「人こそ人の鏡」
「人の振り見て我が振り直せ」と同様に、他人は自分を映す鏡のようなものだから、他人の言動を参考に自分の行いを正すべし、という意味です。
「前車の覆るは後車の戒め」
「ぜんしゃのくつがえるはこうしゃのいましめ」と読みます。前を行く車がひっくり返ったら、それは道に大きな石があったり、ぬかるんでいたりと、何らかの原因があってのことでしょう。後から行く車はそれを見て、注意したり危険を避けたりすることができますね。このように先人の失敗を材料に、後の人が参考にする様子を表す言葉です。「前車、後車」を「前者、後者」と書き間違える例を見たことがありますが、由来を知ればそんなミスはしなくて済みますね。
・品行方正で優秀な彼でもあんな失敗をするんだな。人の振り見て我が振り直せというから、僕も気をつけよう。
・受験に失敗した姉を反面教師にして育ったので、妹は早くから学習習慣が身についた。
・人こそ人の鏡というからね。教室で人の悪口ばかり言う友達の醜悪な顔を見て、自分はそうならないように気をつけようと思ったよ。
・前車の覆るは後車の戒めというだろう。歴史を学ぶことは、自分の生き方を考えるうえでも大いに参考になるんだぞ。
「他山の石」の対義語は?
では、「他山の石」と反対の意味を表す言葉にはどんなものがあるでしょうか。
「爪の垢を煎じて飲む」
「つめのあかをせんじてのむ」と読みますね。親から「○○ちゃんの爪の垢を煎じて飲ませたいわ」などと言われたことがある人もいるのではないでしょうか。この場合、「○○ちゃん」は、何らかの点で優れている例として引き合いに出されていたはずです。
このように、優れた人の爪の垢を煎じて飲むことで、その人にあやかって優秀になれるように心がけることをいう慣用句。「他山の石」と異なり、比較し参考にする相手が格段に優秀な場合に用います。
「薫陶を受ける」
優れた人格の人から良い影響を受けて成長することを意味するのが「薫陶(くんとう)を受ける」です。こちらも「他山の石」と違って、優秀な人に影響を受ける場合に用います。
薫陶を分解すると、薫は文字どおり「良い香り」のこと、陶は「陶器」のことで、合わせるとお香の香りをしみこませ、土を練って陶器を作り上げること。良いものに囲まれて自然と能力や人格が高まるようなイメージです。ビジネスシーンなどでも、「大学では○○先生の薫陶を受けました」などと使うことがありますよ。
・中学生にもなって親の手伝いもしないなんて困った子だよ。毎日夕飯作りをしている隣のお嬢さんの爪の垢を煎じて飲ませたいもんだ。
・世界的な学者の薫陶を受けただけあって、彼の論文はどこに出しても恥ずかしくないね。
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