ドイツナチスドイツヨーロッパの歴史世界史

ナチスドイツはなぜ「ユダヤ人」を憎悪した?その複雑な関係を元大学教員が5分でわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。第一次世界大戦の敗北後のドイツでは反ユダヤ主義が急増。ナチスドイツのホロコースト政策により暴力行為や虐殺の対象となってきた。今でもユダヤ人は偏見の目で見られる対象で、排除を要求する暴力的な行動にさらされている。最近のドイツでも、とくに極右団体にとっては未だにユダヤ人は憎悪の対象だ。

同党はどうしてユダヤ人の存在に反発を感じてきたのだろうか。ナチスドイツが表明したアーリア人至上主義の主張などを踏まえながら、ヘイト行動の背景を世界史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/ひこすけ

アメリカ文化を専門とする元大学教員。反ユダヤ主義の高まりをうけてドイツの政府高官が、ユダヤ教徒は伝統的な帽子キッパを着用しないように発言したというニュースが流れた。このときナチスの過去が終わっていないことにショックを受けたのを覚えている。ユダヤ人に対する反発や憎悪はどこから来ているのか、関連する内容をまとめてみた。

そもそもユダヤ人とは何?

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By deror_aviOwn work, CC BY-SA 3.0, Link

世界には、日本人、アメリカ人、中国人、フランス人など、いろいろな国民が存在します。ユダヤ人は、それらと同じように思えますが、実は必ずしもそうではありません。ユダヤ教を信仰する宗教集団と、その血統を引く子孫のことを、ユダヤ人と総称します。

ユダヤ人とは宗教的民族集団のこと

ユダヤ人を英語にするとJew。ユダヤ教を信仰している宗教集団のことを指します。ユダヤ教の経典となるのが、タナハとミクラーと呼ばれる書物。キリスト教徒にとって「旧約聖書」にあたる書物です。ただし、成立するプロセスが異なるため、内容の順番などは「旧約聖書」とは異なるかたちになりました。

ユダヤ人は、聖典よりも行動や実践を重視している点がキリスト教徒と異なります。聖典を読んだり研究したりする、食事とトイレのあとに祈る、食物を清浄する、安息日をもうけるなどが該当。ユダヤ教に改宗する意志があっても、手続きに時間がかかることも特徴です。

ナチスはユダヤ人を「人種」と捉えた

歴史的にユダヤ人は宗教集団のことを意味しますが、ヒトラーが率いるナチスドイツはユダヤ人を人種と捉えて迫害しました。ヒトラーが関心を持っていたのが優生学。よい遺伝子を残すための研究をする学問のひとつです。それを根拠に、優性な民族はインド・ヨーロッパ語族を包括するアーリア人であり、ドイツはアーリア人により支配されるべきだと考えました。

そこでヒトラーは、アーリア人が支配する国をつくるために、劣性民族であるユダヤ人を排除する政策を打ち出します。ナチスが考えるユダヤ人の基準はあいまい。欧州に純粋なユダヤ人はそれほど多くなく、ユダヤの血が半分、3分の1、4分の1というように、時期により変化しました。

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イスラエルの国民をユダヤ人とすると、宗教上のユダヤ人と一致しなくなる。ユダヤ人とされる人々は欧州を中心にいろいろなところに点在。なんとなくユダヤ人と言ってしまうが、実際は定義することが難しい曖昧な民族の区分というわけだ。

\次のページで「ユダヤ人迫害はキリストの死後から始まる」を解説!/

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