今回は「活性化状態」について解説していきます。

活性化状態とは、化学反応が進行する過程でみられる現象の一つです。活性化状態という概念を理解することで、化学反応のメカニズム、反応速度、触媒などの理論もスムーズに学習することができるはずです。それゆえ、反応速度論について学びたいならば、ぜひとも知っておきたい概念だと言える。ぜひ、この機会に活性化状態についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

化学反応の仕組みについて理解しよう

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この記事のメインテーマは活性化状態です。活性化状態とは、化学反応のメカニズムを語る上で、必要用不可欠な概念ですよ。ですから、活性化状態について理解を深めるためには、化学反応の仕組みについても同時に学習しなければなりません。このようなことを考慮して、記事の前半では化学反応の仕組みを説明し、後半では本題である活性化状態について説明します。

ここでは、水素分子とヨウ素分子からヨウ化水素が生成される反応を例にとって、化学反応の仕組みについて解説しますね。活性化状態について学ぶ際に、必要となる用語や名称等が登場するので、注意深く読んでみてください。それでは、早速解説をはじめていきますね。

原子や分子の運動

原子や分子の運動

image by Study-Z編集部

まずは、気体の水素分子とヨウ素分子を容器内に封入します。封入直後は、反応が進んでいないので、両者は別々に存在しているのです。このとき、気体状態にある水素分子とヨウ素分子が、容器中を縦横無尽に飛び回っています

このように、分子や原子が飛び回っている現象のことを、熱運動といいますよ。また、気体の温度が上昇すると、熱運動が激しくなります。これに伴い、分子や原子のもつ運動エネルギーは大きくなりますよ。

反応物の衝突と一体化

反応物の衝突と一体化

image by Study-Z編集部

気体の水素分子とヨウ素分子を容器に封入してから時間が経過すると、水素分子とヨウ素分子の反応がはじまります反応がはじまるためには、容器内を飛び回っている水素分子とヨウ素分子が衝突し、一体化する必要があるのです

水素分子とヨウ素分子の衝突は偶然に生じます。さらに、これらの分子が衝突した後、両者が結合した状態となり一体化することがありますよこのように一体化するためには、反応熱とは関連のない、余分なエネルギーが必要になることが知られています。反応熱は、熱化学方程式に表記されるエネルギーですよね。

水素分子とヨウ素分子が反応するときに、各分子がこのような状態になる訳ではないのです。2つ以上の分子が一体化する現象は、活性化状態について考える際にも非常に重要になるので、覚えておきましょう

生成物の完成

生成物の完成

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水素分子とヨウ素分子が一体化すると、その後に、生成物のヨウ化水素が生じます。このとき、一体化した分子が、再度2つの分子にわかれますよ。ですが、先ほどとは違い、水素分子とヨウ素原子が1つずつ含まれた分子が2つ生じます。この分子がヨウ化水素なのです。

水素分子とヨウ素分子からヨウ化水素が生じる反応は、H2+I2→2HIという単純な化学反応式で表現されます。ですが、実際には何段階にもわたる複雑な現象を経て、反応が進むのです。以上が、化学反応のメカニズムの簡潔な説明ですよ。

\次のページで「活性化状態について学ぼう!」を解説!/

活性化状態について学ぼう!

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ここまでは、主に化学反応のメカニズムについてご紹介してきました。ここからの内容は、いよいよ本題の活性化状態についてとなります。活性化状態という言葉の意味をしっかりと理解できるような説明を心がけますね。

また、活性化状態と関わりの深い化学の用語や単語についても説明していきます。これらが互いにどのような結びつきをもっているかを考えてみましょう。それでは、解説をはじめていきます。

活性化状態とは?

先ほど、化学反応のメカニズムを説明したときに、反応の途中で2つ以上の分子が一体化する瞬間があることを記述しました。まさに、この状態が活性化状態です。

複数の分子や原子がお互いに衝突した後も、これらが離れずにやや弱い結合力を保っているので、このような現象が生じます。また、反応の過程で活性化状態を経る理由はどのようなものでしょうか?このような質問への回答としては、活性化状態を経ることで最も効率よく反応が進むからといったものが適切です。

活性化エネルギーについて

活性化状態に非常に関わりの深い概念として、活性化エネルギーというものがあります。活性化エネルギーは、反応する物質を活性化状態に変化させるために必要な余分なエネルギーのことをさしますよ。発熱反応と吸熱反応のどちらの場合であっても、活性化エネルギーが存在します。また、活性化エネルギーは各化学反応において固有の値をとることが知られていますよ

ですが、活性化エネルギーを減らす方法も存在します。それは、触媒を用いるという方法です。反応物に触媒を添加することで、従来よりも低い活性化エネルギーで反応を進行させることができます。つまり、触媒を用いることで、より少ないエネルギーで化学反応を起こさせることができるのです。このような理由から、触媒の使用は省エネルギー化の手法として考えられています。それゆえ、今日行われている最先端の研究にも触媒をテーマとしたものが多数ありますよ

\次のページで「反応速度と活性化状態の関係」を解説!/

活性化状態について学ぶときには、活性化エネルギーについても同時に理解しろ。

反応速度と活性化状態の関係

最後に、反応速度と活性化状態の関係について考えていきましょう。反応速度とは、化学反応が進行する速さのことです。化学反応は活性化状態を経て、進行します。それゆえ、化学反応の速さを高めるためには、反応物の分子や原子などがより速く活性化状態に至るように工夫すれば良いのです

また、活性化状態に至るためには、反応物の粒子が活性化エネルギーを得る必要があります。以上のことから、反応速度を高めるには、加熱などを行って活性化エネルギーを獲得する粒子の数を増やすことが有効だと言えますね

このような理論を数式などを用いて議論する学問のことを反応速度論と呼んでいますよ。当然のことながら、この学問では活性化状態の概念が非常に重要になります。反応速度と活性化状態は切り離すことができない概念なのですね

活性化状態について学ぶ意義

化学反応の仕組み、反応速度、触媒といったことについて考察する際に、活性化状態の概念は非常に重要になります。これらは、古典的な物理化学の理論でありながら、現代の最先端の研究でも用いられているものです。

それゆえ、活性化状態について学ぶことは基礎的な物理化学の知識を深めるだけでなく、実用的な工業化学について知ることにもつながると言えます。ぜひ、この記事を読んで、活性化状態についての理解を深めてみてください。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単「活性化状態」具体例を交えて理系学生ライターが徹底わかりやすく解説!

今回は「活性化状態」について解説していきます。

活性化状態とは、化学反応が進行する過程でみられる現象の一つです。活性化状態という概念を理解することで、化学反応のメカニズム、反応速度、触媒などの理論もスムーズに学習することができるはずです。それゆえ、反応速度論について学びたいならば、ぜひとも知っておきたい概念だと言える。ぜひ、この機会に活性化状態についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

化学反応の仕組みについて理解しよう

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この記事のメインテーマは活性化状態です。活性化状態とは、化学反応のメカニズムを語る上で、必要用不可欠な概念ですよ。ですから、活性化状態について理解を深めるためには、化学反応の仕組みについても同時に学習しなければなりません。このようなことを考慮して、記事の前半では化学反応の仕組みを説明し、後半では本題である活性化状態について説明します。

ここでは、水素分子とヨウ素分子からヨウ化水素が生成される反応を例にとって、化学反応の仕組みについて解説しますね。活性化状態について学ぶ際に、必要となる用語や名称等が登場するので、注意深く読んでみてください。それでは、早速解説をはじめていきますね。

原子や分子の運動

原子や分子の運動

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まずは、気体の水素分子とヨウ素分子を容器内に封入します。封入直後は、反応が進んでいないので、両者は別々に存在しているのです。このとき、気体状態にある水素分子とヨウ素分子が、容器中を縦横無尽に飛び回っています

このように、分子や原子が飛び回っている現象のことを、熱運動といいますよ。また、気体の温度が上昇すると、熱運動が激しくなります。これに伴い、分子や原子のもつ運動エネルギーは大きくなりますよ。

反応物の衝突と一体化

反応物の衝突と一体化

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気体の水素分子とヨウ素分子を容器に封入してから時間が経過すると、水素分子とヨウ素分子の反応がはじまります反応がはじまるためには、容器内を飛び回っている水素分子とヨウ素分子が衝突し、一体化する必要があるのです

水素分子とヨウ素分子の衝突は偶然に生じます。さらに、これらの分子が衝突した後、両者が結合した状態となり一体化することがありますよこのように一体化するためには、反応熱とは関連のない、余分なエネルギーが必要になることが知られています。反応熱は、熱化学方程式に表記されるエネルギーですよね。

水素分子とヨウ素分子が反応するときに、各分子がこのような状態になる訳ではないのです。2つ以上の分子が一体化する現象は、活性化状態について考える際にも非常に重要になるので、覚えておきましょう

生成物の完成

生成物の完成

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水素分子とヨウ素分子が一体化すると、その後に、生成物のヨウ化水素が生じます。このとき、一体化した分子が、再度2つの分子にわかれますよ。ですが、先ほどとは違い、水素分子とヨウ素原子が1つずつ含まれた分子が2つ生じます。この分子がヨウ化水素なのです。

水素分子とヨウ素分子からヨウ化水素が生じる反応は、H2+I2→2HIという単純な化学反応式で表現されます。ですが、実際には何段階にもわたる複雑な現象を経て、反応が進むのです。以上が、化学反応のメカニズムの簡潔な説明ですよ。

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