この記事では「目から鱗」について解説する。

端的に言えば、目から鱗の意味は「何かのきっかけで急に物事が理解できるようになること」です。このことばは、意外にも新約聖書に由来している。語源も知ってニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「目から鱗」の意味や例文、類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。言葉の美しさ、面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「目から鱗」の意味・使い方は?

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「目から鱗」という言葉自体はご存知の方が多いと思いますが、日本のことわざか中国の故事成語が語源だと思っていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は「目から鱗」は新約聖書に出てくる言葉なのです。漢字で「鱗」と表記したり、ひらがなで「うろこ」と表記したり、「目から鱗が落ちる」と表現されたりします。

「目から鱗」の意味は「一気に疑問が解けること」 

まずは、辞書で意味を調べてみましょう。

新約聖書の「使徒行伝」から出たことば。何かがきっかけとなって、急に物事の事態がよく見え、理解できるようになるというような場合のたとえとして用いられる。

出典:精選版 日本国語大辞典「目から鱗が落ちる」

「目から鱗」の意味は、何かのきっかけで一気に疑問が解け、物事が理解できるようになるということです。                

「目から鱗」と言う場合もありますし、「目から鱗が落ちる」と言う場合もありますね。ちなみに平成19年度の「国語に関する世論調査」(文化庁)では、「目から鱗が落ちる」と「目から鱗が取れる」のどちらを使うかという問いに、80.6%の人が「目から鱗が落ちる」、8.7%の人が「目から鱗が取れる」を使うと答えています。正しい言い方は「目から鱗が落ちる」ですので、間違えないようにしましょう。

「目から鱗」の例文で使い方を学ぼう!

次に例文を見てみましょう。

1.転職セミナーで履歴書の書き方を教わったが、自分のアピールポイントを企業の視点で考えるという内容は、目から鱗だった。
2.これまでは、過去のデータから売上の予想を立てていたが、現場の人たちの意見をじかに聞いて、目から鱗が落ちる思いだった。

1.は「目から鱗」、2.は「目から鱗が落ちる」を使っていますが、どちらも何かのきっかけによって、物事が理解できるようになったという意味です。

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「目から鱗」の語源は新約聖書!

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「目から鱗」は、新約聖書の「使徒行伝」第9章18節、「サウロの回心」というエピソードが元になっています。

「サウロの回心」とは…

厳格なユダヤ教徒のサウロは、キリスト教徒を迫害していました。迫害を逃れた信者を追ってサウロがダマスコに向かっているとき、突然天から光が射して彼を照らします。そして「サウロ、なぜ私を迫害するのか。私はあなたが迫害しているイエスである」という声を聴き、目が見えなくなりました

一方、イエスの弟子のアナニヤは「サウロのところに行きなさい」という主の幻を見ます。アナニヤは「サウロは迫害者なのになぜ?」と疑念を持ちますが、「あの人は、異邦人たちに私の名を伝える器として私が選んだ」という言葉を聞き、主の命令に従いします。

迫害者から一転!キリスト教の伝道者へ

新約聖書の口語訳を見てみましょう。

そこでアナニヤは、出かけて行ってその家にはいり、手をサウロの上において言った、「兄弟サウロよ、あなたが来る途中で現れた主イエスは、あなたが再び見えるようになるため、そして聖霊に満たされるために、わたしをここにおつかわしになったのです」。するとたちどころに、サウロの目から、うろこのようなものが落ちて、元どおり見えるようになった。

出典:国際聖書協会「使徒行伝」

目から鱗が落ちたサウロは、この出来事がきっかけとなってバプテスマ(洗礼)を受けます。サウロはヘブライ名ですが、ギリシャ名のパウロを名乗るようになり、迫害者から一転して熱心なキリスト教の伝道者になりました。

神の声を聞き、見えなくなった目が元どおり見えるようになるという強烈な体験によって、心の目を鱗のように覆っていた固定観念がなくなり、キリスト教を理解できるようになったのでしょう。

「目から鱗」の類義語は?

次は「目から鱗」にどんな類義語があるか、見てみましょう。

「頓悟する」

「頓悟」は「とんご」と読みます。仏教用語であまり見慣れない言葉ですね。「頓」は時を移さずその場で、立ちどころになどの意味があり、「悟」は是非がはっきり判断できる、迷いがなくなるなどの意味があります。「頓悟」は、長い修行をすることなく、一気に悟りを開くことです。

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「インスパイア」

「インスパイア」は、中へという意味の「in」と息吹を意味する「spirare」で、思想を吹き込む、啓発する、ひらめきや刺激を与えるなどの意味があります。

「目が開かれる」「開眼する」

「目が開かれる」はそれまで知らなかったことに気づいたり、真理を悟ったり、新しい境地に達すること。「開眼」は「かいげん」と読み、真理を悟ること芸の極致を着極めることをいいます。良く見えるようにするという意味の場合は「かいがん」と読みますね。

「腹に落ちる」「腑に落ちる」

「腹に落ちる」は、なるほどと納得することです。名詞で「腹落ち」と表現することもありますね。「腑に落ちる」は、納得できる、理解できるという意味です。納得できない、釈然としない場合は、否定形の「腑に落ちない」という形で使われています。

「膝を打つ」「膝をたたく」

何かに感心したとき何か思い当たったときなど、思わず手で膝をたたくことがあります。「ポンと膝を打つ」「思わず膝をたたく」という経験、どなたでもあるのではないでしょうか。

「目から鱗」の英訳は?

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「目から鱗」を英語ではどのように表現するか見てみましょう。

「The scales fall from one’s eyes.」

The scales fall from one’s eyes.
目から鱗が落ちる。

\次のページで「「eye-opener」」を解説!/

「The scales fall from one’s eyes.」は英語でも「突然重要なことを悟る」という意味で使われます。「scale」はウロコという意味ですが、ほかに目盛り、ものさし、天秤などの意味もありますよ。

「eye-opener」

It was a real eye-opener.
それは目からウロコの体験だった。

「eye opener」は、目を開かせる体験、驚くべき体験などの意味です。

新約聖書の語源を知って「目から鱗」を使いこなそう!

この記事では、「目から鱗」についての意味、使い方、類義語から英語での表現を説明しました。

「目から鱗」の意味は、何かのきっかけで一気に疑問が解け、物事が理解できるようになるということです。単に目が見えるようになるという意味ではなく、固定観念や先入観がなくなり、物事が理解できるようになるという意味ですね。語源は、新約聖書の「使徒行伝」第9章18節の「サウロの回心」でした。

この記事を読んで、目から鱗が落ちるように一気に「目から鱗」の使い方がわかるといいですね。語源も知って「目から鱗」を使いこなしてくださいね。

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国語言葉の意味

どうして”鱗”?「目から鱗」の意味や由来・使い方・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「目から鱗」について解説する。

端的に言えば、目から鱗の意味は「何かのきっかけで急に物事が理解できるようになること」です。このことばは、意外にも新約聖書に由来している。語源も知ってニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「目から鱗」の意味や例文、類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。言葉の美しさ、面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「目から鱗」の意味・使い方は?

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「目から鱗」という言葉自体はご存知の方が多いと思いますが、日本のことわざか中国の故事成語が語源だと思っていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は「目から鱗」は新約聖書に出てくる言葉なのです。漢字で「鱗」と表記したり、ひらがなで「うろこ」と表記したり、「目から鱗が落ちる」と表現されたりします。

「目から鱗」の意味は「一気に疑問が解けること」 

まずは、辞書で意味を調べてみましょう。

新約聖書の「使徒行伝」から出たことば。何かがきっかけとなって、急に物事の事態がよく見え、理解できるようになるというような場合のたとえとして用いられる。

出典:精選版 日本国語大辞典「目から鱗が落ちる」

「目から鱗」の意味は、何かのきっかけで一気に疑問が解け、物事が理解できるようになるということです。                

「目から鱗」と言う場合もありますし、「目から鱗が落ちる」と言う場合もありますね。ちなみに平成19年度の「国語に関する世論調査」(文化庁)では、「目から鱗が落ちる」と「目から鱗が取れる」のどちらを使うかという問いに、80.6%の人が「目から鱗が落ちる」、8.7%の人が「目から鱗が取れる」を使うと答えています。正しい言い方は「目から鱗が落ちる」ですので、間違えないようにしましょう。

「目から鱗」の例文で使い方を学ぼう!

次に例文を見てみましょう。

1.転職セミナーで履歴書の書き方を教わったが、自分のアピールポイントを企業の視点で考えるという内容は、目から鱗だった。
2.これまでは、過去のデータから売上の予想を立てていたが、現場の人たちの意見をじかに聞いて、目から鱗が落ちる思いだった。

1.は「目から鱗」、2.は「目から鱗が落ちる」を使っていますが、どちらも何かのきっかけによって、物事が理解できるようになったという意味です。

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