この記事では「鼻を折る」について解説する。

端的に言えば「鼻を折る」の意味は「自信家をへこませること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「鼻を折る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「鼻を折る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鼻を折る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鼻を折る」の意味は?

「鼻を折る」には、次のような意味があります。

おごる心をくじく。得意がっている者をへこませて、恥をかかせる。「高慢ちきの―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鼻を折る」

この言葉は「相手の慢心を挫く(くじく)、やり込めて恥をかかせる」という意味の慣用表現です。大切なのは「得意になっている人物の」という点。ただ単純に「心折ったり」「恥をかかせたり」では意味が足りないことを押さえましょう。

「高慢になる(=思いあがって他人を侮る)」という意味で、「天狗になる」という表現を聞いたことがありますね。鼻が長いことが天狗の特徴ですが、「鼻が高い」も「自慢げである」という意味の慣用句。「鼻」は「自信がある様子」を表すことが多いようです。

ちなみに、「天狗の鼻を折る」と言うこともありますが、辞書には「天狗の鼻を折る」では掲載されていないことがほとんど。「天狗になる」と「鼻を折る」が合わさって使われている表現と思われます。念のため覚えておきましょう。

「鼻を折る」の語源は?

次に「鼻を折る」の語源を確認しておきましょう。この言葉は特別な出典からではなく、「鼻」のイメージからできた言葉と考えられます。

「鼻を折る」に似た表現で、「鼻柱、鼻っ柱(はなばしら、はなっぱしら)を折る」というものを聞いたことがあるでしょうか。「鼻柱」自体に「張り合う気持ち、負けん気」という意味があり、「鼻」が「自信」に関することが多いとよくわかります。

その「鼻が高い」様子とは、つんと上を向いて自信満々で得意げな様子を想像してみるとわかりやすいでしょう。いかにも「自信家」といったイメージで、これを「やっつける、へこませる」というところから「鼻を折る」も生まれたのだと考えられます。

\次のページで「「鼻を折る」の使い方・例文」を解説!/

「鼻を折る」の使い方・例文

「鼻を折る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・いつも試験で出題される単語や用語、キーワードをヤマカンで当てているだけなのに、語彙力があると得意になっているあいつ鼻を折ってやろうと僕は必死で勉強した。

・ある大手企業のアプリサービスは当初、一方的にゲスト会員から個人情報を提供させていたが、ネットで大バッシングを受けて中止に追い込まれ、鼻を折られる結果となった。

・ソフトウェア開発会社のやり手社長が、守秘義務を破って、サイトの閲覧履歴を他社に提供するよう部下に命令していたが、内部告発で逮捕されて、鼻を折られた。

得意になっている者をへこませる、やっつける」というニュアンスが伝わりますでしょうか。「誰かの鼻を折る」という場合、その「誰か」が得意になっている(と思われる)ことが必要です。成績が良かったり、売上が大きかったりして、それを自慢げにしている様子が文脈から読み取れるといいでしょう。

逆に、学校の成績が良くても自慢しない、という人も存在しますね。その人の「鼻を折る」というのは間違いです。あくまで「高くなっている鼻(自慢げな様子)」を折る、というポイントを押さえてください。

そう考えると「鼻を折ろう」としている人の、やや「逆恨み」的なニュアンスも感じられる表現と言えるかもしれません。自慢げにしている人が憎らしく思えても、本当に「鼻を折る」わけにはいかないはずですね。みなさんも、自分なりにどんな相手の「鼻を折って」やりたいか、なんてことを想像してみるのもいいでしょう。

「鼻を折る」の類義語は?違いは?

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「鼻を折る」の類義語は「顔に泥を塗る」などが考えられます。

「顔に泥を塗る」

「顔に泥を塗る」は「面目を失わせる、恥をかかせる」という意味の慣用表現です。鼻を折る」と異なるのは「やっつける」というニュアンスが少ないこと。逆恨み的なニュアンスもなく、実力のある人や、目上の人に対して「迷惑をかけてしまう」という意味合いに寄っていることを覚えましょう。

動作をする人と受ける人の関係性が読み取れる表現のため、読解問題などでもポイントとなる言葉です。

\次のページで「「鼻を折る」の対義語は?」を解説!/

多くの支援を受けて進めていた研究だったのに、安全保証に関連する問題が多発して、クライアントの顔に泥を塗ることになってしまった。

「鼻を折る」の対義語は?

「鼻を折る」の対義語は「太鼓を持つ・叩く」などが考えられます。

「太鼓を持つ・叩く」

「太鼓を持つ・叩く」は「相手の言うことに迎合する、調子を合わせて機嫌を取る」という意味の慣用表現です。「鼻を折る」が相手をやっつけるのに対し、こちらは相手を「持ち上げる」という点で対義語と考えられます。

現在は「太鼓を持つ」という表現が一般的に使われていますが、「太鼓を叩く」と言っても同じ意味です。どこかで表現が混同され、変化してきたのでしょう。

免疫機能の難病治療に成功したと公表された途端、治療データを手に入れるために多くの研究所が医師の太鼓を持つようになったという。

「鼻を折る」の英訳は?

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「鼻を折る」の英訳は「humble one's pride」で表すことができます。

「humble one's pride」

これは直訳すると「~のプライドを卑しめる、落とす」。得意げになっている人のプライドを下げるということで「鼻を折る」という意味合いが表現できます。

「humble」は「謙遜した」という意味もありますが、後ろに目的語を取った場合は「(相手のプライドや地位を)卑しめる、落とす」という意味にも。「やっつける」というニュアンスが強く出るため、動作をする人が悪者になってしまう場合もあります。使う文脈には注意が必要です。

\次のページで「「鼻を折る」を使いこなそう」を解説!/

・They planned to humble her pride which they didn\'t like.
気に入らない彼女の鼻を折ってやろうと、彼らは計画した。

「鼻を折る」を使いこなそう

この記事では「鼻を折る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

得意になることを「天狗になる」といいますが、それは「得意げで上を向いている様子」が天狗のように見えたからかもしれません。あまりに得意げだと、その「鼻=自慢げな様子」が目立つため、攻撃したくなってしまうのかもしれませんね。

「目は口ほどに物を言う」ではなく「鼻」も人の感情をよく表す器官といえるでしょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「鼻を折る」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「鼻を折る」について解説する。

端的に言えば「鼻を折る」の意味は「自信家をへこませること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「鼻を折る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「鼻を折る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「鼻を折る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鼻を折る」の意味は?

「鼻を折る」には、次のような意味があります。

おごる心をくじく。得意がっている者をへこませて、恥をかかせる。「高慢ちきの―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「鼻を折る」

この言葉は「相手の慢心を挫く(くじく)、やり込めて恥をかかせる」という意味の慣用表現です。大切なのは「得意になっている人物の」という点。ただ単純に「心折ったり」「恥をかかせたり」では意味が足りないことを押さえましょう。

「高慢になる(=思いあがって他人を侮る)」という意味で、「天狗になる」という表現を聞いたことがありますね。鼻が長いことが天狗の特徴ですが、「鼻が高い」も「自慢げである」という意味の慣用句。「鼻」は「自信がある様子」を表すことが多いようです。

ちなみに、「天狗の鼻を折る」と言うこともありますが、辞書には「天狗の鼻を折る」では掲載されていないことがほとんど。「天狗になる」と「鼻を折る」が合わさって使われている表現と思われます。念のため覚えておきましょう。

「鼻を折る」の語源は?

次に「鼻を折る」の語源を確認しておきましょう。この言葉は特別な出典からではなく、「鼻」のイメージからできた言葉と考えられます。

「鼻を折る」に似た表現で、「鼻柱、鼻っ柱(はなばしら、はなっぱしら)を折る」というものを聞いたことがあるでしょうか。「鼻柱」自体に「張り合う気持ち、負けん気」という意味があり、「鼻」が「自信」に関することが多いとよくわかります。

その「鼻が高い」様子とは、つんと上を向いて自信満々で得意げな様子を想像してみるとわかりやすいでしょう。いかにも「自信家」といったイメージで、これを「やっつける、へこませる」というところから「鼻を折る」も生まれたのだと考えられます。

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