この記事では「引けを取る」について解説する。

端的に言えば引けを取るの意味は「劣っている」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「引けを取る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「引けを取る」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「引けを取る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「引けを取る」(ひけをとる)の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「引けを取る」の意味は?

まず、「引けを取る」の正確な意味を、辞書からの引用で確かめましょう。

1.負ける。劣る。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「引けを取る」

引けを取る」は簡単に言えば何かと比べて劣っている、負けていると言う意味です。初めて知る人も「引けを取らない」と言う言葉でしたら聞き覚えがあるかも知れません。「引けを取らない」は、「引けを取る」の否定形で、何かと比べて負けていない、遜色ない、と言う意味の慣用句です。実際にはこちらの使い方の方が多いでしょう。「引けを取る」を「引けを取らない」の逆の言葉だと考えればイメージがわきやすいかもしれません。

「引けを取る」の語源は?

次に「引けを取る」の語源について説明しましょう。何故「引けを取る」が「劣っている」と言うことを意味するのか、また「引け」にはどんな意味があるのでしょうか。

引け」とはもともと「退け(ひけ)」からきていると考えられています。「退け」とは、昔の戦場において、負けて退却を命じるときの言葉です。歴史劇などの戦闘シーンで、不利な側の軍の将が「退け—!」と言うのを聞いたことがあるでしょう。つまり「引けを取る」とは戦場で負けて退却するのを例えにして「劣っている」「負けている」ことを表現しているのです。

\次のページで「「引けを取る」の使い方・例文」を解説!/

「引けを取る」の使い方・例文

それでは「引けを取る」の使い方を、実際の例文を使って見ていきましょう。

1.あなたとの勝負はスタートから引けを取ってしまったが、かえってやる気が出てきました。
2.紙の辞典は、電子辞書に比べて便利さや、収録言語数などで引けを取るが、書き込みができるし必要な辞書だけ購入できるのでコストは低いと言うメリットがある。
3.驚くべきことに、そろばん上級者の暗算力は電卓での計算スピードにも引けを取らないそうだ。

1と2の例文は、今まで説明した通りの「劣っている」「負けている」と言う意味で「引けを取る」が用いられた文章です。そして、1の例文に関しては先手を取られたと言うニュアンスも含まれていますね。このように「引けを取る」は後れをとってしまったと言う内容を含む場合にも用いられます。次に、3の例文は「引けを取る」の否定形である「引けを取らない」を用いたものです。この例文のように「引けを取らない」は優れた相手に対して遜色ないと言う、誉め言葉で使うことが多いでしょう。

「引けを取る」の類義語は?違いは?

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「引けを取る」の類義語としては「及ばない」や「後手に回る」が挙げられます。

「及ばない」

及ばない(およばない)」は、「及ぶ(およぶ)」の否定形です。「及ぶ」とは、物事がある状態に行き着くという意味や、ある段階に至ることを言います。対して「及ばない」と言う否定形をとった場合、能力が劣ってい同列に評価できないと言う意味もあるのです。このような使い方の場合には「引けを取る」と同義語になりますね。「及ばない」の使い方も、実際の例文で確認してみましょう。

\次のページで「「後手に回る」」を解説!/

・私のピアノは初級レベルの腕前なので、彼には遠く及ばない。

「後手に回る」

「引けを取る」が、後れを取ってしまうと言う意味で使われることは先述しましたが、「後手に回る」(ごてにまわる)もまた同じく、簡単に言うと相手に先を越されてしまうことを意味します。将棋などで後から打ち始めることも「後手」と言いますね。つまり、「後手に回る」は相手に先を越されて、相手の攻めに対して受け身に回ることなのです。「引けを取る」が相手に先手を取られてしまったと言う表現で用いられている場合、「後手に回る」と言い換えることができるでしょう。では「後手に回る」の使い方も、例文で確認してみましょう。

他社との競合製品の発売が遅れ後手に回ったのは、急な価格設定の見直しで揉めたからだ。

「引けを取る」の対義語は?

「引けを取る」の対義語は「遜色ない」がふさわしいでしょう。

「遜色ない」

「遜色ない」は「そんしょくない」と読みます。「遜色」とは相手と基準としたとき、劣っていると言う事ですが、普通は「遜色ない」と言うように否定形で使われることが多いでしょう。「遜色ない」の意味は、相手と比べても劣らないと言うことです。そして「遜色ない」は「引けを取る」と反対の意味を持ち、「引けを取らない」とは同義語となるわけですね。

それでは「遜色ない」の使い方も、例文を使って見てみましょう。

・口コミサイトで見つけた小さなお店だが、メニューは一流レストランと比べて少しも遜色ない。

\次のページで「「引け」に関連した言葉」を解説!/

「引け」に関連した言葉

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この項では「引けを取る」の「引け」に関連した言葉を説明したいと思います。まず、「引け」と言う言葉は「退け」とも書かれ、「ひく」の受動形で、引っ張られるや気後れすると言う意味です。

「引け目」と言う言葉を聞いたことがあると思いますが、「引け目」の「引け」も「引けを取る」の「引け」と同じ意味を持っており、自分が他人よりも劣っていて気後れしている様子を表しています。その他にも「駆け引き」と言う言葉も身近ですね。これも語源は「退く」と言う言葉で、戦場で馬を駆け進めるか退くかの戦術から由来していると考えられています

こうして関連した言葉を調べていくと、思わぬ単語が同じ由来であったりします。関連語を調べるには古語辞典なども活躍しますよ。一冊ではなく複数の辞書を調べてみると、日本語への興味が深まりますね。

「引けを取る」を使いこなそう

この記事では「引けを取る」の意味・使い方・類語などを説明しました。日常で用いる場合は「引けを取らない」と言う否定形で使うことが多いですが、原型の「引けを取る」についてもぜひ覚えておいてくださいね。

また、先ほど少し話にありましたが、ビジネスやスポーツで使われる「ビハインド」と言う言葉があります。これは「引けを取る」の現代語バージョンと言ったところでしょうか。スポーツ用語で使われる場合「3点ビハインド」と言うように、負けている、と言う意味になります。ビジネス用語の場合は、進捗が遅れていることや、不利な状況であると言う表現でよく使われるでしょう。ぜひ覚えておいてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「引けを取る」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「引けを取る」について解説する。

端的に言えば引けを取るの意味は「劣っている」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「引けを取る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「引けを取る」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「引けを取る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「引けを取る」(ひけをとる)の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「引けを取る」の意味は?

まず、「引けを取る」の正確な意味を、辞書からの引用で確かめましょう。

1.負ける。劣る。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「引けを取る」

引けを取る」は簡単に言えば何かと比べて劣っている、負けていると言う意味です。初めて知る人も「引けを取らない」と言う言葉でしたら聞き覚えがあるかも知れません。「引けを取らない」は、「引けを取る」の否定形で、何かと比べて負けていない、遜色ない、と言う意味の慣用句です。実際にはこちらの使い方の方が多いでしょう。「引けを取る」を「引けを取らない」の逆の言葉だと考えればイメージがわきやすいかもしれません。

「引けを取る」の語源は?

次に「引けを取る」の語源について説明しましょう。何故「引けを取る」が「劣っている」と言うことを意味するのか、また「引け」にはどんな意味があるのでしょうか。

引け」とはもともと「退け(ひけ)」からきていると考えられています。「退け」とは、昔の戦場において、負けて退却を命じるときの言葉です。歴史劇などの戦闘シーンで、不利な側の軍の将が「退け—!」と言うのを聞いたことがあるでしょう。つまり「引けを取る」とは戦場で負けて退却するのを例えにして「劣っている」「負けている」ことを表現しているのです。

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