このページでは「白変種」というキーワードをテーマにみていこう。

白変種の動物は、動物園や水族館、ときには野生下でもみることができる。「どんな仕組みで白変種がうまれるのか」や、「白変種とアルビノのちがい」などの気になる点を学んでいこうじゃないか。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

白変種とは?

白変種(はくへんしゅ)とは、からだの色素が少ないために、毛や羽、肌などが白色に近くなっている個体のことをさします。英語ではLeucism(リューシズム)。これはギリシャ語で「白」を意味する「leukos」からきている用語です。

image by Study-Z編集部

白変種が生じるしくみ

白変種になるかどうかを決めるのは、それぞれの個体がもつ遺伝子です。毛や羽、皮膚などを白くする遺伝子を親から受け継いだ子どもで、条件がそろうと白変種になります。

このような遺伝子は生物種によっていくつか存在するため、ひとつの遺伝子の話で説明できるものではありません。

image by iStockphoto

多くの場合、毛や羽、肌などを白くする遺伝子は劣性(潜性)形質であるため、両親から偶然その遺伝子をもらわないと、白変種にならないようです。白変種の数が決して多くないのはそのためでしょう。

ただ、自然界において白い羽や毛をもった個体というのは、目立ちやすいことが多いのが実情です。野生の厳しい環境下では捕食者に真っ先に狙われてしまう対象になりがちなため、生き残るのが難しい形質とも考えられます。

その一方で、白変という形質が有利にはたらく環境もありますね。

\次のページで「白変種≠アルビノ」を解説!/

その通り!生息場所によっては白変種の方が生存に有利にはたらくことがあるのです。

ホッキョクグマやホッキョクウサギは、生まれる個体のほとんどが白い個体であるため、わざわざ白変種とよぶことは少ないですが…毛を白くする遺伝子が発現して白くなる、という点では、白変種と同じ仕組みといえます。

雪の降らないような環境に住む動物でも白変種がうまれるのは、白変させる遺伝子が存在しているからです。この説明として「動物にとって白変が有利にはたらく可能性があるために、白変させる遺伝子も潜在的に脈々と受け継がれているのではないか」と考える研究者もいます。白変させる遺伝子がのこっていれば、急に氷河期が来た時にも、種が存続できるかもしれませんからね。

それが紛らわしいのですが…実は、アルビノと白変種は異なる仕組みでおきる、まったく別の現象なのです。

白変種≠アルビノ

白変種は前述の通り、正常な遺伝子のはたらきによって生じます。一方、アルビノはメラニンという色素をつくる遺伝子が突然変異によって機能しなくなることで起きるのです。からだのすべての組織でメラニンがみられないため、白い肌、白い毛になります。

白変種とアルビノの見分け方

一見同じような形質に見える白変種とアルビノですが、その違いがはっきりと表れるのが”眼”です。白変種の個体では、メラニンをつくる色素は正常に機能しているため、眼の瞳孔(瞳)はその色素の沈着により黒くなります。アルビノ個体ではメラニンがつくられません。すると、瞳孔部分の血管の色が見えるようになるため、赤っぽい眼になるのです。

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なお、ヒトでもアルビノの形質をもって生まれてくる人がいますが、必ずしも「眼が赤い」とは言い切れないようです。虹彩(いわゆる黒目)の部分は、灰色や青色系など様々であることが多いのだといいます。メラニン色素の量だけでなく、他の色素や光の散乱などの具合で虹彩の色は決まってくるので、単純に「アルビノ=赤目」と考えてしまうのには注意が必要かもしれませんね。

\次のページで「よく知られる白変種」を解説!/

よく知られる白変種

白変種の個体はその珍しさや美しさから重要視されることがしばしばあります。日本でも、白変種を動物園などで飼育展示されている場合がありますので、気になる方はさがしてみましょう。

ホワイトライオン

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”百獣の王”でおなじみのライオンにも白変種がみられます。通称・ホワイトライオン。世界でも数百頭が飼育されていますが、野生化でもまれに確認されるそうです。アフリカではホワイトライオンを”神様の使い”と考えることがあるといいますが、それも納得の神々しさですね。

ホワイトタイガー

白い毛に黒い縞模様がはいるホワイトタイガーは、インドに生息するベンガルトラの白変種です。かつては自然界で見られることもあったといいますが、現在はベンガルトラ自体の個体数が減少したこともあり、飼育されているものにしか出会うことができないといわれています。

その神秘的な見た目も相まって、観光客にはとても人気があるのですが…福岡県の大牟田市動物園では、2018年に「現在飼育している個体以降はホワイトタイガーを飼育しない」という宣言をして話題になりました。

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ホワイトタイガーの子どもを残すためには、白変する遺伝子を確実にもつ白変種同士の交配が一番です。しかしながら、個体数が減り続けている現状では血縁関係の近い個体同士で交配をさせることになってしまいます。

近親交配の子どもは病気になりやすいなど、何らかの異常をもって生まれる個体が少なくありません。飼育する動物の健康を第一に考え、ホワイトタイガーの飼育を継続しない決断をしたのです。

シロクジャク

インドクジャクの白変種はシロクジャクとよばれます。この記事の上部に写真がありますのでご覧ください。インドやネパール、パキスタンなどで生息しています。やはり人間にとっては特別な存在であり、シロクジャクは”神聖な鳥”や”不死の象徴”などとみなされているそうです。

白変種をさがしてみよう

白変はあくまで遺伝的な現象であり、野生の動物でも白変種が見られる可能性があります。身近な環境にも目を凝らし、よく観察すれば白変種に出会えるかもしれません。

確実に白変種がみられるのは、やはり動物園や水族館。白変種の個体が飼育されている場面に出会ったならば、その体や毛色をよく観察してみましょう。自然の生み出した神秘的な存在に思いをはせてほしいと思います。

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理科生物生物の分類・進化

「白変種」はなぜ生まれる?アルビノとの違いは?その神秘的な見た目の秘密を現役講師がわかりやすく解説します!

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白変種の動物は、動物園や水族館、ときには野生下でもみることができる。「どんな仕組みで白変種がうまれるのか」や、「白変種とアルビノのちがい」などの気になる点を学んでいこうじゃないか。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

白変種とは?

白変種(はくへんしゅ)とは、からだの色素が少ないために、毛や羽、肌などが白色に近くなっている個体のことをさします。英語ではLeucism(リューシズム)。これはギリシャ語で「白」を意味する「leukos」からきている用語です。

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白変種が生じるしくみ

白変種になるかどうかを決めるのは、それぞれの個体がもつ遺伝子です。毛や羽、皮膚などを白くする遺伝子を親から受け継いだ子どもで、条件がそろうと白変種になります。

このような遺伝子は生物種によっていくつか存在するため、ひとつの遺伝子の話で説明できるものではありません。

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多くの場合、毛や羽、肌などを白くする遺伝子は劣性(潜性)形質であるため、両親から偶然その遺伝子をもらわないと、白変種にならないようです。白変種の数が決して多くないのはそのためでしょう。

ただ、自然界において白い羽や毛をもった個体というのは、目立ちやすいことが多いのが実情です。野生の厳しい環境下では捕食者に真っ先に狙われてしまう対象になりがちなため、生き残るのが難しい形質とも考えられます。

その一方で、白変という形質が有利にはたらく環境もありますね。

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