばたもえくぼ」を使いこなそう!

この記事では、「あばたもえくぼ」の意味を調べ、使い方や類義語などを解説しました。

「あばたもえくぼ」「恋する者の目にはあばたもえくぼのように見える」こと、つまり「相手に好意を持つと欠点も長所に見える」という意味です。

欠点も長所に見えるのはポジティブでよいことかもしれません。けんかなどして「あばたもえくぼ」から一気に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の関係にならないようにしたいものです。

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国語言葉の意味

なぜ「あばたもえくぼ」に見えるのか?意味・使い方・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

「Love sees no faults.」:惚れた欲目

Love sees no faults.は英語のことわざ。「faults」は「fault」の複数形。「fault」は「短所」「欠点」という意味です。直訳すると「恋は短所を見ない」なので「惚れた欲目」「あばたもえくぼ」という意味になりますよ。

「Love covers many infirmities. 」:愛は多くの欠点を隠す

「cover」は「覆う」「「覆い隠す」「かばう」などの意味があります。「infirmities」は「infirmity」の複数形で、「虚弱」「欠点」「弱点」「欠陥」という意味です。Love covers many infirmities. 「愛は多くの欠点を隠す」という意味になるので「あばたもえくぼ」ですね。

「あばたもえくぼ」を使いこなそう!

この記事では、「あばたもえくぼ」の意味を調べ、使い方や類義語などを解説しました。

「あばたもえくぼ」「恋する者の目にはあばたもえくぼのように見える」こと、つまり「相手に好意を持つと欠点も長所に見える」という意味です。

欠点も長所に見えるのはポジティブでよいことかもしれません。けんかなどして「あばたもえくぼ」から一気に「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の関係にならないようにしたいものです。

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