今回の記事のテーマは「ハニカム構造」です。建築学や材料工学の分野でもよく聞く用語ですが、もともとハニカム構造は自然界や生物の中によくみられる構造なんです。具体例とともに、その特徴や関連する応用技術も見ていこう。大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ハニカム構造とは?

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ハニカム構造とは、六角形や六角柱をすき間なく並べてできる構造のことをさす用語です。”ハニカム”を英語で書くと”honeycomb”。これは蜂の巣を意味します。小さな六角形の部屋がたくさん集まってできている蜂の巣は、まさにハニカム構造のお手本です。後述しますが、自然界には蜂の巣以外にもたくさんのハニカム構造が見つかります。また、私たちの身の回りの製品にも応用されることの多い構造なんです。

そうなんです!このハニカム構造。何気ない形に見えますが、実はすごい秘密が隠れています。

ハニカム構造の特徴

平面を埋め尽くす六角形

ハニカム構造の利点について考える前に、ちょっとした図形の問題を考えてみましょう。あなたの目の前に、何ものっていない机があるとします。同じ大きさ、同じ形のタイルを1種類だけ使い、机の表面全体を埋め尽くすように並べるとしたら、どんな図形がいいでしょうか?正三角形や正四角形(正方形)、正六角形などのタイルであれば、すき間なく机を埋め尽くすことができますね。

\次のページで「少ない材料で平面を埋め尽くせる」を解説!/

正三角形や正四角形、正六角形など、平面を埋め尽くせるそれぞれの図形が同じ表面積だった場合、その外周が一番短くなるのはどの図形だと思いますか?

正解は正六角形です。同じ面積を埋めるのに最も外周が短いということは、それが部屋のような構造物だった場合、壁をめぐらせる長さが最小であるということになります。

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反対に、外周の長さを同じにした図形である面積の平面を埋め尽くそうとする場合。この時は、正六角形がもっとも少ない数で済むことになります。最小の数のタイルで机を埋め尽くせるのは、正六角形なのです。

少ない材料で平面を埋め尽くせる

正六角形の壁をつくり、それを連続させると、少ない壁の材料で平面を効率よく埋めることができます。前述のように、円であればできてしまうすき間も生じません。ミツバチなどは限られたスペースを効率よく、しかも少ない材料で利用できるような正六角形を自然に利用しているということになりますね。

構造を維持できるけど軽い

今度は逆に、既に存在している平面の板に孔をあけていくことを考えてみましょう。一枚の板の強度をなるべく保ったまま、なるべく広く穴をあけていくためには、ハニカム構造がもっとも効率的な形になります。穴をあけるほど板は軽くなっていきますので、ハニカム構造をもった板は強いわりに軽量という特徴をもつのです。

衝撃に強い

さらに驚いたことに、ハニカム構造は衝撃にも強い構造であることがよく知られています。正六角形は円に形状が近く、一方向からの衝撃も他の面に広く分散することができるのです。

\次のページで「立体的なハニカム構造」を解説!/

立体的なハニカム構造

ハニカム構造が立体的になったもの…つまり、正六角柱があつまったものは、単にハニカムとよばれることが多いようです。平面的なハニカム構造とおなじように衝撃に強く、少ない材料で構造を維持することができます。

自然にみられるハニカム構造

ハニカム構造は、自然界でよくみられる構造として知られています。蜂の巣以外のどんなものがあるか、例をご紹介しましょう。

亀の甲羅

亀の甲羅の形をよく見てみましょう。完ぺきな正六角形ではありませんが、近い形が集まって板のようになっています。これも、自然界で見られるハニカム構造の例としてよく挙げられるんです。

昆虫の眼

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昆虫の眼は複眼とよばれ、私たちの眼とは大きく異なる構造をしています。小さな個眼とよばれる眼がたくさん集まってできているのです。この、個眼の集まりにハニカム構造がみられます。限られた面積にできるだけ多くの個眼を配置しようとすると、自然とハニカム構造になってしまうのかもしれませんね。

人工物にみられるハニカム構造

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ハニカム構造はその特性から、工業的につくられる素材や製品にも数多く応用されています。

航空機の素材

ハニカム構造の頑丈さを生かした材料が航空機の素材に使われています。飛行機のような機体には、気圧や速度の変化に耐えられる強さが必要ですが、それと同時に軽さも不可欠です。そのため、1枚の厚い金属板ではなく、複数の金属板を重ねたサンドイッチ構造の材料が使われています。

サンドイッチ構造の内部に、アルミニウム合金などでできたハニカムを芯材として挟み込むことで、強くて軽い素材を実現しているのです。

\次のページで「人工衛星の素材」を解説!/

CompositeSandwich.png
George William Herbert - Own work, produced by George William Herbert, CC 表示-継承 2.5, リンクによる

人工衛星の素材

ハニカム構造は地球を飛び出し、宇宙で活躍する人工衛星にも応用されています。本体に使われているのがハニカムをはさんだサンドイッチ構造のパネルです。これもやはり、軽くて強いというハニカムの特性がいきています。人工衛星の打ち上げは、重量が大きくなるほど費用も高くなってしまうのだそうです。

建築物の素材

さまざまな建物をつくる材料としてもハニカム構造は優秀です。頑丈さが必要なのはもちろんですが、ここでも”軽さ”が大きな意味を発揮します。軽い素材であれば、それまで実現できなかったような構造の壁や屋根などをつくれる可能性が出てくるのです。

さらに、壁と壁の間にハニカムを入れ込むことで、強度を保ったまま、空気の層を壁の中につくることができます。これが防音効果断熱効果を発揮することになるのです。

ハニカム構造を探そう!

今回ご紹介したハニカム構造やハニカムの応用例はほんの一部。ほかにも様々な場所にハニカム構造が利用されています。自然にある物質や生物の体、人工的につくられた製品…ほんの少し形を意識してみましょう。思わぬところでハニカム構造がみつかるかもしれません。

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理科環境と生物の反応生物

自然にも人工物にもみられる「ハニカム構造」とは?現役講師が5分でわかりやすく解説!

今回の記事のテーマは「ハニカム構造」です。建築学や材料工学の分野でもよく聞く用語ですが、もともとハニカム構造は自然界や生物の中によくみられる構造なんです。具体例とともに、その特徴や関連する応用技術も見ていこう。大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ハニカム構造とは?

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ハニカム構造とは、六角形や六角柱をすき間なく並べてできる構造のことをさす用語です。”ハニカム”を英語で書くと”honeycomb”。これは蜂の巣を意味します。小さな六角形の部屋がたくさん集まってできている蜂の巣は、まさにハニカム構造のお手本です。後述しますが、自然界には蜂の巣以外にもたくさんのハニカム構造が見つかります。また、私たちの身の回りの製品にも応用されることの多い構造なんです。

そうなんです!このハニカム構造。何気ない形に見えますが、実はすごい秘密が隠れています。

ハニカム構造の特徴

平面を埋め尽くす六角形

ハニカム構造の利点について考える前に、ちょっとした図形の問題を考えてみましょう。あなたの目の前に、何ものっていない机があるとします。同じ大きさ、同じ形のタイルを1種類だけ使い、机の表面全体を埋め尽くすように並べるとしたら、どんな図形がいいでしょうか?正三角形や正四角形(正方形)、正六角形などのタイルであれば、すき間なく机を埋め尽くすことができますね。

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