鏡を正面から見ると自分の姿が見える。斜めから見ると自分の姿は見えず、第三者(あるいは物)の姿が見える。鏡に映る相手を直視しているわけではなく「鏡越しに見ているだけだから相手は気づいていないでしょう」と思いがちですが、実は鏡に映る相手も「こちらの姿が見えている」。鏡を斜めから見た場合は「相手の姿のみ」見ることが出来るのです。なぜそうなるかを「反射の法則」に交えてみていこう。理系ライターのR175と解説していく。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許持ち。日常の身近な現象に結びつけて分かりやすい解説を強みとする。

1.鏡越しに見ているもの

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鏡の役割の1つは直接見えないモノを見ること。例えば、自分の姿は直接見えないので鏡を使って身だしなみのチェックなどをしますね。また見通しの悪い交差点やカーブでは死角になっているところを鏡で安全確認しますし、自動車のルームミラーやサイドミラーは後方の安全確認のために使います。自動車の後方は目視でも確認できますが、運転中はなるべく前方を見ていた方がよいわけで、前方を向いていると後方は直接確認できません。それを解決してくれるのが、サイドミラー、ルームミラーです。

鏡で見えるのはどこか

鏡で見えるのはどこか

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鏡を正面から見たとき自分の姿が見えるのは当然ですが、斜めから見た時に見えている先はどこなのでしょうか。光の反射の法則を使ってみていきましょう。

2.屈折と反射~光の進路は何処へ~

2.屈折と反射~光の進路は何処へ~

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本記事では鏡での反射を主な扱いますが、反射前後の光はどのような軌跡をたどるのか?そこで大切になるのが屈折率という用語で、記事前半のキーワードです。

鏡に到達するまでは空気中を、到達後は鏡の中を移動。光が通る媒質(ここでは空気、鏡)の境界面では屈折が起こって進行方向が変わるもの。屈折率と進み方には以下のような関係があります(スネルの法則)。屈折率が大きい物質は光が進みにくいということを意味し、光は進みにくい分「近道」をした結果進む角度が変わるのです。

仮に両者とも屈折率が同じなら境界面で屈折は起こらず直進しますね。空気中を移動している間に突然屈折することがないのはこのことからも分かります。

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反射率

反射率

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光がたどる媒質間の屈折率が異なる場合は「反射率も考える必要があります。反射率の定義は以下の通りで、「反射率」で出てくるパラメータが「屈折率」なので、結局は屈折も絡んでくるわけです。全く同じ屈折率でない限り多少は反射するということであり、屈折率の差が大きいと反射率も大きくなります。

透明でない物質での複素屈折率

透明でない物質での複素屈折率

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さて、透明ではない物質の場合、以下のように屈折率の複素成分も考える必要があります。なぜならこららの物質では光の「吸収」を無視出来ないから。複素成分は吸収係数です。一般的な鏡の表面はガラスでその奥に銀やアルミが貼られていますが、このような透明ではない物質は複素成分が実数成分に比べてかなり大きいため、実数成分を無視して考えられます。屈折率の虚数部分だけを考えると反射率R≒1とみなせるわけです。

複素数を使う理由

複素数を使う理由

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屈折率を複素数表示する意義について簡単に触れておきます。

複素数を使うのは三角関数と関連付けやすいから。オイラーの式から自然対数eの複素数乗の形は三角関数に変換出来ます。

 

光の強度はeの屈折率乗に反比例するという定義で、屈折率が実数+虚数ならば、光の強度はeの実数乗×eの虚数乗。eの実数乗の部分では振幅の減衰を表現出来、eの虚数乗は三角関数。つまり、eの(実数+虚数)乗は減衰も加味した三角関数になるということ。

3.光が反射する時の性質

モノを見るために、反射した光の情報を目が認識しているわけですが、ここからは「光の反射」に焦点を絞っていきましょう。

そもそも光はどんな姿をしているか。有名な話で、光は粒子性と波動性どちらももつというのがあります。言葉通り、波と粒子どちらも性質も持つということ。それについては種々の実験から確認されています。この記事では光の粒子性を利用して解説していきましょう。つまりは光を微小な粒の集合と考えるわけです。

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4.反射

4.反射

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前述の通り、光は粒の集まりと考えてOKで、光が反射する時の動きはボールが壁手にぶつかって跳ね返るときの原理と同じです。光を構成する微小な粒子(光子と呼ばれる)をまずはボールと見立てましょう。ボールを壁にぶつけた後どのような動きをするでしょうか。結論から言うと以下のイラスト通りです。

ボールの初期位置をA、ぶつかる点をP、Pから壁に対して引いた垂線とAから壁に平行に引いた線との交点をOとし、ぶつかった後のボールの軌跡と直線OAの交点をBとしましょう。

入射角θと反射角θ'をイラストのように定義した時、θ=θ'となるのは直感的に分かると思います。光を鏡に反射させた時も同様の挙動をし、これが反射の法則と呼ばれるもの。なぜこのような挙動になるかをもう一歩踏み込んで考えてみましょう。

衝突と運動量保存

物体を衝突させた後の速度はどうなるのか?質量m、速度vのボールを質量Mの壁に垂直に当てるとしましょう。衝突後のボールの速度をv'、壁の速度をV'とした時以下のような式が成り立ちます。

mv+MV=mv'+MV'

衝突前後で運動量(質量×速度)の合計が等しいと言う意味です。壁は固定されていて衝突後も動かないと考えると上式にて、V'=0から、v=v'となることが分かりますね。

速度の大きさは同じですが向きは逆向きになり、結果的にボールは衝突前と同じ速度で左向きに運動することでしょう。

反発係数

衝突前後の速度は反発係数eを用いて以下のような表し方がされます

V'-v'=-e(V-v)

V',v':衝突後の速度、V,v:衝突前の速度、e:反発係数で0≦e≦1の範囲の値です。今回壁の速度Vはどちらも0とし、衝突前後で運動エネルギーのロスが生じないことを仮定してe=1としています。eの値が小さくなるにつれ、運動ロスが大きいことを意味し、e=0なら衝突後の速度は0、つまり運動エネルギーが完全に失われるということです。

ボールの跳ね返り

ボールの跳ね返り

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ボールを壁に向かって斜めからぶつけた時どのような動きは、結論から言うと直感通り、θ=θ'となるように跳ね返るわけですが、ここでは敢えて上述のように「反発」の考え方を使い、より物理の内容に関連付けたいと思います。

 

ボールの斜め方向の速度vを水平、垂直方向に分解しましょう。

水平方向はv・cosθ、垂直方向はv・sinθで、このうち反発に関わるのは水平方向のv・cosθのみ。衝突による運動エネルギーロスはないと考えると反発係数e=1で、衝突後の速度v'=-v・cosθ。垂直方向は衝突に関係ないのでそのまま下向きにv・sinθ。

その状態で直線OA上を通過した時の点をBとします。

 

直線OAを通過してから壁にぶつかるまでの時間t1と壁にぶつかってから再び直線OAを通過するまでの時間t2は等しい。よって、OA=v・sinθ・t1=v・sinθ・t2=OBより、OA=OBとなりボールは直線OPに対称な軌跡を取ることが証明されました(直感通り)。

 

4.鏡を通してみているものは

以上、反射の法則より鏡を通してい見えるのは入射角度と反射角度が等しくなる地点です。鏡の真正面(鏡面に対し直角方向)からだと自分の姿を自分で見ることができ、鏡を斜め方向から見た場合は反射の上記に従ったところが見えます。鏡で見えている相手から見えるのはこちらです。お互い自分の姿は見えず、相手の姿だけ見える状態になります。

鏡で見ているものと反射の法則

鏡はほとんどの光を反射させる性質があります。正面から見れば自分の姿が見え、斜めから見れば入射角と反射角が等しくなる地点が見えるもの。この法則に従えば鏡から見える相手が見えるのはこちらの姿。お互いがお互いの姿を見れます。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

3分で簡単「反射の法則」直接見えないところも見ることができる?理系ライターがわかりやすく解説!

鏡を正面から見ると自分の姿が見える。斜めから見ると自分の姿は見えず、第三者(あるいは物)の姿が見える。鏡に映る相手を直視しているわけではなく「鏡越しに見ているだけだから相手は気づいていないでしょう」と思いがちですが、実は鏡に映る相手も「こちらの姿が見えている」。鏡を斜めから見た場合は「相手の姿のみ」見ることが出来るのです。なぜそうなるかを「反射の法則」に交えてみていこう。理系ライターのR175と解説していく。

ライター/R175

関西のとある国立大の理系出身。学生時代は物理が得意で理科の教員免許持ち。日常の身近な現象に結びつけて分かりやすい解説を強みとする。

1.鏡越しに見ているもの

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鏡の役割の1つは直接見えないモノを見ること。例えば、自分の姿は直接見えないので鏡を使って身だしなみのチェックなどをしますね。また見通しの悪い交差点やカーブでは死角になっているところを鏡で安全確認しますし、自動車のルームミラーやサイドミラーは後方の安全確認のために使います。自動車の後方は目視でも確認できますが、運転中はなるべく前方を見ていた方がよいわけで、前方を向いていると後方は直接確認できません。それを解決してくれるのが、サイドミラー、ルームミラーです。

鏡で見えるのはどこか

鏡で見えるのはどこか

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鏡を正面から見たとき自分の姿が見えるのは当然ですが、斜めから見た時に見えている先はどこなのでしょうか。光の反射の法則を使ってみていきましょう。

2.屈折と反射~光の進路は何処へ~

2.屈折と反射~光の進路は何処へ~

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本記事では鏡での反射を主な扱いますが、反射前後の光はどのような軌跡をたどるのか?そこで大切になるのが屈折率という用語で、記事前半のキーワードです。

鏡に到達するまでは空気中を、到達後は鏡の中を移動。光が通る媒質(ここでは空気、鏡)の境界面では屈折が起こって進行方向が変わるもの。屈折率と進み方には以下のような関係があります(スネルの法則)。屈折率が大きい物質は光が進みにくいということを意味し、光は進みにくい分「近道」をした結果進む角度が変わるのです。

仮に両者とも屈折率が同じなら境界面で屈折は起こらず直進しますね。空気中を移動している間に突然屈折することがないのはこのことからも分かります。

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