この記事では「右から左」について解説する。

端的に言えば右から左の意味は「すぐ他人に渡す」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「右から左」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

「右から左」といえば、10年以上前にお笑い芸人のムーディー勝山さんが歌った「右から左へ受け流すの歌」を初めて聞いたときの衝撃は忘れられないという。右から左とはどんなときに使う言葉なのか解説してもらう。

「右から左」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「右から左」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「右から左」の意味は?

「右から左」には、次のような意味があります。

受け取った金品を、すぐまた他の人に渡して、手元にとどめおかないこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

品物や書類などを手元に置いておくことなく、すぐにほかに人や機関に回してしまう様子を表す言葉です。そこから、すぐに準備ができることを指して使うこともありますよ。

ちなみに「左から右」でもよさそうなものですが、そう表現することはまずないので気をつけましょう。

「右から左」の語源は?

次に「右から左」の語源を確認しておきましょう。結論から言うと、はっきりした語源は見つかりませんでした。筆者の私見としては、「上から下」では天から降ってきたような印象になり、人の行動を表す感じが薄れるために左右で表すのではないかと思います。

また、方向が必ず「右から」と言われる理由も考えました。日本語は従来、縦書きで右から左へと書き進めることと関係するのか、はたまた武士の世界では右上位だったという説から、「目上の人からの物品を目下の人に渡す」イメージがあるのか…。いろいろと想像が膨らんで楽しいですね。

\次のページで「「右から左」の使い方・例文」を解説!/

「右から左」の使い方・例文

「右から左」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・カツカツの生活をしているので、給料が入っても右から左に消えていく。

・雑誌の記事をそのままテレビで右から左に紹介するなんて、ニュース番組として価値があるのか疑問だ。

・世界中の事件や事故のネタを右から左で準備して、即座にメールでお知らせする機能もあります。

1つ目は、お金があっという間に消えていく様子、2つ目は、情報が吟味されることなく流されることを表現した例文です。このように、流されるものは形のある物品に限らず、会話内容などの情報を指して使うことも可能なのが「右から左」。

また、3つ目の例文は「すぐに準備ができること」という意味で使われている例となります。ちょっと調子のいい営業マンが、自社商品やサービスのスピーディーさを売り込むときに使いそうなイメージです。

「右から左」の類義語は?違いは?

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「右から左」と同じように、「とどめることなく流す」様子を表す言葉にはどんなものがあるでしょうか。

「右の耳から左の耳」

「耳」が使われていることから分かるように、「右から左」の意味のうち、「情報が抜けていく」場合に限定して用いる言葉です。

また、ものがとどまらずに抜け落ちていく道具に例えて、「籠耳(かごみみ)」や「笊耳(ざるみみ)」という言い方をすることも。お酒をいくらでも飲んでしまう人のことも「ざる」といいますし、こうした道具は古くから人々の生活に根ざしていたことを実感しますね。

\次のページで「「馬の耳に念仏」」を解説!/

「馬の耳に念仏」

ことわざ「馬の耳に念仏」も、入ってきた情報がすーっと抜けていく様子を表しています。

馬にありがたい念仏を聞かせても価値が分からないことから、聞く耳を持たない様子や、ありがたみが分からないさまを表現したこのことわざ。せっかく価値のあるものがもったいないというニュアンスが含まれており、この意味では「豚に真珠」「猫に小判」なども同じように使えます。といっても、これらは価値が分からない残念な状態を表すだけで、「右から左に流す」という意味はありませんので注意しましょう。

また、「馬の耳に念仏」は相手を下に見てバカにする印象もあるので、使うシーンには気をつけたいところ。その点、「右から左」は失礼な印象はありません。なお、「馬の耳に念仏」のもとになっているのは、中国の詩人、李白が使った「馬耳東風」という言葉。何を言っても、馬の耳を風が通り抜けていくかのように手ごたえがないことを表しています。

・漢字の部首を覚える重要性を解説したが、右の耳から左の耳といった様子で伝わったかどうか心もとないよ。

・グルメな友人に影響されてワインのうんちくを語ったが、アルコールならなんでも同じという彼には馬の耳に念仏だった。

「右から左」の対義語は?

では、「右から左」の反対の意味を表す言葉も見てみましょう。ここでも、「会話や情報をとどめずに流してしまう」の意味に特化して、対義語をご紹介します。

「温める」

物理的に温度を上げることももちろん「温める」ですが、「旧交を温める」のように比喩的に使うこともあります。そちらの意味も、辞書でも紹介されていますよ。「あたためる」の意味全般と、例文も見ておきましょう。

1.程よい温度に高める。あたたかくする。あっためる。

2.

ア.卵がひなにかえるまで大事にかかえる。

イ.自分の手元にしまっておく。温存する。

ウ.絶えていた人との交際を以前に戻す。

3.登場する機会がなくて控えている。暇である。

4.自分だけで利益を独占する。また、こっそり自分のものにする。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

1.寒い日なのでこたつで足を温めた。

2.ア.鶏が卵を温める様子をほほえましく見守った。

イ.長年温めてきた未来都市構想をいよいよ現実化する時が来た。

ウ.仕事にあくせくしなくてよくなったので、同窓会員たちと旧交を温める暇ができて楽しんでいる。

3.野球部員とはいえ万年補欠で、もうベンチを温めるのは飽きてしまった。

4.拾った金を温めるとは、正義感のかけらもないけしからん奴だ。

\次のページで「「右から左」の英訳は?」を解説!/

「右から左」の英訳は?

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英語でも「右から左」のような意味を表す表現がありますよ。

「in one ear and out the other」

直訳すると「ある耳から入り、もう一つの耳から出ていく」という意味ですから、類義語で紹介した「右の耳から左の耳」と同じことを表していますね。

「right」「left」を使っていないところを見ると、英語では「右か左か」はあまり重視されないのでしょうか。横書きで左から右の方向に文を書く文化だからといって、「左から右」というわけではないのですね。

It\'s all in one ear and out the other.


(全然内容が頭に入りません。)


Everything I tell you goes in one ear and out the other.


(私が何を言ってもあなたには馬の耳に念仏ですね。)

芸人さんのネタって?

お笑い芸人のムーディー勝山さんが2006年にヒットさせた、「右から来たものを左へ受け流すの歌」ですね。「チャラチャッチャチャラッチャ~」と始まるイントロが思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。特にストーリーがあるわけではなく、気持ちを歌うでもなく、ただただ「右から左に受け流す」だけの歌詞に、当時衝撃を受けたのを今でも覚えています。

この曲の大ヒットで人気者になった結果、紅白歌合戦にも出場し、一時は月収が600万円を超えたこともあるとか。芸能界は一度当てるとやはり大きいですね。

なお、ムーディー勝山さんはほかにもたくさん曲を作っています。「数字の6に5を足したの歌」「2日前から後頭部に違和感がある男の歌」など。興味があったらぜひ検索してみてください。

「右から左」を使いこなそう

この記事では「右から左」の意味・使い方・類語などを説明しました。確かに私も、毎日の家事などはどうしてもルーティンワークになり、「お風呂掃除をした記憶はあるけれど、それが昨日のことか今日のことかわからない」なんていうことがあります。なんとなくこなすだけでなく、一つ一つの作業を丁寧に、意味を持たせることができたらいいのでしょうね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「右から左」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「右から左」について解説する。

端的に言えば右から左の意味は「すぐ他人に渡す」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「右から左」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

「右から左」といえば、10年以上前にお笑い芸人のムーディー勝山さんが歌った「右から左へ受け流すの歌」を初めて聞いたときの衝撃は忘れられないという。右から左とはどんなときに使う言葉なのか解説してもらう。

「右から左」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「右から左」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「右から左」の意味は?

「右から左」には、次のような意味があります。

受け取った金品を、すぐまた他の人に渡して、手元にとどめおかないこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

品物や書類などを手元に置いておくことなく、すぐにほかに人や機関に回してしまう様子を表す言葉です。そこから、すぐに準備ができることを指して使うこともありますよ。

ちなみに「左から右」でもよさそうなものですが、そう表現することはまずないので気をつけましょう。

「右から左」の語源は?

次に「右から左」の語源を確認しておきましょう。結論から言うと、はっきりした語源は見つかりませんでした。筆者の私見としては、「上から下」では天から降ってきたような印象になり、人の行動を表す感じが薄れるために左右で表すのではないかと思います。

また、方向が必ず「右から」と言われる理由も考えました。日本語は従来、縦書きで右から左へと書き進めることと関係するのか、はたまた武士の世界では右上位だったという説から、「目上の人からの物品を目下の人に渡す」イメージがあるのか…。いろいろと想像が膨らんで楽しいですね。

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