君たちは生まれたばかりのときの自分の体重を知っているか?大体の赤ちゃんが3000グラムほどで生まれてくる訳ですが、君たちは現在その体重の何倍にも成長しているはずです。体が成長しているということは、からだを作っている細胞が増えているとも言えるよな。では細胞はどのようにふえていくのでしょうか?実は細胞は分裂することで数を殖やし、成長しているんです。

今回は細胞分裂の仕組みや周期について、生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

理系の大学院を卒業した後、医学部の実験助手として勤務している。普段は細胞や大腸菌をつかった実験を行っているため、生物学についてもしっかり熟知している。

細胞分裂とは

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生き物の体は生まれてから成長するにしたがってだんだん大きくなります。そのとき体を構成している細胞も一緒に大きくなるのではなく、分裂し数を殖やすことで体を成長させるのです。このように細胞が分裂することを細胞分裂と呼びます。

細胞分裂の過程

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細胞分裂は間期・前期・中期・後期・終期の5段階に分かれます。細胞分裂の過程はそれぞれの段階ごとに特徴があるため、1つずつ解説しますね。

\次のページで「間期」を解説!/

間期

間期では染色体が核膜で包まれた細胞核の中に収納されています。このとき、細胞核の中ではDNAの複製が行われているのです。実は間期は細胞分裂の周期の中で最も長い期間なんですよ。ゲノムを構成しているDNAはタンパク質を合成するためのとても大事な部分なので、時間をかけて確実にミスが起きないよう合成しています。

前期

細胞分裂の前期では、目に見えなかった細胞核の染色体が太く凝縮することで目視できるようになるんですよ。分裂中の細胞は細胞の中央である赤道面と2つの極をもった球体として表されています。

中期

先程太く凝縮した染色体は赤道面に並びます。赤道面に並んだ染色体には極にある中心体から糸(紡錘糸)が伸びてきて染色体の中心にある動原体に結合するのです。

後期

紡錘糸が繋がれた染色体は両極へ向かって引っ張られていきます。このときの染色体を娘染色体と呼ぶこともあるんですよ。あとは細胞質が2つに分かれるだけで2つの細胞になれます。

終期

消失していた角膜が再び再生され、染色体は見えなくなります。その後、収縮環ができて細胞質がくびれ、2つの細胞へ分かれるのです。

なぜ細胞は分裂するのか?

なぜ細胞は分裂するのか?

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ではなぜ細胞が大きくなることで体を成長させるのではなく、数を殖やすことによって体が成長するのでしょうか?

実は生物の組織によって1個の細胞の大きさは決められているのです。もし細胞が大きく成長することで体が成長するという場合のデメリットは何だと思いますか?大きくなった細胞がもし損傷してしまうと細胞自身が死んでしまうため、体に大きなダメージを与えることになります。しかし、細胞の1つ1つが小さければ細胞が損傷したときの体に与えるダメージを最小限に抑えることができますよね。

他には、細胞の大きさが大きいほど使用するエネルギーが多くなってしまうため、省エネのために細胞の大きさに限界があるという説もあります。

動物と植物の細胞の違い

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動物細胞と植物細胞では細胞分裂の様式に異なる部分があります。そのため、ここでは動物細胞と植物細胞の違いについて解説しますね。

動物細胞と植物細胞の大きな違いは細胞壁があるかないかです。細胞壁は植物細胞のみに存在する、細胞全体を包む堅い組織のことをいいます。この堅い細胞壁も分裂させなければならないため、植物細胞と動物細胞の細胞分裂も様式が異なるわけです。

動物の細胞分裂

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動物細胞はDNAを含む細胞核が細胞質で包まれており、その周りを細胞膜という柔軟な膜がおおわれています。そのため、動物細胞が分裂する際は赤道面に収縮環というゴムの輪っかのようなものができるんです。この収縮環が収縮し、細胞膜を巾着袋の口のようにくびり切ることで細胞を分裂されています。

植物の細胞分裂

植物細胞の場合は細胞壁という硬い組織があるため、細胞分裂の際は動物細胞のようにくびれを作ることができません。そのため、植物細胞では細胞核が分裂したあとに細胞の中心に細胞板が形成されるのです。細胞版は細胞と細胞を仕切るように成長していき、最終的に1つの細胞を2つに分けます。細胞版はその後細胞壁へとなるのです。

減数分裂

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細胞分裂の一つに減数分裂という分裂もあります。減数分裂とは、生殖細胞が分裂する際にとる細胞分裂のことです。減数分裂と体細胞分裂の大きな違いは分裂前と分裂後の染色体の数にあります。生殖細胞は受精により2つの生殖細胞が合体するため、染色体の数を半分にへらす必要があるのです。では、減数分裂の過程について詳しく解説します。

\次のページで「減数分裂~第一分裂~」を解説!/

減数分裂~第一分裂~

減数分裂では染色体の数を半分に減らさなければならないため、分裂には時間をかけて染色体に異常が起きないようになっています。なので分裂には第一分裂と第二分裂に分かれているのです。

まず第一分裂について解説しましょう。細胞には相同染色体といって同じ長さと形である染色体が2本あります。そのため、ヒトには46本の染色体がありますがしばしば2n=23という記載をするんですよ。第一分裂に入る前に相同染色体が複製され、4n=23となります。ここが一つのポイントなのでしっかり覚えておきましょう。第一分裂に入ると相同染色体同士がくっつき二価染色体となります。このあとは普通の体細胞分裂のように、二価染色体は赤道面に並んだあと紡錘体となり、中心体へ向かって2つに離されるのです。そして2n=23の細胞が2つ完成します。

減数分裂~第二分裂~

第二分裂に入ると再び染色体は赤道面に並びます。そして今回染色体は複製されず、紡錘体は縦にちぎれて分離するのです。分離した染色体は紡錘糸に引っ張られながら中心体の方へと移動し、2つの細胞へ別れます。ここで完成した細胞はn=23となっており、分裂前の半分になっていることがわかりますね。

身近な組織から細胞分裂を観察してみよう

細胞分裂とは1つの細胞から2つの細胞へ分かれることを言います。動物細胞と植物細胞では細胞分裂の様式が異なっており、動物細胞はくびれができることで、植物細胞では細胞版を形成することで細胞を2つに分けていました。細胞分裂の過程は前期・中期・後期・終期の4段階に別れており、前期から後期までが染色体の分裂です。

身近にあるもので細胞分裂の観察に最適なのが玉ねぎの根ですね。玉ねぎは手に入りやすく、根の成長も早いため観察に最適なんですよ。酢酸カーミンなどの試薬は毒物ではないので、学校の理科の先生に相談して貸してもらいましょう。基本的には分裂が盛んで手に入りやすいものであれば観察は容易なため、身の回りにある他のものではどんなもので細胞分裂を観察できるのか探してみるのも面白いですよ。

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理科生物細胞・生殖・遺伝

細胞分裂の仕組みはどうなっているのか?医学部研究室の実験助手が5分でわかりやすく解説

君たちは生まれたばかりのときの自分の体重を知っているか?大体の赤ちゃんが3000グラムほどで生まれてくる訳ですが、君たちは現在その体重の何倍にも成長しているはずです。体が成長しているということは、からだを作っている細胞が増えているとも言えるよな。では細胞はどのようにふえていくのでしょうか?実は細胞は分裂することで数を殖やし、成長しているんです。

今回は細胞分裂の仕組みや周期について、生物に詳しいライターオリビンと一緒に解説していきます。

ライター/オリビン

理系の大学院を卒業した後、医学部の実験助手として勤務している。普段は細胞や大腸菌をつかった実験を行っているため、生物学についてもしっかり熟知している。

細胞分裂とは

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生き物の体は生まれてから成長するにしたがってだんだん大きくなります。そのとき体を構成している細胞も一緒に大きくなるのではなく、分裂し数を殖やすことで体を成長させるのです。このように細胞が分裂することを細胞分裂と呼びます。

細胞分裂の過程

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細胞分裂は間期・前期・中期・後期・終期の5段階に分かれます。細胞分裂の過程はそれぞれの段階ごとに特徴があるため、1つずつ解説しますね。

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